
2020年4月からの法律改正された内容の施行の中で,お金の回収の手続きに関するものがあります。以下で記載する内容以外に,お金の差し押さえに関する届け出をしないと差し押さえが取り消される話や不動産競売の際の反社会的勢力の排除の話があります。
役所や金融機関への照会制度とは?
役所や金融機関に対して何を照会するのかといえば,例えば,不動産で相手先名義のモノの存在状況や預金の有無や内容の確認(預金を差し押さえる際には基本的には金融機関名と支店名までわかっていないとできない運用でした,証券や投資信託の情報もここでは含みます)・勤務先の確認(税務情報の照会や年金関係の情報の照会)をするための制度です。こうした情報がわかればお金の回収もしやすくなりますが(差し押さえを何に対してすればいいか分かりやすくなるため),個人情報などを安易に明らかにすることは好ましくないため,新しくこうした制度は設けられる反面使うことができる場面は限定されています。
まず,どのような照会を行う場合でも,回収をする相手からの財産開示(自発的な財産開示,といっても裁判所に出頭してもらい開示してもらうものです)を行ったうえで十分開示ができない場合に限ります。また,相手の勤務先や給与の情報については,簡単に知られることによって事実上の解雇などの退職リスクが高まる・差し押さえなどによって生活に大きな影響が生じるからということで,この制度を使うことができる場合が限定されています。基本的には養育費の不払いと交通事故等生命や身体についての賠償請求を行った場合に限られています。貸金や売掛金では使うことができない点には注意が必要です。
ちなみに,こうして照会で得ることができた情報はプライバシー情報を含みかねないことから,安易に他の誰かに漏らすことは禁止されています。当然他人にこうした情報を売る場合は禁止される場合の最たるものです。禁止に違反した場合には,刑罰を受ける可能性がありますので,注意が必要です。あくまでもお金の回収手続きでしか利用することができないと考えておくべき話ですね。
財産開示の制度とは?改正内容は?
財産開示の制度とは,簡単に言えばお金を回収する手続きである強制執行の手続きの中で,相手に自分の財産を明らかにしてもらう制度です。お金を回収するためには裁判で勝訴する・公正証書で支払いについての合意などをするだけでなく,裁判所に差し押さえなどの申し立てをする必要があります。その際に,差し押さえるもの(回収をする対象)は回収を図る側で明らかにする必要があり,調査が大きな負担になることがあります。
財産開示は,そうした負担を少しでも減らすべく,差押えなどを申し立てられた側に裁判所に来てもらって,正直に自分の財産などを報告してもらう手続きです。この制度も裁判所に出頭しない・事実とは違うことを言うなどされてはあまり意味がありません。こうした行為にはペナルティが必要になるわけですが,これまでは過料という一種の罰金的なものが上限50万円で存在していたにすぎません。実際,不出頭などが十分ありうるため,これまでこの制度はあまり使われていません。
今回の法律の改正(2019年に改正され,2020年の4月1日から施行)では,こうしたペナルティを強化する(内容は先ほどの一種の罰金だけでなく,刑務所に行く懲役刑の制裁が付け加えられることになりました)ことで対応することになっています。実際懲役刑の制裁まで行くのは悪質性の高い出頭しない・嘘を言う場合になるとは思われますが,財産開示制度は今までのものよりは使われるようになる可能性があります。
また,これまで簡単に裁判所で取得することができた支払い督促や公正証書についてはこうした財産開示の制度を使うことができないという面もありましたが,こうしたものについても財産開示の制度を使うことができるようになります。