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法律のいろは

2020年4月23日 更新契約問題のご相談

退職した従業員のために負担した研修や資格取得費用の請求はできる?

退職の自由を制限する形は難しい

   人手不足が叫ばれる現在,入社した従業員のために,仕事で必要な資格取得の費用負担・その他さまざまな研修費用を自社で負担することは,人材育成の点から多いと思われます。せっかく,費用負担をして育成をした人材が早く辞めては元も子もありません。当然,費用請求をしたくなるところですが,こうした請求はできるのでしょうか?

 同じことは美容室など技能指導を受けながら仕事をしていく場合・看護師について看護学校の学費などの貸し付けをしていた場合にもありえ,退職の際に指導料などの名目でお金を請求できるのかという話もあります。
 最近では,在学中の奨学金返還を支援する手当等を設ける企業も増えていますが,中途退職をした際に返金を求めるならば同様の問題は出てきます。

 

  こうした費用請求は,投資したお金の回収という面もありますが,一面で投資をした人材を失いたくない,退職しないでもらいたいという面もあります。面倒なことに法律上,退職の自由を制限することは許されていません。妨害となるような違約金を請求することもできません。こうした内容と評価されれば,いくら合意書や誓約書があっても,無効となり,支払請求はできなくなります。

 先ほどの美容室のケースは裁判例があり,結論として,こうした点が当てはまるため無効(要は請求できない)とされています。同じく退職金を減額するという決まりも無効と考えられています。

お金の貸付(金銭消費貸借)にしておけば問題ない?

   実際に研修費用や免許取得費用に必要なお金を貸していたのであれば,貸金の請求だから問題ないのではという考えも起きてきます。高額な費用負担はいわゆるMBAの取得のための留学費用ということでだいぶ昔に問題になり,看護師の資格取得のための費用を貸したというケースも問題となってきたところです。身近な話からしますと,新入社員に研修のために研修機関(会社)が提供する研修を受けさせるのに,その費用を貸すということもありうるところです。

 これらを貸金で行うのであれば,お金を貸すことと返済に関する事柄・長く勤めてもらいたいのであれば,何年か勤務をすれば返済が免除になるという事柄を設けるという話になってきます。このうち,資格取得や研修(研修も幅広く存在しますが,例えば技能研修や新入社員用の社会人マナー等研修から,広い意味での自己啓発的なもの・英語の勉強などありえます)は,多くは会社側に利益が入るものです。要は実際の業務にすぐ直結するプラスがあるから受けてもらったという話です。この場合,本来会社側が負担すべき費用ではないかという話も出てきますし,利益を会社が受けるのに,貸金という形をとることは,実際上強い退職制限(違約金の定め)と評価される可能性が高くなります。

 言い換えれば,貸金だからOKではなく,実際上貸金と考えにくいかどうか(従業員側が自由に選んだと客観的に見て言えるかどうか)が重要になってきます。そのため,業務につながる話(会社に利益が入る場合)には貸金だから問題ないと言いにくくなります。また,会社の業務と言いにくい場合(純粋な自己啓発のような場合)であれば,貸金の合意があると明確に言えること・返済の中身が実際上退職の自由を奪うといえない内容であることを満たせば,問題がないことになります。ここは吟味が必要となってきます。返済の中身については,一定期間勤務すれば返還免除という場合,この期間が長すぎはしないかどうか・その他返済の期間等が問題となってきます。

 

 高額な費用負担を伴うものとして,先ほど看護師の資格取得支援やMBAの話を触れました。看護師の資格取得とMBAでは相当異なってくる面があります。双方とも貸与を受けており,本人が負担すべき費用(看護師であっても資格を取得してから採用されるもの)ではありますが,通常看護師の場合には一定期間の勤務を約束させ退職に違約金を課す性格が強まりますから,貸金の合意自体が無効とされる可能性は高くなります。ちなみに,比較的最近裁判例で争われたものとして,病院に採用された方が看護学校に通う修学金の貸し付けを病院から受け,看護師資格を取得し数年経過して退職したケースで,貸金の返還と親へ保証人としての支払請求をしたというものがあります。このケースでも同様の点等から無効と判断をしていますが,重要な点として,返還免除に貸し付け終了後6年の勤務を要求している点を不合理としています。また,近隣の同業種企業の同様の規定内容を考慮対象としています。言い換えれば,返還免除規定は長くても5年以内の勤務にする必要がある・同業他社の規定がどうなっているか注意が必要といえるでしょう。

 もちろん,MBAであってもそうした要素はある程度ありますが,具体的な業務との関係での技能というよりも典型的なキャリアアップ要素が強い(汎用性が高い)点があります。会社側の業務命令の要素が強く,どういった分野を勉強するかを含め会社からの指示が高い場合には,それだけの命令に基づく成果を会社が手放すと言いにくいと考えられます。一定期間は働いてもらうという要素が強く違約金の要素が明確になってきますので,こうした場合には貸金の決まりは無効となります。このような要素がない場合には貸金として有効とはなりますが,これはあくまでも自主的な研鑽であって本来本人が負担すべきお金を貸したといいやすくなるためです。とはいえ,実際裁判で問題になったケースでは,どの費目までがこうした本人が負担すべき費用といえるか問題になっています。

 

   貸金という形にすれば問題がないという話ではないこと・あくまでも退職の自由を奪う違約金として機能するかどうかは,返済の方法などや問題となる研修等の性格や会社の業務にどこまで直結するかなどの吟味が必要である点は注意が必要でしょう。
 また,奨学金の返済支援を行う場合に手当で行っていた場合には返済を求める根拠が薄くなりますし,貸金形式にしてもこれまで述べた点と同様の話が当てはまるものと言えます。

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