法律のいろは

2021年9月20日 更新契約問題のご相談

電子契約・電子署名の活用と注意点について

はじめに

 少し前に押印廃止の話があり、現在も議論中のところです。他方で、新型コロナウィルス感染拡大もあって、非接触で行える電子契約・電子署名の利用も少しずつではありますが増えてきたように思います。

 

今回は、こういった電子契約・電子署名の活用にあたって、どういったメリットやデメリットがあるのか、注意点も含めて取り上げます。

電子契約とは?利用のメリットについて

 電子契約については法律上の定義などはなく、一般的に紙媒体で作成していた契約書をPDF形式などで電子化し、インターネットなどの通信回線により契約の相手方へ送付し、内容の合意に至ったことの意思表明として電子署名や成立時期を証明する電子的なタイムスタンプを入れるものです。

 電子契約を利用するメリットとしては、紙媒体でない形での保存になるため、かさばらずにできる、電子契約の場合、原本の保管で生じうる紛失や改ざんのリスクをバックアップ保存で防げることなどが挙げられます。また、書面での締結の場合、特に遠方ですと郵送して署名・押印をもらうことになるため、最終的な締結まで1~2週間かかることが多いです。これに対して電子契約の場合には、印刷して郵送することがなくなるため、その分契約締結をスピーディに行うことができます。さらに、紙による契約書でないため、印紙税の対象にならないことから、印紙代の節約や、紙での締結に至るまでのコストも削減できます。

電子契約を利用する場合のデメリットとは?

 これは今まだ議論中の押印に関する話とも関わることになりますが、電子契約の場合、電子署名の方法によっては、裁判上文書の真正を証明するのに十分でないとされる可能性があります。そうなると紙媒体での書面と比べると法的効力に劣るリスクがあります。

 またたまにあるのですが、契約日を遡る必要があることがあります。しかし、電子契約の場合には電子署名や、タイムスタンプにより電子文書自体に作成日付が書き込まれて変更できなくなっています。そのためバックデートをする必要があるときは効力発生日がいつになるのか別で記載しないといけなくなります。

 さらに紙の契約書では、一旦交付した原本を返してもらい撤回することができます。しかし電子契約の場合は原本・写しの区別がないので、いざ撤回するとなると、意思表示を撤回したとの通知を相手が受け取ったという電子文書を別途作って送付しなくてはならなくなります。加えて締結後の条項削除や訂正についても電子契約では、その後の変更が改ざんになりかねないので、覚書など別で作る必要が出てきます。一旦締結した後の変更が柔軟にできないことから、作成にあたっては紙媒体の場合以上に内容面に注意を要するでしょう。

 また、あまり多くはないのですが法律上電子契約は認められないことがあります。法改正などで保証契約や書面による消費貸借契約は電子文書でも行えるようになりましたが、定期賃貸借契約は電子文書で行えないため、従来通り紙媒体による必要があります。

 それから、電子契約を交わしたあとに裁判でその内容が問題になる場合に備えて、どのように保存するかについても意識しておいた方が良いでしょう。一般的には電子契約自体の対象物(PDFファイルなど)の提出で足りるとされています。ただ、契約の成立について争われるような場合には、電子署名検証画面をプリントアウトしたものや、契約締結に至る交渉経緯についてのメールのやり取りなどを印刷して提出しなければならなくなる可能性があります。そのため、そういった対応をしなければならなくなることも踏まえ、証拠を保存する・メール送付などにより証拠化しておくと良いでしょう。

 

電子署名をしたあと契約書を保存するときの注意点

 電子署名での契約については、法律(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法の特例に関する法律)で電子取引にあたるとされることから、7年間保管しなければなりません。

 また、事業に関する重要な資料としての契約は、会計帳簿閉鎖から10年間保存する必要があります。そうすると、実際のところ契約期間はもちろんですが、契約が終わってからも少なくとも10年程度は保存する必要があり、場合によってはそれ以上に保存しておいた方が良いケースもありますので、注意が必要です。

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