法律のいろは

2019年6月10日 更新契約問題のご相談

追加変更工事を巡るトラブルと代金請求

 当初ち密に設計図書や仕様が作成され見積もりが行われる場合もあれば,リフォーム工事では特に設計図書もなく大さっぱな見積もりが作成されるケースがあります。工事を始めてからさらに必要な部分がわかるなど様々なケースがありえます。打合せを進めながら工事をはじめ,当初行わないことにした工事を結局行う等様々ありうるところです。

 こうした工事のうち,一部が当初予定されていなかったものを行った追加変更工事であるとして,工事代金を請求したい(逆に請求を受ける)可能性はあります。追加変更工事であれば,代金請求ができるかの話が出てきますが,そこで問題となるのは実際に追加変更工事を言えるのかどうかです。このほかに勝手に行った工事である・工事をそもそも行ったのかが問題になる場合もありえますし,そもそも追加変更工事があっても代金増額は行わないという合意だったかどうかが問題になることもありうるでしょう。

 

 まず問題となるのは,追加変更工事といえるものであるのかという点です。当初の工事で予定されていた内容を行うのは,施工業者としては当然の話ですから,単に工事が遅れて当初予定内容を行ったことは追加変更工事ではありません。そのため,代金の請求は通常はできませんが,施工業者側(下請けを含む)に原因がない(責任を負わせる事情がない場合に)にはその分でかかった費用の負担は発注者側がすることになるでしょう。逆に施工側(下請含む)のミスによって新しく工事をする必要が増えた場合には,そもそも当初予定された工事をきちんと果たしておらず,代金や費用負担を施主や元請側に求めるのは難しくなります。

 どこまでが当初予定された工事内容であったのかは,各種図面や見積書・工程表・打合せの記録等を見て考えていくことになります。見積書や仕様書は重要な資料ですが,大雑把な記載であることなどもありえます。仕様書や図面に記載があり,見積書の項目に含まれているのであれば,追加変更とは言いにくくなります。図面にも見積書にも記載がなければ通常は追加変更工事と言えます。図面に記載がある場合には見積書に該当項目が明確にない・別途ということで外されていれば,追加変更工事と言いやすくなります。そうでない場合は個別の状況に応じてになるでしょう。

 性質上当然含まれたといえるものやその他の資料から含まれたという認識である場合(工程表の記載・検査の際に手直し要求として処理されている等)場合には,追加変更工事とは言いにくくなってきます。不具合の指摘に応じて行われる工事はその指摘が当初想定されていた工事内容からあまりに逸脱する場合はともかくとして,通常は指摘に応じて工事を行う・その際に当初工事とは違う話であるという話が出ていない場合(記録などで全く確認できない場合)には,そこで行われた工事を追加変更工事というのは難しくなるものと思われます。こうした点以外にもどのようなやり取りが工事が終わった後になされていたのか等もポイントの一つ(施主・元請側と業者・下請け側がお金の清算をどうするかという点の考えが現れているため)にはなりえます。

 

 いずれにしても,このように様々問題になる点はありえます。その一つに,追加変更工事といえるかどうかという点とは異なりますが,施主や元請側が指摘した事項に対応した工事が不具合の手直しを超えた場合に,その部分の代金を請求できるのかという問題もあります。手直しの程度を大きく超えていればその部分は追加工事になり,代金請求ができそうではあります。

 ただし,こうした工事もプロである業者側が代金請求をするものであるという認識であれば,その点を指摘して工事施工する必要があるとする見解も存在します。この見解は,代金請求をするには工事を行うことの合意と工事だけでなく,その工事の代金を支払う合意が必要という前提に立つものです。言い換えれば,代金支払いの合意(有料サービスであるという合意)がない場合には代金請求ができない・検査対応を単にした場合には,有料サービスの合意がないから支払いを請求できないというものです。打合せなどで,追加部分であることやお金がかかるという認識が裏付けられればいいという話になりますから,施工を終えたという写真等の記録とともに記録を作り残しておくことが重要であることを示すといえるでしょう。

一式工事だから追加請求ができないという合意の意味は?

 工事の発注は特に元請と下請との間では見積内容に基づき,注文書と注文請書の取り交わしをしているケースも多いと思われますが,基本契約書で追加変更工事が生じた際の代金が追加で出るのか・出る場合の決め方などを定めている場合があります。その中には,一切増額をしない(逆に減額もしない)という取り決めをしている場合・増額には書面での追加変更契約を必要とするという内容もありえます。

 

 書面での取り決めが必要だけれどもそうした書面がないが大きく追加変更工事がなされた場合には大きくトラブルになる可能性があります。こうした場合に書面がないことが当然に追加代金の請求ができないことにつながるかどうかは問題になります。裁判官が書いた文献には,こうした場合を後日の紛争防止のための要求とみて,追加請求できなくなるわけではないと考える場合が多いと述べたものもあります。

 

 また,代金の追加などの変更はしないという合意がある場合には,軽い追加では増額がないという考え方・合意をそのまま読むという考え方もありますので,追加出来高が見込まれる工事では安易にこうした内容で合意をすることは後で問題につながる可能性があります。契約内容のチェックが重要になります。もちろん,こうした項目があっても,追加変更工事がされる際のやり取り内容などによっては追加変更出来高には工事代金を払う(代金額も問題になるでしょう)という合意の変更が読み取れる場合もありえますが,やり取りの経過などを追う必要もあり,大きな紛争になる可能性もありえます。先ほど申し上げたチェックだけでなく,記録などをきちんと残しておくことが重要である点はここからも言えるでしょう。

システム開発等での追加の仕様や作業の部分はどうなるのでしょうか?

 少し業務内容や場面が異なりますが,同じような話はシステム開発等IT関連の開発作業の場面でも生じます。これは建設業と同じように,請負契約で契約当初示された仕様書等に反映されたのかどうか・追加発注があったといえるのかどうか等が同じように問題となるためです。

 

 建設工事のように,追加部分が出た際にその部分と費用を個別に合意して書面にしておけば問題が後で生じることはありませんが,開発を進めながら当初の打合せなどでは想定されていなかった仕様の追加や変更が生じる場合はありえます。書面が作成されていないこと(そうした時間がない場合を含めて)は十分ありうるところですが,この場合には当初の仕様書などの内容や費用の取り決め方・仕様変更が出た際に追加の請負の合意があったと評価できるやり取りがのかを踏まえて,追加の開発といえるのかを考えていくことになります。また,追加の開発といえる開発が存在するとしても,費用面でいくらにするのかの合意がはっきりとない場合は,相当額とする合意がある・法律上相当額の請求ができるという規定を用いて,いずれにしてもこの金額がいくらといえるのかが問題となってきます。

 

 ここでの相当額がいくらなのかについての一つの考え方として,人によるプログラムなどの作業が作業内容でその人件費が概ねの金額といえる点を考慮して,プログラムの工数に単価をかけわせるというものも存在します。

 

 あくまでも問題防止のためには合意をきちんとしておくことが重要です。仮に難しくても,当初の仕様をきちんと決めておき,追加部分と評価できるかどうかの見通しをつけておく必要はあると思われます。

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