法律のいろは

2022年8月3日 更新契約問題のご相談

急増する脱毛エステのトラブル。サービス提供をする事業者が気を付けるべきこととは?

はじめに

 男性,特に高校生など若年者の方の間では,むしろ脱毛するのが当たり前、という話を聞きます。夏になると肌を露出する格好をすることが増えるので、脱毛エステに行く方も増えるのではないかと思います。

 そんな中、この度国民生活センターから令和4年7月21日付で、「男性も増加!脱毛エステのトラブル」というタイトルで若者向けに注意喚起する報道発表がありました。今回はこの内容を踏まえて、脱毛エステのサービスを提供するサロン様がどういったことに気を付けて対応するのがよいかということを取り上げます。

国民生活センターの報道発表の内容は?

 今回の国民生活センターの報道発表では,2021年度は4000件を超える消費者の方の相談があり,これまでの相談件数と比べても1000件以上増加したことを踏まえてのものとなっています。

 契約者の年代別割合はやはり10~20歳代が73%余りと最も多く,次に多い30歳代を併せると約90%を占めることになります。契約されたご年齢が10~20歳代でいくと,やはり女性の割合が9割程度のようですが,その中でも最初に触れましたように男性の方の相談も増えてきているというのが現状です。特に18~19歳の年齢層でいくと、2021年度と比べても大幅に脱毛エステに関する相談件数が増加して、1位になったとのことです。

 また、平均的な契約購入金額も増加傾向にあり,女性よりも男性の方が高額になる傾向があるようです。

 トラブルの内容としては,国民生活センターのADRで扱われた事案によれば,SNS広告で月額の低価格サービスと出ていたので、サイトで予約したあと、サロンに行ってみたところ、脱毛したい部位を選べる高額のコースを勧められて契約したが,学生なので支払が困難である,あるいは高額の契約を断り切れず結び,あとでクーリングオフしようと思って連絡したところ期間が過ぎていると言われた、といったもののようです。

 

契約書面が特商法上の法定書面の記載等を満たしているかに注意を。

 前述の国民生活センターのADRで紹介されている事例にもありますように,クーリングオフ期間を経過している、とエステサロン側は説明していたものの,契約書面が特商法上の法定書面に必要な記載が欠けているケースがあります。たとえば,具体的な施術内容,1回あたりの時間数,総時間数などが欠けている,役務提供期間の記載があってもはっきりしない(ADRの事案では,回数無制限のコースのみ勧められ契約したが,中途解約の申し入れをしたところ有効期限が1年で既に経過済のため,返還するお金がないと言われたというものが挙げられています)など,という場合です。

 このようなときは,契約成立が前提で申込者が中途解約をするというのではなく,クーリングオフの期間が経過しないことになるので,適用を受けることになりますので,注意が必要です(ただし、契約期間が1か月を超え、契約金額が5万円を超える場合になります)。この場合は支払を受けた代金全額の返金をする必要があり、既に施術をしていたとしてもその分を清算しての支払にはできませんので注意が必要です。

 また、契約時に脱毛用クリームなど契約にあたり「購入する必要のある商品」として販売したものがあれば、「関連商品」として、これについてもクーリングオフの対象になります。

 

低価格の広告と実際のサービス提供金額が食い違うときの規制とは?

 国民生活センターの報道資料では、前述のようにSNS広告では低価格でサブスク的に利用できるように記載されていたのに、行ってみると高額の契約をすすめられた、とあります。

 このように、広告で表示されていた内容と実際のサービス提供金額が異なるような場合、どういった問題が生じるでしょうか。

 サービスの販売価格をことさら安いと表示している場合には、サービスの適用対象となるサービスの範囲や条件を明示し、安さの理由や安さの程度について具体的に明示をすることでそれをみた方が誤認しないようにする必要があると景品表示法上はされています。そのため、たとえば安く提供するサービスの利用にあたって条件があるのであれば(期間限定など)、それを示した上でないと事実に反する可能性が出てきますので、「有利誤認表示」というものにあたりうることになります。

強引に契約をさせた場合のリスクは?

 前述の国民生活センターの報道資料にもあるような,信販会社からハガキが届いたあとでも費用がかからず解約できる、といった事実と異なる内容を告げて強引に契約をさせた、という場合は消費者契約法にいう不実告知による取消事由にあたるとして、契約者から取消されるリスクがあります。

 また、「うちの脱毛エステ機を使えば、必ず永久脱毛になります」といったように実際に永久脱毛になるかどうかが不確実であることについて断定をした上で、それを信じた人がそれなら多少高額でも契約をしよう、と思って契約をしたというときでも契約を取り消される可能性が出てきます。

 実際にはこういったやり取りはエステの従業員の方とお客様との口頭でのやり取りになるので、あった、なかったの話になりがちです。そのため、そういったやり取りについて有無が問題になるときは契約を取り消したいと申し出た人がどこまで裏付けのものを示せるかによってくるでしょう。ただ、たとえば広告でも必ず永久脱毛になるかのように唄っていた場合には広告の表示内容の問題(「優良誤認表示」にあたる可能性があります)とともに、契約取消が認められる可能性が出てきます。

 

 脱毛エステは脱毛を希望する男性が増えてきているという世の中の動きに合わせて扱う店舗が増え、競争が激しくなっているところもあります。そんな中でも規制の範囲内でお客様のニーズをつかむサロンになって頂きたいと思います。

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