弁護士をつけない本人訴訟は可能?メリット・デメリットとは?
結論から言えば,大家さんによる本人訴訟は可能です。ここでいう本人訴訟というのは,弁護士に依頼しないでご自身で裁判を起こすことです。日本では,弁護士に依頼するかどうかはご意向によるためです。今回のケースにあるような,借主が家賃を払わず・退去もしないケースであっても同じように当てはまります。
それでは,こうした本人で行う本人訴訟のメリットは何でしょうか?
一番は,弁護士に支払う費用を節約できるところでしょう。実際にどの程度の費用がかかるのかは,請求する内容(単に未払いの家賃だけなのか・退去までなのか,こうした話の示談交渉なのか・裁判までなのか・強制的な回収まで含むのか)によって変わってきます。一般に請求する内容や手続きが多いほど費用はかかっていきます。こちらはメリットかどうかは分かりませんが,実際に裁判を行うことでノウハウを吸収できるという面がある場合もあるでしょう。
次にデメリットは何でしょうか?
一番は,手間を負担する必要が出てくるという点です。これは,借主とのやり取りや裁判にする際の書類の作成や出廷についての負担,強制執行と呼ばれる回収手続きを自ら行う負担(退去についてもある手続きです)があります。時間や書面の作成などの話,専門的な知識の活用といった場面も手間がかかるケースも出てくるかもしれません。
結局,メリットとデメリットのどちらを重視していくのかという話になります。手間をかけている暇がないのであれば弁護士への依頼になるでしょうし,費用面も踏まえるとどうも言えないという場合にはご自身での対応といったことになるでしょう。予めどこまでの手間ならご自身で対応するのかを決めておいたうえで,問題となる場合の見通しを相談しておくといった対応もありえるでしょう。
実際に本人訴訟はどのように進むのでしょうか?
ここでも結論から言えば,裁判自体は弁護士に依頼する・しないにかかわらず,制度としては同じように進んでいきます。そもそも裁判に至る前に支払いの請求と契約解除・退去に関する話し合いを借主側としていることが多いと思われますので,どのタイミングで裁判まで必要とするのかを決めていく必要があるでしょう。もちろん,話し合いができない場合には裁判を起こす必要が出てきます。
裁判では言い分と証拠を整理して書類で準備する必要があります。貸している部屋にいるのが別の方になっていた場合には,単に借主に退去の裁判を起こしても後で問題が出る可能性があります。裁判の場では,借主側が言い分を出してきている場合もありますし,出張してきている場合もありえます。仮に簡易裁判所(簡易裁判所への程度になるかどうかは請求内容によって決まります)での裁判の場合には,話し合い解決をその場で強く斡旋してくれる場合もあります(司法委員という方が関与する場合です)。地方裁判所での裁判の場合でも話し合い解決を進められる場合ももちろんあります。
実際に話し合い解決をするかどうかは,借主側の反応も見て決める必要があります。ただし,早く退去を実現し次の方への賃貸を考えるのであれば,早めの解決(退去によるもの)を目指していく場合が多くなっていくものと思われます。
話し合いがつかない場合には裁判所の判断(判決)を求めることになりますが,借主側の反論も踏まえて必要な部分の言い分や証拠の補充が必要となります。ケースによってどこまで時間がかかるのかは異なりますが,大きな争いがある場合には相当程度時間はかかります。
話がつかず判決になっても,控訴などと呼ばれる別の裁判所への不服申し立てを敗訴した側はすることができます。つまり,時間は結構かかります。また,判決が確定(争いようがなくなった状況)になっても借主が出ていかない場合には強制執行といって,強制的に退去するための手続きをとる必要が出てきます。
このように判断が必要となる部分は相当程度あります。先ほども触れましたが,どこまでをご自身の負担で行うのかを費用や手間をどこまで追うのかなどの点を踏まえて決めていく必要があるものと思われます。