法律のいろは

2019年1月5日 更新契約問題のご相談

敷金ゼロ物件でのトラブル?鍵交換費用やクリーニング代の請求は違法?

敷金がゼロということの意味

 昨年改正された民法でも「敷金」に関する項目が設けられることになりました。別にこれまでの取り扱いとは変わりませんが,敷金とは借主が貸主に対して,賃貸借契約中に負う負債(未払いの家賃や弁償費用,退去時の原状回復費用等)の担保として差し入れるお金のことです。これまで多くの賃貸借契約では家賃の数か月分を敷金として取ることを契約書に入れているものが多かったように思われますが,最近は他の物件との競争もあり,礼金だけでなく敷金がゼロとなっている物件もあります。

 

 こうした物件では,借主が退去する際に発生する費用(原状回復費用)は借主が貸主に支払うことになります。原状回復費用は,一般には賃貸借契約を結んで部屋を引き渡した後から契約が終了し明け渡すまでの間に,自然な時間の経過で劣化したもの以外の部分を元に戻す費用ということになります。時間が経過して部屋の床などが劣化したものは含まれませんが,例えば,借主が窓ガラスを壊した・壁紙を借主が飼っていたペットが破った等の破損部分などを修理する費用が含まれます。借主の側にこうした費用がかかることの説明は必要ですし,何よりも注意しないといけないのは,敷金がない場合にはお金を預かっていないがために,借主が支払わない・支払えない場合には,回収ができないリスクが出てくるということです。

 もちろん,こうした場合のために保証人になってもらっているという話が出てきますが,保証人自身が例えば借主の親で支払い能力がない場合にはここでも回収できないリスクが出てきます。家賃保証会社の利用であればこうした点はカバーできます。ちなみに,保証人についても昨年の民法の改正で規制が一部変わります。

 

 ちなみに,借主の入居後どこの部分が破損などをしたのかは,退去後すぐに貸主側では確認をするかと思われますが,入居直前にも確認をして写真等記録に残しておいた方がトラブルを防げる点は大きくなります。

クリーニング代や鍵交換費用は請求できる?

 敷金ゼロ物件であっても,退去時に鍵交換代として〇万円・クリーニング費用として〇万円を請求するという場合があり,借主との間でトラブルが発生することもありえます。最近では鍵交換代を入居時に請求をするというケースもあるようです。

 

 まず,退去時のこうした費用の請求について触れていきます。一般に,鍵交換はいったん住んでいた方が退去した後に次の方が入居する際に鍵を変に使われていたら困るという話で物件を借主側で管理をする都合で請求する費用です。そのため,当然には借主に請求はできません。クリーニング費用については,先ほど触れました原状回復費用に関する考え方が当てはまります。つまり,時間の経過とともに劣化した部分・汚れた部分を清掃などする費用は請求をできないということになります。また,部屋を借りてもらってからそこまで時間が経過していない場合にはそうした費用が発生することは通常ないため,この場合でも請求は基本的にはできないことになります。もちろん,借主側がひどく汚したという事情があれば話は別です。

 こうした話は,国土交通省が出している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」にも記載があり,基本的には貸主の負担ということになります。

 

 ただし,全ての場合でそうかと言えばそんなこともありません。通常こうした費用の請求については契約書の中に「特約」ということで入れている場合が多いかと思われます。こうした特約が有効である限りは,契約でどんな項目を入れるかは自由ですから,費用請求はできることになります。有効かどうかは裁判例も存在します。

有名な「原状回復費用」に通常劣化分も含めて借主負担にしてもらうというを有効と認めた裁判例では,契約書あるいは契約前の説明において,借主側が自然劣化部分を含めてすべてを入居時の状況に戻すことが一義明確(何通りも解釈できる余地がない程度)にはっきりとしておくことを前提として要求しています。

 

 こうした項目が設けられていれば,クリーニング代は借主負担にすることができます。鍵交換代についても同様といえるでしょうし,契約項目に入れて置き,借主に予測しない負担を与えないという点からすれば,入居時の負担についても同様でしょう。ただし,契約書の項目によりますので,そこは借主側でチェックをしておくことが必要です。また,先ほども触れましたが,どの部分の破損が入居後かはっきりしないていないと,この部分自体が争いになりかねませんので,ここもチェックが必要でしょう。

 

 契約の際には,通常は媒介業者の説明ということになろうかとは思われますが,きちんと説明をしているのかは貸主としても確認をしておいた方が後のトラブルを避けることができます。重要事項説明書にも一応項目を入れておくだけでも,借主側で認識できたとは言えますが,こうしたチェックの重要性はあろうかと思われます。

 

 

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