比較的最近の裁判例で,雇用契約の相手方及び雇用契約が成立しているかどうかが争点となったケース(実際には,従業員側がその地位の確認とイ払い給料の支払いを求めたもの)がありましたので,紹介します。
問題となったのは,徐染工の採用などを行って実際の受け入れ先に人を送るなどしていた会社に対して従業員側と主張する方が先ほどの請求をしたケースです。受け入れ先が倒産し,実際に除染作業をするのが無理となったこと・当該会社が人の募集と応募した方に労働条件通知書を送付していたこと。その通知書に「入場日」(おそらく,実際に作業場に入り作業をする日という趣旨かと考えられます)からの雇用と書かれていた点に特徴があります。採用にあたっての必要書類のやり取りは,当該会社と従業員側で行い,労働条件通知書には当該会社が事業場名称として記載されています。
裁判の中で,会社側が雇用するのは受け入れ先の会社であって自社ではないこと・そのため,雇用契約は成立していないと主張しています。また,雇用契約が成立していた場合に,就労がd系内状況が違法であるのかが争点となりました。
こうした争点について,裁判所は雇用しようとしていたのは受け入れ先ではない当該会社ではあるけれども,まだ雇用契約は成立していないと判断しています。これは,書類のやり取りなどは全て当該会社が行い,書類上も事業場は当該会社であって他の会社が雇用することをうかがわせる事情がないという判断によるものです。
他方で,雇用契約が成立していないという点は,雇用契約で問題となる業務の成立上という理由によるものです。それは,要約すれば,除染作業という業務の性質上現場の様々な事情により左右される・その点を踏まえて確定した日ではない「入場日」というのが雇用の開始日とされていたことを理由とするものです。労働条件通知書や必要書類のやりとりはそれよりも前に行われていることから,こうしたやり取りの時点で契約が成立したのかが大きく問題になるところです。
裁判所は,除染作業の業務の性質とそれを受けての書類の記載から,受け入れが確実になった日に初めて雇用契約が成立すると判断し,従業員側の請求を退けています。
契約がいつ成立するのかいつであるのかは曖昧な書類のやり取りのみである場合には後で問題になるケースがあります。このケースでは雇用契約ですが,そのほか取引に関する契約でも畳受けられるところです。このケースで条件面のやり取りがなされた際に,その意味をどうとらえるのかは大きく問題になるところですが,このケースの裁判所の判断を前提にしても書類のやりとりだけでは当然に契約が成立していないと考えるのには大きなリスクが出てきます。
通常の取引においても,書類のやり取りはきちんと行う(最低限,誰と誰の間に,どのようなサービスをいつまでに提供し・代金はいつまでに支払うのか,提供方法と支払い方法の内容,その他重要な事項をはっきりとさせる)・契約が成立したのかの確認もきちんと行うという点はトラブル回避のために大変重要になる点です。疑問があれば相手方への確認や弁護士など専門家への相談が必要です。