
はじめに
エステサロンでは,単にエステ施術のサービスを提供するだけでなく,エステでの施術の効果を高めるためのサプリメントや化粧品,美顔器具などを合わせて販売することがあります。
その場合に,顧客から,エステ施術に関する契約を途中で辞めたいとの希望が出たとき,既に売っているサプリメントや化粧品などの扱いはどのようになるのでしょうか?
今回はこういった,エステ施術と関連して販売した商品について,どういった扱いになるのかなど見ていきたいと思います。
エステ施術との「関連商品」とされるのはどんな場合?
この点,エステサロンでの施術に関する契約は,「特定継続的役務提供契約」にあたることから,顧客と契約する際に,契約書面を交わさなければならず,その際に記載しなければならない必要事項が定められていること、正しく記載されていない書面の交付であると顧客はクーリングオフ期間(8日間)を経過しても契約を解除することが出来る、とされていることは,以前のコラムでも触れた通りです。
この契約書面には,エステでの施術の提供に際し,エステの施術を受けるものが購入する必要のある商品があれば、その商品名も記載することが定められています。こういった商品が「関連商品」とされているのです。
よく見られるのが,たとえば先のサプリメントなどを売り切りたいと思って,サプリメントは「関連商品」ではなく,「推奨商品」にすぎないといって,サロンからエステサービスのクーリング・オフや中途解約による商品の返品を拒む場合です。
しかし,エステサロン側から「関連商品」の範囲を狭くしたからといって、それが「関連商品」とならないわけではありません。実際には顧客にエステサービスとの関連性や必要性を判断し,情報を顧客に提供してサービスと併せて指定されている商品を販売すると,「関連商品」にあたるものとされています。
ちなみに,特定商取引法施行令でエスティックサービスの場合,化粧品や健康食品,下着,美顔器・脱毛器などが関連商品として指定されています。
ですから,サロンの側から,サプリメントの飲用を前提として施術する・飲用により施術の効果が高まるといった情報を顧客に提供していた場合には,契約書面に書かれていなくても関連商品に該当するとされますので,注意が必要になります。
顧客からエステ施術とともにサプリメントの契約も中途解約したいとの申し出があった場合、サプリメントの契約はどう精算されるのでしょうか?
顧客からエステの施術の契約と併せて,サプリメントの購入も中途解約したいとの申し出があった場合には,どのように精算する必要があるのでしょうか?
中途解約の場合,サロンから顧客に解約手数料を請求できますが,上限は2万円か契約残額の10%相当のいずれか低い金額のとされています。
また、関連商品については商品引き渡し後の返還の場合,サプリメントのように包装されているものを開封したり一部使用すると,返還するまでに価格が下がり無価値に近くなってしまうといえます。そのため,サロン側からは顧客に未開封・未消費の商品の価格の支払いを求めることが出来ます。
ちなみに,美顔器のような器具については,耐久性はありますが,人の顔に付けて使用するものですので,使用料や実際の価値をどうみるかで争いになることが多いでしょう。これについてはいくつか考え方がありますが,一つの考え方としては,美容機器の耐用年数は5年とされているので、使用日数を耐用年数で日割り計算をして,商品の値段にその割合を掛けて使用利益を考える方法もあります。
これらの点については通常の使用料がいくらなのか分かりにくい点もありますが,顧客との話し合いで折り合いがつきそうであればその金額によることになるでしょう。
なお,クーリング・オフについては,健康食品や化粧品など消耗品を使用または全部,一部使っているときはその商品のクーリング・オフは拒めます。
サロンでの施術の効果には個人差があるため、思ったほどの効果がなかったなど,途中解約の申し出をされるケースは割とあるのではないかと思いますが,その場合にも双方きちんと話し合いをした上で精算できるのが一番良いと思います。