
はじめに
介護に関するサービスでは、介護保険等により一定金額が支払われる場合は,利用者本人負担部分の回収が問題になります。他方介護保険によらないサービス(生活支援サービス)については,利用料の未払いがそのままサービス提供をしている運営会社側の負担になってきます。今回は、こういったサービスに関する利用料が未回収にならないようにするにはどうすればよいか、見ていきます。
介護利用料と通常のサービス提供との違いは?
介護に関するサービスなどの提供で未回収部分が生じるとなると、介護事故と違って、介護事業を運営することによって生じうる施設運営者側のリスクになってきます。適切な対価の支払いがなされないと、施設運営者側としても利用者の方にこれまでと同様のサービスを提供できるかどうかにも関わってくる大きな問題です。
他方で、特に介護サービスの提供は,利用者にとって生きていく上で欠かせないもので,施設側と利用者は信頼関係を基礎に継続的にサービス提供を行うことで成り立っているともいえます。ですから,利用料の未払いがあると言ってもすぐにサービス提供を中止できないのが通常のサービス提供の場合と異なり、難しいところです。介護事業にはこういった特殊な事情があることを前提に、いかにして利用料の支払いをしてもらうかが問題になってきます。
利用料などの未回収を防ぐにはどんな対策があるでしょうか?
まず、利用者の方の利用料の支払いが滞る状況になった場合には,なぜ滞りだしたのか,状況に応じたマニュアルを作っておくのも一つです。ここがきちんとしていないと、気が付いたら利用料の未回収部分がかなりの期間にわたっていた、ということにもなりかねません。単に残高不足で引き落としができない状況になっていた、経済的状況に変化があり、これまでと同様支払うのが困難になった、など原因はさまざまだと思います。取れる対策があるのであれば、施設運営者側としても積極的に取り組み、協力するようにしましょう。
介護サービスであることゆえに、奉仕ということが念頭にありすぎて、お金の支払いを求めることに遠慮がちになったり、おざなりになることが割とありますが、早い段階で対応するようにした方が、実際にサービスの提供を受けている利用者にとっても、適切なことの方が多いのではないかと思います。
実際にはその時々で利用者や家族に最も適切な対応を取ることが必要になってきます。事情を聴きとるにしても、普段から介護サービスを提供しているヘルパーなどから利用者や家族に聞く方がよいこともあれば、普段は直接介護サービスに関わっていない管理者から聞く方がサービス提供に支障を与えずにすむこともあります。利用者や家族それぞれで、ヘルパーとのかかわりや捉え方など異なりますから、マニュアルを作った場合には、それに縛られすぎないよう、柔軟な対応ができるようにしましょう。
契約締結時に,支払いがきちんと確保できるようにするため,保証人をつけてもらうことも必要になるでしょう。
未回収があまりにもひどい場合はどうすればよいでしょうか?
先に述べましたように、介護保険によらないサービス(生活支援サービス)については,利用料が支払われないと介護保険での支給自体ないため、サービス提供をしている運営会社側が未払い部分のマイナスを被ることになってきます。
最初の契約締結時にこういった未払いがある程度の回数発生した場合には信頼関係が破壊される事情にあたるとして、契約解除ができるように条項を入れてある場合は、それに基づき契約を解除することは可能です。
ただ、その場合であっても、利用者の状況によっては生活に支障が出て来ることも考えられるので、行政などに相談をして生活に困らないようにフォローできるようにしておくのが大事です。