
介護保険等公的な保険の適用があるサービスでは自己負担部分・そうではないサービスについては利用料金全てについて,不払いにより回収が難しくなるということが想定されます。こうした不払いが続く場合には経営に影響が出てきます。
契約の解除という方法
利用料金が支払われない状況が継続しているのにサービス提供を続けるのは負担がかかります。利用契約を締結し,契約書や重要事項の説明をされているかと思われますが,そうした中に契約解除に関する項目が入っています。どこまでの不払いが続いていれば契約解除になるかは契約で定めていることもあるかと思われますが,継続的なサービス提供にについてはこれまでも信頼関係を破壊しているといえるだけの事情が裁判例上要求されています。相当長期間継続している場合でも判断が難しい場合もありえますし,支払いと不払いが混じっているケースでは特に判断が難しい場合もありえます。
2020年4月から一部改正される民法という法律では,軽い契約不履行(利用者側からすると利用した分の費用を支払うというもの)については契約解除ができないとされていますが,同じようなものということができるでしょう。
居住系のサービスなどでは,契約解除を突然にしてしまうと心身に不安がありこのままでは自活できない方を放り出す形になりかねません。こうした場合には,後でトラブルになりかねませんので,対応をきちんとしておく必要があるでしょう。生活保護の利用や成年後見制度の利用・その他行政との連携などというのが考えられます。
回収の方法などは?
一番簡単なのは請求書を送る・話をしてみるという方法ですが,不払いで困る場合にはこうした方法では十分ではないこともあり,内容証明郵便の送付や裁判所を通じた支払督促手続の利用(その他少額訴訟という方法もありますが,この方法は年間の利用回数についての上限があります)等を考えることになるでしょう。内容証明郵便自体は特別な効力があるわけではない点には注意が必要です。
支払督促は相手が争わない場合には,特に時間がかかることなく・費用もかからず差押えを図ることができる手段なので,争ってこない可能性が高ければ活用を考えることになるでしょう。話し合いをしてみて,分割での支払いをしてもらえるという場合では念書を書いてもらうという方法もありますが,支払いの見通しをよく示してもらったうえでないと結局書いてもらったけれどもということになりかねません。念書を公正証書にする場合,不払いがあった際に裁判をせずに差押さえをすることができるというメリットはありますが,費用がかかる点には注意が必要です。
弁護士など専門家への依頼は個別の依頼では費用面の問題が出てくる可能性もありますので,費用面も含めて検討が必要になるでしょう。
契約締結の際に保証人を要求しているケースがほとんどかと思われますので,保証人への請求ということも考えられます。この際には,保証人自身に財産や収入がなければ実際の回収が難しくなる可能性があります(そのため,保証人の資力面のチェックは重要です)。保証人ご本人の親などで高齢である場合には,こうしたリスクが大きくなるケースもありえます。
これ以外に,ご利用者自体に財産管理をすることが難しく,ご家族についても同様(ご家族も高齢の場合等)の場合には成年後見制度の活用を考える場面も出てくるかもしれません。この場合には,成年後見の申立人にはだれがなるのか・実際に成年後見の開始審判が出るのかどうか・ご家族の理解が得られるのか等をきちんと検討しておく必要が出てくるケースもあるでしょう。専門家などとの連携も含めてどのようにするかの検討は重要になってくるケースもありうるでしょう。