社会保険料の滞納とは?そのままにすることのリスクとは?
事業を行い,人を雇うことになると,雇用保険や労災保険の保険料のほかに,健康保険や厚生年金の保険料の負担が出ることになります。労災保険は事業主のみの負担ですが,そのほかは労使折半となっています。パートで勤務時間が特に短い場合には加入義務がない(収入額が小さい場合も同様です)ことにはなりますが,収入金額や所定労働時間の長さなどによっては加入義務が出てくる場合もあります。そして,事業主の負担部分は給与からの差し引きではないため,労務コストの一部として事業主に支払義務があります。国に対して納める必要があります。
これらの支払いに関するルールは法令に定められています。納付すべき保険料は給与などから計算することができ,定められた納付時期に納める必要があります。遅れると延滞が生じるために,保険料に加え,延滞の金額と期間に応じて延滞金の支払義務も生じます。遅れることで,税金の滞納の場合と同様に,差押えの通知を受け,財産の売り払いや預金口座から強制的に回収される可能性が出てきます。ここでのリスクとは,財産を失うという点ももちろんありますし,延滞部分が割増になるため余計なお金の負担が出てくるという面もあります。滞納の割合はその期間が延びるとその割合が大きくなります。しかし,一番大きいのが信用面での不安が露呈してしまうということです。新規の借り入れができなくなる可能性が高くなる等影響が大きくなっていきます。
延滞となると,納付するようにという督促の通知が届き,その後は財産の調査がなされ差押え,回収をされてしまうという流れになります。財産調査ということになると,金融機関の預金調査であれば,融資などへの影響が出てきます。取引先への売掛金の調査となると,その面でも信用リスクが生じかねません。
滞納になった場合の対応方法とは?
滞納した場合でも,納付の猶予の制度や差押えを受けるなどした場合の換価の猶予という制度があります。前者は,納付を待ってもらう手続きですが,申請をしたうえで認めるかどうかは役所の判断です。納付を待ってもらう制度ですが,あくまでも過去の納付すべき保険料で未払いのものを待ってもらうという制度です。新規の保険料の支払いができないということでは結局問題の解決にはなりません。換価の猶予という制度は,売払いその他回収を待ってもらうという意味合いの制度です。この猶予を行うことで重要な事業で使う財産を維持できることにはなりますが,結局支払いができないまま未払保険料(延滞)がたまってしまう場合には,結局問題は解決しないことになります。あくまでも一時しのぎになってしまうためです。
猶予については,受けることが延滞金の率を下げることができるという面がありますが,基本は1年で最長でも2年までしか伸びません。それ以上の分割納付の計画を立てても,あくまでも猶予では2年(つまり2年を経過した部分は最後に一括して払う前提となる制度)であること・あまりに無理な計画を立てても仕方がない点には注意が必要でしょう。
あくまでも,これらの制度を使うにしてもキャッシュフローを改善し,分割でも納付できるように役所側と協議をする必要があります。その際には,過去の未払分(延滞分について,延滞金がつきます)のほかに新規の保険料が生じるということも頭に入れておく必要があります。支払計画は単位過去の分を一時支払いしておけばいいというわけではない点に注意が必要です。単なる分割納付の話だけでは,延滞金が下がるわけではなく,分割納付をしてもそれに足りないということになると,延滞金がどんどんと増えていき金銭的に苦しくなるとともに,役所側から支払いが難しいのではないかという懸念を持たれることもありえます。新規の社会保険料については,あくまでも人を雇って事業をする以上は,その都度(時間の経過とともに)保険料が生じていく点は頭に入れておく必要はあります。社会保険料については事前に社会保険労務士の方に確認しておくことで計算して見通しをつけておくことができますので,相談をしておく必要があります。
ちなみに,猶予制度は申し出に基づくものと役所側の職権によるもの(職権発動を促す必要があります)があります。前者は延滞が長くなると使えなくなりますが,いずれにしても,解消を考えるならば延滞金がたまりすぎないようにする・キャッシュフローを確保できるような改善策を考えていく必要があります。
税金の滞納についても同様です
税金の滞納についても基本は同様です。税金については国に対する税金(消費税や法人税・所得税)のほかに,役員や従業員の所得税の源泉徴収分(給与から差し引く分)・地方税(県や市に収める税金,法人住民税や法人事業税などや従業員などの住民税の特別徴収分として差し引く分)があります。そのため,猶予や分割納付の話をする相手は税務署以外に市役所などが出てきます。滞納分がどの程度あるのかを税理士の方とも話をしてよく把握しておく必要があります。
延滞が生じた場合の差押え等のリスクや分割納付の交渉や猶予制度については先ほど述べた話と同じことになります。社会保険料・税金ともに問題が大きくなる前に対応を急ぐ(とりあえず少し遅れるを繰り返していくと,大きな滞納となってしまうことで問題が大きくなりかねません)・現状を把握する・改善策を取ったうえで分割納付や猶予の相談をしていく必要があります。ちなみに,猶予については延滞金額が一定程度以上になると,担保となる財産を基本的に出すよう求められることになります。