はじめに
エステティックサロンでの施術については、一定期間継続して,その効果の有無を確認する必要があるなどの理由で、比較的長期にわたる契約であるのが一般ではないかと思います。
ただ、思ったほどの効果が得られなかったり、あるいは転勤などの理由で中途で解約したい、あるいはしなければならないという事情が出てくることもあります。
そんな場合、エステサロン経営者としては、どんな場合に中途解約に応じなければならないか、また中途解約をさせないような場合にはペナルティがあるのか、というところが気になるところではないかと思います。
今回は、東京消費者被害救済委員会(消費生活総合センター等の相談機関に寄せられた苦情・相談のうち、東京都民の消費生活に著しく影響を及ぼし、又は及ぼすおそれのある紛争について「あっせん」や「調停」を行い、その解決にあたる、「東京都消費生活条例」で設置された知事の附属機関になります)であっせんにより解決したケースを素材に見ていきたいと思います。
エステ契約の中途解約の申し出があったとき、条件を付けて拒めるの?
上記のあっせんにより解決したケースは、最初エステサロンで10回コースの契約をしたあと、途中で施術料金が1回1万円に値上がりすると言われ、20回コースを契約、その少しあとに夫から転勤の可能性があるといわれ、20回コース開始前に解約の申し入れをしたものの、エステサロンが中途解約を拒み、解約しないようメールを送るなどしていたというものです(その途中で商品の購入もしていますが、この点については別の機会で触れます)。
上のケースでは、そもそ契約書面に中途解約に関する規定があったものの、エステサロン側が「自己都合による解約は認めない」特約があるといって、中途解約に応じなかったというものです。
この点、エステティックの施術に関する契約は、特定商取引法上、「継続的役務提供契約」にあたることから、中途解約の申し出ができるとの規定があります(特商法49条1項)。そのため、顧客から解約したいとの申し出があれば、エステサロン側は条件を付けてはならず、特約で制限できません。ですから、上のような対応をすることはできないといえます。
ただ、解約にあたってはエステサロン側が、顧客に対して一定の損害賠償額(解約手数料)を請求できるとされています(ただし、サービス提供開始前は2万円、開始後は2万円か契約残額の10%相当額のいずれか低い金額)ので、その金額分については、顧客に支払いを求めることが出来ます。
顧客からクーリング・オフの主張がされたときは?その場合どう精算することになるの?
上記のケースでは中途解約で最終的に処理をしていますが、実はこの事案、顧客からの主張でクーリング・オフが認められうるものでした。
それというのも、このケースでは、概要書面と契約書面の記載事項の不一致や、エステ施術時にエステサロンが顧客に購入を薦めた商品(サプリメント)も含めた代金総額や支払時期、支払い方法などが記載されていないという不備があったからです。こういった概要書面や契約書面の記載事項・内容に不備があると、そもそもクーリング・オフの起算日自体が開始されていないとされてしまい、結局のところクーリング・オフの期間である8日間を過ぎても認められることになるのです。
もしクーリング・オフが認められてしまうと、受け取ったサービスに関する代金の返還をしなければならなくなり、それにあたっての損害賠償、違約金の請求はできません。また、顧客に対して受けたサービス相当の対価を支払うよう求めることもできなくなります。
まとめ
このように、エステ契約については、顧客から中途で解約したいとの申し出があれば拒むことはできません。また、契約の際に渡した概要書面や契約書面に記載の不備があれば、そもそも受け取った代金全額を返還しないといけなくなるリスクもありますので、こういった点を踏まえてサービス提供を行うようにしましょう。