法律のいろは

2021年4月19日 更新契約問題のご相談

個人情報を第三者に提供する場合に気を付けるべきことは?

 不動産オーナーの方は、不動産管理会社にお客様(賃借人)の個人情報の管理を依頼されている方が多いと思います。取得した個人情報については、会社内のみで利用するだけでなく、業務の関係で外部の業者(物件価値向上を図るための各種サービスなど)に委託するなど、第三者に提供することも考えられます。その際にはどのようなことに気を付ければよいでしょうか?

個人情報利用にあたっては利用目的で制限

 事業者の方が個人情報を取得・収集するにあたっては、適正な取得と利用目的を通知等、明確化が必要とされています。

 例えば商品・サービス提供を受けるにあたって、アンケートの記入を求められたとき、注意書きで、「収集した個人情報について、商品、サービス、イベントの案内、商品、サービス向上の目的以外には利用いたしません」といった内容が記載されていると思います。これが、利用目的の通知にあたることになります。利用目的を相手方に知らせる場合は、ホームページなどへの掲載、パンフレットやカタログの配布、会社の見える位置に掲示したり備え付けるなど「公表」が考えられます。

 ただし、直接上記のようなアンケート用紙に個人情報を書いてもらう場合には、あらかじめ利用目的を明示しておかなければならないとされていますので、上記のような「公表」では足りません。

 

第三者に個人データを提供する場合には同意が必要

 個人情報保護法では、個人情報を取得したり集める場合、前述のような利用目的の通知、公表や明示があればよく、同意までは要らないとされています。ただ、利用目的達成に必要な範囲を超えて個人情報を取り扱う場合や、個人データを第三者に提供する場合には本人の同意が必要とされています。なお、「個人データ」とは個人情報データベース等を構成する個人情報をいうとされており、「個人情報データベース等」とは、特定の個人情報をコンピュータなどを用いて検索できるよう体系的に構成したもの、と定義されています。

 同意の取り方としては、いくつか方法があり、これについては経済産業省のガイドラインで定められています。例としては、同意する旨を本人から口頭または書面(電磁的記録を含む)で確認する・本人が署名または記名押印した同意するとの文書を受取確認する・本人から同意するとの確認欄へのチェックなどが挙げられています。

 いずれも明確な明示の同意が取られたといえることが必要ですから、例えばアンケートを行うにあたって、単に「第三者提供する場合がありますのでその点ご了承下さい」と記載した書面に記入を求めアンケートを書いてもらうだけでは、同意を得たことにはなりません。「第三者提供に同意します」の横にチェック欄を設けて、そこにチェックがある場合にのみ、第三者提供とするような方法が取れるもの・「第三者提供にご同意いただける場合に限りご回答ください」と記載して、同意できない場合には提出しないよう明示しておく、といった方法によることが必要です。

 また提供先の第三者については法律上明示して特定までしなくても良いですが、実際にはある程度特定しておいた方が、個人情報を提供する側からしても安心できるでしょう。

 なお、思想や信条、信教に関する個人情報や社会的差別の原因になるおそれがある情報(いわゆる「センシティブ情報」、上記以外では犯罪歴、身体・精神に関する情報(病歴を含む)などが入るとされています)については、漏洩など不適切な取り扱いがされると、その他の個人情報以上に個人の権利侵害の程度が大きいといえます。

 

第三者に個人情報を提供する際同意が要らないケースとは?

 あらかじめ本人の同意を得ずに第三者に個人データの提供ができるのは、法令に基づく場合、人の生命や身体、財産の保護のため必要な場合で、本人の同意を得ることが困難な場合など、一定の場合に限定しています。たとえば、警察の捜査に必要な情報を照会する、大規模災害のときに賃借人の家族が賃借人の安否確認を行う場合などには提供できるとされています。

 また、それ以外、たとえば名簿提供業者などについても以下の要件を満たせば本人の事前同意がなくても個人データを第三者に提供できるとされています。

① 第三者への提供を目的とする

② 第三者に提供される個人データの項目

③ 第三者への提供の手段・方法

➃ 本人の求めに応じて、本人が識別される個人データの第三者への提供を停止すること

を、あらかじめ本人に通知し、または本人が容易にしりうる状態においていれば、事前同意がなくても個人データを第三者に提供できるとしています。

 なお、業務の委託先やグループによる共同利用など、一定の場合にはあらかじめ本人の同意を得ずに個人データを提供しても、第三者提供に当たらないとされています。ただし、業務の委託先への提供の場合は、委託先の個人情報管理についての必要かつ適切な監督をしなければならないとされています。また、委託先がもともと提供された会社の利用目的達成に必要な範囲を超えて利用する場合には、第三者提供の制限にかかるので気を付ける必要があります。

 

 このように、個人情報の利用にあたっては、個人情報保護法以外にもガイドラインなどで細かな定めがされているケースがありますので、どのように定められているのかよく確認した上で利用するのがトラブルを防ぐ上でも大事になるでしょう。

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