法律のいろは

2021年12月26日 更新契約問題のご相談

貸している物件を契約で決めている用途以外の用途に使っている・違反があった場合の対応

契約で定めた用途や禁止事項違反(用法順守義務違反)の意味

 テナントであれ,居住用物件であれ,賃貸借契約書を作成している場合には,どのような用途で使うのか・部屋であれば部屋に手を加えることを禁止するなど禁止事項を定めている場合があると思われます。例えば,事務室として使う・居住用として使う・ペットを飼うことを禁止するなどといったものです。特に契約上予定されている用途や禁止事項がある場合に,その違反は契約違反ということになります。

 当然大家側としては是正してほしいということを借主サイドに言うことが多くなるでしょうが,是正されない・苦情が多くなる場合の対応が問題となります。あまりにひどい場合には契約解除と退去を求めることにつながりかねません。ここで是正されない場合とは,事実関係すら争う(違反の事実を否定する・契約内容で争いがある)場合の他に,違反は認めるが是正しない場合が考えられます。前者は契約書の記載の他に違反となる事項を証拠から指摘できるようにしておく必要があります。

 これに対して,後者の場合には特に契約解除が認められるような話であるかが重要です。そこには,テナントやアパートなど他の借主がいる場合の周りへの影響や違反の程度等の事実関係がどうであるのかという話も重要になってきます。また,違反が一つのものよりも複数のものがあれば信頼関係の破壊につながりやすくなりますし,是正を繰り返し求めたという点も同様に影響してきます。

 

 例えば,ペット禁止物件でペットを飼い,鳴き声や部屋へのダメージが存在する・周りからの苦情があるケースでは信頼関係の破壊につながりやすくなります。事務室用であった物件の内装を改造し勝手に居酒屋などにしていた場合もその可能性が高まります。また,飲食店を想定して借りている場合も借りている部分以外に共用スペースまで独占的に使用して看板その他を置く・注意をしても聞かない場合には,その態様にもよりますが,信頼関係の破壊につながりやすくなります。

 逆に,事務室として貸していた物件が学習塾として使われていたケースでは信頼関係の破綻につながらないとした裁判例もありますが,通塾している生徒に関してトラブルや苦情が頻発していたという場合には異なる結論になる可能性も考えられます。

対応の注意点

 使用として限定するのであればその内容・禁止事項があればその内容をきっちりと契約書に記載しておく必要があります。また,迷惑事項・違反事項や苦情が出ている場合にはその指摘だけでなく反応などを記録しておくことで,違反の事実や内容・影響面で争いが出てくることを避けることにつながります。特に音については記録しておくことは難しい面がありますが,少なくとも周りの方からにクレームの事実は記録により残すことが可能です。

 話し合いをする場合に,是正を求めるのであれば,どのような形で是正を求めるのか・対応期限をどこまでとするのか(対応が難しいほど短い期限では意味を持たない可能性があります)・どこまで是正のための話し合いを行い,その後どのように対応するのかを考える必要があります。仮に契約解除や退去を求める場合に他の問題がないのかどうか・ある場合にその点も含めて裁判なども視野に入れるのか,何かしら金銭面の解決を含めた話し合いで進めるのかといった点です。状況によっては弁護士といった専門家への相談をした方がいい場合もありうるでしょう。

 

 比較的最近の裁判例では行政規制への違反が借主に存在するケースなどでも貸している建物の価値や利用に影響を及ぼす可能性がある場合に,用法順守義務違反による解除を認めたものもあります。どこまで一般化できるのかという問題はありえますが,こうした視点からも解除が可能となる場合もありえます。使い方や禁止事項などは様々存在しますので,それぞれのパターンや状況を整理することも重要となってきます。

お電話でのお問い合わせ

082-569-7525

082-569-7525(クリックで発信)

電話受付 9:00〜18:00 日曜祝日休

  • オンライン・電話相談可能
  • 夜間・休日相談対応可能
  • 出張相談可能

メールでのお問い合わせ

勁草法律事務所 弁護士

早くから弁護士のサポートを得ることで解決できることがたくさんあります。
後悔しないためにも、1人で悩まず、お気軽にご相談下さい。

初回の打ち合わせは、有料です。
責任をもって、担当者が真剣にお話をきかせていただきます。
初回打ち合わせの目安:30分 5,500円(税込)