法律のいろは

2023年10月30日 更新行政規制

特定商取引法の広告表示の仕方の注意点とは?

特商法の広告表示で求められる内容は? 

 ネット販売やECサイトなど,インターネットを利用した商品やサービス提供をされている事業者の方も増えてきています。

 こういった,インターネットサービスを通じての商品・サービス提供の場合,特定商取引法(以下,「特商法」と省略します)の通信販売に関する規制が適用され,一定の事項について必要な情報を十分・正確に表示しなければならないとされています。

 今回はこういった,広告表示をどういった場合に行わなければならないか・また行わないといけない場合どういう内容を表示する必要があるか,について取り上げます。

 通信販売は遠隔に住んでいる人同士の取引であるため,販売条件等の情報は広告を通じて提供されるというのを前提に,特商法では決まった事柄について広告中に明確な表示が義務付けられています。

 ただ,法制定当初と比較すると,通信販売は現状インターネットサービスを通じての取引が主となっていますので,インターネットのホームページで商品やサービスの情報を掲載し,それを見た人がサービス提供の申し込みをするのであれば,基本的にはこの特商法の広告表示が当てはまることになってきます。

 現時点で特商法の広告表示で求められている事項は15項目あります。主だったものでは、

① 事業者の氏名(名称),住所,電話番号

② 事業者が法人で,インターネットで広告をする場合は事業の代表者・通信販売に関する業務の責任者の氏名

③ 販売価格(サービスの対価)

④ 代金・料金の支払い時期,方法

⑤ 商品の引き渡し時期,サービスの提供時期

⑥ 契約の申し込みの撤回,解除に関する事項(売買契約にかかる返品特約がある場合はその内容を含む)

⑦ 販売価格,送料等以外に購入者が負担すべき金銭があればその内容と金額

⑧ 引き渡された商品が種類・品質に関して契約の内容に適合しない場合の販売業者の責任の定めがあれば、その内容

⑨ 契約を2回以上継続して締結する必要があれば、その旨・販売条件、提供条件

⑩ 商品の販売数量の制限など、特別な販売条件等があれば、その内容

が挙げられます。

 これらは特商法11条と,特商法施行令8条に定められている内容です。

 このうち,表示の仕方などで問題になりそうな事項・どう表示すればよいかわかりにくい事項などについてみていきます。

 

特商法の広告表示の中で注意すべき項目は?

⑥ 契約の申し込みの撤回,解除に関する事項(売買契約にかかる返品特約がある場合はその内容を含む)

 申し込みの段階では撤回について,契約成立の後は契約解除の定めについて表示を求めるものです。

 返品特約というのは、通信販売の場合対面で現物を確認しないまま購入するものになりますので、商品が送られてきたあとに来てみるとサイズが合わなかった,色合いが思ったものと違っていたなどといったことがままあります。そのため、事業者側が申込者の希望する商品を送付したあとでも、実際の商品を気に入らないという場合には買い手の一方的な意思で契約を解除できるようにしておきます。その分買い手がこういった通信販売を利用しやすくして、結果的には売上も伸びるということから商慣習として一般化されてきているものです。ですから,実際の商品が申込の物と違っていた,数量が不足している,品質に問題があるという場合でなくても返品できるというのが特徴となります(上記のような実際の商品と申込の物が違っていたなどという場合は民法上債務不履行,あるいは契約不適合にあたるとして売り主側には交換や補修などの責任が生じます)。

 なお,通信販売の場合はクーリング・オフの制度が設けられていないため(ただし,後述する「法定返品権」が別途定められています),これに代わる制度として返品を認める特約が重要な役割を果たしています。

 返品特約を設ける場合は、どういう場合に返品できるか(期間制限を設けるのが一般的と思われます)、あるいは返品に応じない場合はその旨を表示する必要があります。また,返品表示については顧客が見えやすい箇所で明瞭に読めるように表示するなどして容易に認識できるようにすることが省令で求められていますので、たとえば広告部分と比べ明らかに小さい字で「返品不可」と表示をしている場合は明瞭な表示でないとされることになります。

 返品表示をしなかった場合、不明瞭な記載の場合は法律上定められている返品権(通信販売で商品を購入した場合、商品到着から8日間を経過するまでは契約解除ができるとされていますので,こちらによることになりますので、この点注意が必要です。「ノークレーム・ノーリターン」と表示する例もありますが,これだと法律上どこまで責任を負ってどこまで追わないのかが不明瞭なため,この場合にも法定返品権が生じることになると思われます。

 

⑦販売価格,送料等以外に購入者が負担すべき金銭があればその内容と金額

 代金と送料以外に工事費や組み立て費,設置費用などがかかる場合,どういった費目のものがかかることになり、金額がいくらになるかを明示する必要があります。

 

⑧引き渡された商品が種類・品質に関して契約の内容に適合しない場合の販売業者の責任の定めがあれば、その内容

 契約不適合責任(民法改正前は「瑕疵担保責任」といわれていました)は買主が契約内容に適合しないことを知って1年以内にその旨を売り主に通知すれば補修請求,代金減額請求,損害賠償請求,契約解除ができるとされています。これによる場合は広告に表示しなくてもよいですが,これより期間を制限する,あるいは責任を負う範囲を限定する,故意・重過失でない場合には損害賠償の金額を限定するといった場合は表示する必要があります。

 契約不適合責任を全部免責する特約は消費者契約法で無効になるため,注意が必要です。

 

 なお,どういった方法で広告を載せるか,広告スペースもいろいろですので,特商法が求めている事項すべてを広告で表示することを求めるのは実態にそぐわないといえます。そのため,購入希望者等消費者が求めれば遅滞なく広告表示すべき事項が記載された書面を交付する,インターネット通信販売の場合には電子メールで遅滞なく提供する旨表示し,実際に請求あればそのような対応が取れるように措置をしておけば一部については広告表示を省略できるとされています。

 

 広告の表示すべき事項については,特商法改正に伴って今後も変更がありえますので,改正の動きにも目配りしておく必要があるでしょう。

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