法律のいろは

2022年8月21日 更新契約問題のご相談

元請け先が代金未払いのまま倒産などした場合に,発注者に代金支払いまで物件の引き渡しを拒めるのでしょうか?

代金回収と引き渡し拒否の意味

 建築請負工事では,代金支払いが原則は完成・引き渡ししてからという形になりますが,出来高払いということで毎月などに出来高に応じて決済を行うという契約内容にしておくことも可能です。両者の違いは,代金の支払い時期が後者の方が一部にはなりますが早くなります。

 代金の回収できないと赤字を抱え込むことになりますあ。材料等の確保を発注者・請負側どちらが行うのかというのはありますが,引渡し前まではどちらの所有とするかは引き渡し拒否ができるのかと大きくかかわります。権利が移る・引き渡し拒否ができることで代金の支払いを促す意味合いがありますので,大きな意味を持ってきます。

 

 発注者と請負側だけの関係でみれば,人件費や材料を請負側が行っている場合には,契約上別の合意がない限りは,請負側が権利を引き渡し・代金支払いまで持つことになります。合意があれば,この時期は動かすことができます。ここで代金の支払いが引き渡し後のままで,所有する権利が先に発注者側に移っている場合には,請負側としては発注者の支払いがない場合に回収にリスクを抱える可能性があります。所有する権利がない場合に,引き渡し拒否をするには契約上引き渡しと代金支払いが同時であるという性質の契約か留置権という引き渡しを拒める権利が存在する必要があります。代金支払い時期が原則通りだと,支払いは物件引き渡し事なります。そのため,代金未払いでも契約上引き渡しは拒否できませんし,留置権という権利もその元となる代金の支払い時期が来ないと権利の主張ができません。したがって,代金未払いでも何も言えず引き3私に応じる必要が出てきます。

 そのため,代金の支払いに関しても所有する権利とともに,どうするかを契約上はっきりさせておく必要があります。

下請け⇒注文者への引き渡し拒否の場合にはハードルが存在

 下請け業者についても,元請け業者からの代金回収をどうするのかという問題があります。ただ,下請けであることであなしが複雑になってきます。元々の施主・発注者は元請けと請負契約をしているだけで,下請けの請負解約は元請け・下請けの間の契約であるという特徴があります。また,下請け契約は元請けの請負契約を実施するための契約ですので,元請けの請負契約を前提とし,下請け業者は基本的には元請け業者が言う以上のことを発注者サイドには言えないという点で特徴があります。

 

 下請け先の代金回収が問題となるのは,基本的には元受けサイドの経営が悪化したその他の理由から自らのお金を回収できない場合です。相当程度出来高が存在している場合には大きな話となりかねません。特に発注者サイドが既に代金を相当程度元受け先には支払っているが,下請け先には元受け先には支払いがない場合には,問題は大きくなる可能性があります。発注者としては既に代金は相当程度支払っていて二重払いをさせられる可能性がある一方,下請け先はもらっておらず赤字リスクを抱えるためです。こうした問題について,元受け先と発注者との間の物件引き渡しまでの所有する権利を発注者とするという合意について異なる言い分を下請けが言えるのかどうかが問題になった最高裁の判断(最高裁平成5年10月19日判決)があります。

 この判断では,下請け契約は元請け契約を前提としていてその内容や存在に規制を受けること・あくまでも下請け業者は元請け業者が施主・発注者に対して負っている工事の義務を実施する補助をするだけであるという点などから,下請け業者は異なる言い分を出せないと判断しています。

 

 比較的最近でも,発注者⇒元請け業者への支払いは相当程度されていた・元受け業者⇒下請け業者への未払いが大きくあるという前提で,下請け業者が出入り口のカギを監理していたというケースで,発注者側が鍵カバーを設置し鍵で空けられないようにした点で,引き渡し拒否などができるのか問題になったものがあります(東京地裁令和1年10月24日判決LEXDB25582438)。なお,既に物件は完成していたケースのようです。また,下請け先への代金支払いは着手時期とその後の出来高払いの組み合わせでした。

 このケースでは,下請け業者が自らが管理している物件の管理が侵害されていることを理由とした引き渡し請求と発注者側からの所有する権利を持っているから物件を引き渡すよう求めたものです。争点は複数ありますが,ここでは所有する権利自体は発注者サイドにあると判断された場合(実際に判決ではそう判断しています。ここもそう言えるかが争点となっています)に留置権という権利を使って拒むことができるのかについて触れておきます。ちなみに,発注者⇒元受け先には相当部分の代金が支払われており,元受け先と発注者側とのやり取りなどを踏まえて,発注者が所有権を持っていると判断しています。

 

 このケースでは,既に出来高払いということで下請け代金の支払い時期が来ているため,原則形の場合とは異なるという事情があります。ただ,先ほどの最高裁の判断の前提にあった下請け契約が元請け契約を前提にし,そこから規制を受けるという点などを考慮するすると既に元受け先から下請け先に所有する権利が移り,元受け先が代金支払いを終えているのだから,物件引き渡しを代金回収のため拒まれる理由はないことになります。ここを拒むことができるとなると,代金を二重に支払い元受け先から既に支払った部分の回収についての回収リスクを負うことになります。この点を考慮して,先ほどの裁判例では,留置権を主張して引き渡し拒否はできないと判断して今う。ちなみに,代金の支払い時期が到来していないことも理由には挙げていますが,おそらくのこのケースではすでに到来しているのでここは理由にはなりにくいものと思われます。

 この考え方の下では,音請け自体が出来高払いなどで支払い時期が到来していて回収できない部分が存在するケースくらいしか,下請け先の引き渡し拒否は難しくなるでしょう。代金回収をどうするか・施工をそのまま実施するのかは重要なポイントですが,引き渡し拒否による回収が下請けの場合にはハードルが存在する点には注意が必要でしょう。

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