法律のいろは

2024年9月8日 更新行政規制

今さら落とし穴に陥らないため気を付けるべき、美容室サロンと美容師法等の行政規制違反の問題

美容師や美容室サロンには様々な規制が存在します

 美容師の行うことができる業務の範囲やその他規制については,美容師法などの法令の規制があります。美容師法自体は資格取得試験に関する事項やサロン開設に関する規制・行うことができる業務等についての規定と違反への調査や罰則の規定が設けられています。

 

 この中には,美容業を提供する形態(例えば,訪問美容が可能なのかどうか)といった話のほかに,例えば,まつ毛エクステ等を行うのに美容師の免許がいるのかどうか(要は美容業に該当するのかどうか)という問題も出てきます。業務範囲の問題が出てくるのは,美容師法の中に,美容師しか行えない業務(美容)の定義があり,そこには「パーマネントウェーブ,結髪,化粧等の方法により容姿を美しく保つこと」とされており,行政解釈上,首から上の容姿を美しくする行為と考えられていて当てはまるためです。

 そのため,施術については美容師の免許のある方が行う必要があります。まつ毛エクステ・特にまつ毛パーマについては厚生労働省から繰り返し,危害防止情報が出ており,その業務提供において注意をしておかないと,後で賠償請求その他の問題が出てくる可能性があります。

 

 これとは全く話が異なりますが,美容業は原則として美容室(サロン)で提供する必要があると規制されているため,問題が出てきます。美容室の届け出や管理者を決める必要があると規制されています。ここでいう原則に対する例外は,法令上は「特別な必要のある場合」と規定されています。その具体例として,病気などによって美容室まで赴くことができないケースや結婚式などの場合があります。訪問美容という形態は,このうちの前者に該当するような場合です。要介護等の状況で介護サービスの提供を受けていて,外出をして施術を受けることが難しい場合などが挙げられます。福祉介護施設への入所をしている場合もまた該当します。

 

 美容業に関する規制は法令のほかに市町村などの条例によってもされているところなので,この点の注意も必要です。

 

 

まつ毛エクステンションやまつ毛パーマについてはどのような注意点があるでしょうか。

 まつ毛エクステンション(まつ毛エクステ)やまつ毛パーマについては,厚生労働省から,使用している薬剤による健康被害が多いということで,繰り返し注意喚起その他の通知が出ています。美容師免許を持たない方の施術については,特に健康被害が出てきたとき義務違反が認められやすいという面でリスクがあります。

 健康被害については目の周りに薬剤などを使うために,目や周辺の皮膚に対しての被害が生じる(特に視力に影響が出た場合には,損害額が大きくなる可能性があります)ためです。目の痛みやカスミのほかにまつ毛自体への影響がありえます。まつ毛エクステについては施術中に接着剤(まつ毛エクステでのグルー)が目に入る等の可能性もあり,施術のための衛生管理などで行政が注意喚起をしている基準を満たしていない場合などには,責任が認められやすくなる可能性があります。

 

 健康被害が生じたというクレーム以外に,思った通りのデザインでなかったなどの場合もありえます。これはサービスが十分に提供されたかどうか(それによって法律上の代金返金ややり直しの必要性が出るかどうか)の話ですが,まつ毛がはげたなど分かりやすい場合には,正当なクレームになり対応が必要になっていきます。

 主に行政から注意喚起をされているのは,健康被害の方です。衛生管理や施術が不十分で被害が出てしまうと賠償責任が肯定されやすくなりますし,仮にアレルギー持ちのお客様かどうかを事前に確認していたか・していないかは,カウンセリングをすべきなのにしていないという点で責任肯定につながる可能性があります。

 

 まつ毛パーマでは,まつ毛エクステとは異なる問題が出てきます。今までの話では,衛生管理や接着剤の利用などのまつ毛エクステをメインに据えていましたが,まつ毛パーマではそもそも使用している薬剤に関する問題は出てきます。それは,現時点では,「まつ毛パーマ液」はいわゆる「薬機法」等の上では違法になる場合もあるという点です。

 平成16年に出された厚生労働省からの通知「いわゆるまつげパーマ液との取り扱いについて」によると,頭髪用以外の目的でパーマネントウェーブ用剤で医薬部外品の許可を得ているものがないことを理由に,頭髪以外に使う(まつ毛についても当てはまります)に注意喚起をしています。頭髪用のパーマ液を実際に使用する(目的外使用)についても同じ理由から行政からの指導注意喚起がなされています。令和6年には「システアミン塩酸塩」という成分が含まれている化粧液についても通達が出されています。

 これらは,施術自体がダメという話ではなく,施術にあたり使う薬剤あるいは化粧品について注意をしないと,法律違反になる可能性・仮に健康被害が生じた場合に,賠償責任を肯定しやすい面にはたらくという意味合いがあります。もちろん,このほかに規制がかかっていて仕様に問題があるものを使っていることが判明した場合の風評被害その他のリスクもありえます。

 

 お客様から目や皮膚のトラブルを訴えられている場合に,もちろん全てが施術や使っているものが原因とは限りませんが,全く無視をしておくと問題が大きくなる可能性があります。事前に規制や管理・施術方法の研修などを行っておくことは必要ですが,それに加えて,問題発生時には経過や訴えている被害内容の確認・業務内容の確認などを行い,正当なクレームかどうかを見極める必要も出てきます。

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