法律のいろは

2018年12月26日 更新契約問題のご相談

賃貸住宅のオーナーに対する融資が厳しい状況に。サブリースのメリットと問題点とは?

 最近の報道によると,住宅ローンの貸し出し口として住宅金融公庫を引き継いだ住宅金融支援機構からの融資判断が厳しくなっているとのことです。ここ数年の住宅関連融資が増えてきたことを考えると,融資が返済できなくなる可能性が高くなった判断があったものと思われます。また,国土交通省と消費者庁が今年の3月頃に改めてサブリース契約のリスクの注意喚起を行っています。
 最近サブリース形態でのトラブルとして「かぼちゃの馬車」に関する話が報道されています。サブリース物件の将来的な空き室などによるローンの未回収リスクが高まっていることが背景とされています。他方で当初そうした空室リスクを防ぐ目的などでサブリースが利用されているという点もあります。

○サブリースとは?

 簡単に言えば,アパートやビルのオーナーから不動産会社等がアパートやビルを一括で借り上げて,入居者に転貸する形態を言います。多くの形態で,その不動産の管理なども一括借り上げをした会社が行います。ビルでは事業形態ですが,地主の方などではアパートといった住居系が多いように思います。ここでは住居系を念頭に置いて以下の点を記載します。

 業態も様々なものがあり,アパートの建築をしてもらったうえで建築会社がサブリースを行う場合・管理会社が行う場合・マンションなど区分所有建物を販売するとともにサブリースを行う(投資用の場合です)場合等があります。最近は,築古物件をリノベーションし,リノベーション業者にサブリースをし,リノベーション費用(要は改築費用)の支払いをするというケース(この場合もケースにより異なりますが,改築費用を転貸で支払う形)もあるようです。

○サブリースのメリットデメリットは?

サブリースのメリットとしては以下のものが考えられます。
・サブリースの期間(賃貸をしている期間)は,空き室やそのことで家賃収入が入ってこないリスクがなくなる。
・アパートの管理や入居者の方の原状回復に関する事柄は賃貸をしている不動産会社が行ってくれるので,こうした管理の煩雑さをオーナーは考えなくて済む

 このうち,空き室による家賃減収が生じないこと・家賃滞納の際の回収など面倒な事柄がなくなる点はオーナーにとっては大きなメリットとは言えます。こうした負担がないことでそこまで専門的な知識がなくてもアパートオーナーとしてやっていける点はサブリースのメリットです。

これに対してデメリットやトラブルになりやすい点には次のようなものがあります。
・オーナーが賃貸している不動産会社から家賃の減額請求を受ける可能性がある。
・サブリース契約の内容によっては,オーナー側の中途解約が制限される割に不動産会社からの中途解約はしやすい可能性がある
・中途解約された後には空き室のリスクなどにオーナーが直面するため,収支契約が曖昧だと破たんリスクがある
・修理費や修理を放っておいた負担をオーナーが負うことがある等入居者とのトラブルに巻き込まれる可能性がある

等の点があります。このうち,現在は国土交通省が定める不動産会社の登録制度や,サブリースの場合でも不動産会社に重要事項の説明を行うように義務付ける決まりはあります。これによって,先ほどのリスクが緩和されている点自体はあります。
 とはいえ,いくら「○○年家賃保障○○○万円」と書かれていても,不動産会社側が家賃の減額請求や中途解約の申し出をしてくる可能性はありえます。それでは,家賃保証や期間保障の意味がないという話は出てきます。ここは簡単に言えば,法律上後々で生じた事情によって家賃の増額減額の請求ができるとされているためです。もちろん,プロである不動産会社が周辺環境を理解の上で提示した家賃保証は一般の場合に比べれば相当程度減額請求が通ること自体は難しいと考えられます。とはいえ,家賃相場の状況や周辺環境の変化の程度にもよりますから,単純な話ではありません。また,この減額請求は最終的には裁判所の手続きが必要となりますので,多くの場合はその間に中途解約に至る場合が多いものと思われます。ただし,その場合にはその後の空き室リスクをオーナー側が負うことになりますから,ここを考慮しての交渉が必要になることもありえます。いずれにしても,契約内容の中で中途解約や制限があるのに解約金等は重要事項の説明以外に積極的に確認をしておく必要があるでしょう。また,オーナーとの関係では法令上の借主の保護を不動産会社が受ける可能性がある点も注意が必要です。
 管理は全て不動産会社に任せている場合でも,最終的な貸主はオーナーですから修理義務やその費用を負担する可能性はあります。また,アパートの修繕をせずに放っておくことで入居者が怪我をするなどの事柄があると,その賠償責任をオーナーが負う可能性もあります。

○今後注意をすることは?

 最初に触れましたように,オーナー向け・入居者向けに注意喚起を今年の3月に国土交通省と消費者庁が行っています。それだけトラブルの可能性やリスクがあることはオーナー・入居者の方双方が頭に置いておいた方がいいでしょう。オーナーの方にとっては融資がおりにくくなる点は問題と思われますが,かぼちゃの馬車の件でもでてきました一括借り上げをしている会社の支払いが難しくなると破たんリスクがオーナー自身にも出てくること,先ほど欠点として挙げた点などがあることは注意が必要です。
 そのうえで,サブリースを検討している箇所が長期的に見て運営可能なところなのか,収支分析が信用できる根拠のあるものか・不動産会社の信用力がどうなのか・契約内容はしっかりと確認して問題ないものか,など自衛手段を講じておく必要があるでしょう。ここが大丈夫といえないと融資が下りるかどうかと関係なく,後で問題が出てくるかもしれません。

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