システムやホームページ制作は,仕様書を厳密に作成しても中身を調整しながら制作をしていくのが通常です。もちろん,テンプレートを埋めるだけであればこうした余地は少なくはなります。調整自体も微調整から大がかりな仕様変更といえるのではないかというものまでまちまちとなるでしょうが,工数が大きくかかった場合に追加費用の請求はできるのでしょうか?
追加工数とみるべきかでトラブルとなることは多い
調整の中には,文字のフォントの変更や仕様の詳細のみを変更する・ホームページのボタンを変更するなどの細かなものがあります。こうしたものは通常仕様変更や追加工数とは考えられていませんが,それよりも大きな変更の場合に当初の仕様の中での変更であるから追加工数ではない(発注者・ユーザー側)VS追加工数にあたる(受注者・ベンダー側)の対立が出てくることはままありえます。
通常,予定される工程内容と工数・単価を基に代金額は決められています。予定される工程内容と工数に変更をもたらすことが出てくれば,追加工数と評価できます。設計作業やプログラミング作業のやり直しが生じる確定した機能の仕様変更をする場合や機能の追加をする場合などで,代金を決める基礎となっている事柄に変更が生じる場合には, 追加工数として評価されます。機能追加に伴い想定されていなかった工程内容が生じる場合も同様です。
ちなみに,一定期間での開発作業への対価として代金を決めている場合には,その期間を超えて作業を要する工程を生じさせれば,追加料金が発生すべき事柄となってきます。この辺は当初の契約内容(そこで予定されていた工程内容や工数,代金決定の方法)によってくるものと言えます。
こうした点を考慮して受注者側は代金請求をするかどうかを考えていく必要があります。
追加工数の代金請求額はどのように?
追加工数と代金額の合意がしっかりと発注者・ユーザー側と受注者・ベンダー側でできていれば,そもそもトラブルにはなりません。トラブルになりそうな際に話し合いで決着をつけることも考えられます。
これに対し,代金請求ができるかどうか・追加工数と評価できるかが争いになって開発が最終段階あたりで止まってしまった場合には,こうした決着は図りにくくなります。そうした場合に裁判解決を図るか置いておくとして,どのような代金請求をしていくかは受注者側(ベンダー側)にとって気になるところです。こうした場合には追加工事について代金請求に必要な合意(工程内容とその工数と単価)がない状況ですが,法律上会社や事業者が営業の範囲内でしたことには相当な報酬請求ができます。簡単に言えば,受注者側(ベンダー側)が仕事として制作した内容には法律上「相当額」の代金請求ができることになります。
それでは,「相当額」とは何かが問題にはなりますが,一般に開発工数(人数とかけた時間)×単価で代金が決まるところですので,ここが参考になります。つまり,作業量に比例して代金が決まるのが通常でここが「相当額」になる可能性があるといえます。
実際にこうした争いのある裁判例でも,こうした点を踏まえて判断をしていますから,この点をはっきりさせて代金請求をしていくことになります。
くれぐれも,追加工数と言えるのか吟味してからの話である点に注意が必要でしょう。