法律のいろは

2019年8月13日 更新契約問題のご相談

請負と業務委託の違い,民法改正による影響は?

業務委託・準委任契約のメリットとなる点

 IT業界では,例えば,大がかりなシステムなどの開発を行う際の契約で一括で契約をする以外に細かい業務ごとに契約を行う(いずれもモデルひな形が経済産業省のページに載っています)ケースがあります。また,その中では,契約の形態に「準委任契約」としているものがあります。このような契約形態が選ばれる理由にはどういった点があるのでしょうか?

 

 その理由の一つとされるものに,準委任契約とは,一定の事務処理の委託を受けるだけで請負契約のように開発業務の完成義務を負うわけではないという結果責任を負わなくてもよくなるという点が挙げられます。もちろん,一般にホームページの制作であれば,打合せとサイトマップなどの仕様書で取り決めた内容を制作するという結果責任を負う請け負い契約になる場合が多いと思われますが,大がかりなシステム開発で工程ごとに契約を細分化する場合には,仕様書の策定(要件定義の作成や設計の一部)・テストなどの一部・保守管理を準委任契約にするものがあるようです。

 ただし,契約形態が請負か準委任かが問題になるケースでは裁判になると契約の名称や書面の記載だけでなく,発注者と受注者の認識や委託している内容(業務内容)や実態等を考慮しています。開発に関しては発注者側の協力も必要な面はありますので,こうした点を考慮して実態等がどうなっているかが結局は問題になってくるでしょう。特に納品後に大きなバグなどがあった場合にその修正に応じるかどうかが問題になったケースでは,こうした契約形態がどういったものであるのかは問題になりえます。

 

 こうした準委任契約とされる部分は,発注者側(ユーザー側)が主導していくからという考えに基づくものです。工程ごとに契約を分けることで,開発会社側には,情報不完全な中で開発するものの中身と費用総額を決める,そのことで後で大きな負担を負うかもしれないという点を避けることができます。工程ごとの状況を踏まえることができます。結果への責任や各工程ごとの責任ということになれば,費用がもらえないリスクを減らすこともできます。

 ただし,発注者側には費用総額が分からないし,各工程ごとに分けることで契約をどうするのかの手間が増えてしまうという点もあり,トラブル発生の可能性はあります。

 

 こうした準委任契約は,業務委託契約(SES契約)という形で,客先での開発その他の業務に従事する形態として締結されている場合があります。この場合には結果に対する責任という点よりも,違法な派遣契約が実態ではないかという点が問題になってきます。

民法改正で「準委任契約」で変わる点とは?

 2020年4月から民法の一部が改正されます。準委任契約についても法律での規定が一部改正されます。そのうちの内容の一部に準委任契約の内容として大きく2つのタイプが設けられるというものがあります。そのうちの一つはこれまで通り一定の事務の委託を受けてそれをこなすというものです。この場合は,その業務をこなすことについての費用を決める場合もあれば,SES契約の取り決め方でみられる〇〇時間ごとに〇〇円のような時間単位での報酬の決め方もありえるでしょう。もちろん,この場合でも実際は結果責任を負う内容であった場合には結果責任型の内容(2つ目で触れるものではないか著言う話)ではないかが問題となりうることはあるでしょう。

 

 2つ目は,一定の事務を行うことでの成果を引き渡すことで報酬を取り決めた場合,つまり結果責任型の準委任契約が設けられたということです。この場合は報酬の支払い時期について何かしら契約で定めておかないと,費用をもらえるのは引き渡した後ということになり請負契約の場合と同じになります。結果責任という点も出てきますから,この場合には請負契約との違いはなくなってきます。これまで準委任契約として結果責任を負わないとされていたものであっても,例えば,仕様書の作成と引き渡しを実際は行ってきたものは結果責任型の準委任契約としてとらえられるのではないかと考えられます。先ほどの,個別に工程を分けた場合での要件定義書の作成や設計の一部等を行う場面が該当するでしょう。そもそも,一括で契約した場合には請負契約となる点も無視はできないでしょう。

 

 途中で業務を行えなくなった場合(受注会社側のミスが原因でない場合に限ります)でも,委託を受けた事柄を処理した割合・結果責任型の場合ではそれまで仕上がった部分が他と分けることができる場合に,仕上がった部分の割合で費用を請求できるという決まりが設けられます。ここも契約書で取り決めをしておくことが可能で,その場合にはその内容によります。

 

 このように,民法の改正は契約内容や形態をどうするのかにも影響をもたらす可能性もあります。

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