
契約が成立したかどうかの問題
これまで,契約書を作成しなくても契約自体は成立すること・文言として残す意味などについて触れてきました。今回は少し補足しておきます。以前,見積書と注文書などで契約が成立する場合があるという点の話をしました。この場合に,契約の成立に必要とされること(製品を作って納品してもらう場合には,対象となる製品を特定して納入してもらうことを決める・代金額を決める)はそれぞれの契約によって決まってきます。
書類のある程度の取り交わしがある場合はともかくとして(契約書を締結するという以外に,先ほどの流れでは注文書と請書まで出しておく形もありえます),全くの口頭で合意をする(それまでのやり取り自体は残っている場合・残っていない場合それぞれが考えられます)場合もありえます。
この場合の大きな問題点として,どこまで合意ができていたのかという話とともに,そもそも契約が成立していたのかという問題が出てきます。これは双方の認識が食い違うほかに,合意の程度が曖昧である・最終的なものではないという場合には,契約が成立していないと考えられるため,問題は大きくなりかねません。先ほどの見積書に加えて注文書と請書のやり取りをする場合であっても,最終的に注文する内容と受ける内容がはっきりしており,契約をしたことが裏付けられます。
金額が大きな契約である場合には,契約書の締結をする場合も多く,あくまでも事情による点はありますが,書面の取り交わしが契約の成立をしたかどうかを評価する上でのポイントとなる可能性は十分にありえます。そのため,特に金額の大きな契約の交渉の際には後でトラブルにならないように,書面で経過などの確認をしておくことは重要になってきます。
取引の相手方が契約書を準備している際に注意をする点
契約書で取り決めておくことは,
①法律上契約が成立させるうえで必要な事項
②契約をする目的や手順など法律的な意味はただちにはないものの,取り決めをしておく意味のある事項
③法律で定めている事柄の内容を一部変更するものや定めてある事柄を確認する事項
等があります。このうち,①は先ほど触れましたがここでは主には③の話になります。これは,法律上契約で決めておかないと法律の定め通りになるけれども,一部変更を加えらるものがあり,そうした点を契約書で決めておくという話です。そうした点で,相手が準備した内容が自社にとって不利であっては意味がありませんし,解釈上疑義が出てきて双方で異なる解釈ができる場合にはトラブルにつながりかねません。契約書にはトラブルの防止・契約内容を進めるうえでのルールを決める面があります。こうしたところからは,不利な合意をした・その他トラブルになるのでは意味がありません。
ことに相手方が準備した契約書には,自社でチェックをしたモノではありませんからそうした問題が出る可能性はあります。こうした点をチェックしておくことは当然のことながら重要です。場合によっては弁護士など専門家にも相談をしながら考えていった方がいい場合があります。