法律のいろは

2022年9月7日 更新行政規制

「今だけ特別価格」の注意点。行政からの処分及び民事での差し止め請求での問題とは?

行政からの処分や民事上での差し止め請求とは?

 HPやその他広告などは当然「問い合わせ」につながるように宣伝効果がもたらされているような記載が含まれているのが通常です。自由競争が原則ではありますが,その内容によっては行政からの規制が加えられているものや消費者取引で問題をもたらすということで一部団体からの差し止め請求を受ける可能性があります。

 

 例えば,通常価格とセールの特別価格をHPなどで掲載しながら,ずっと特別価格でサービス提供していた場合や実際には複数回の施術を通常価格で受けないといけないのに,1回だけ・低額で受けられるかのような広告をしている場合です。この場合には他の業者よりも有利な条件でサービスを受けられると一般消費者に誤解させる可能性があるということで,行政からの規制(是正を求められる・氏名公表・課徴金という金銭的ペナルティなど)があります。このほかに,サービスや商品の内容や価格面で他のサービス等よりも著しく有利であると誤解を招く表現などがある場合には,その是正を民間の適格消費者団体(どの団体でも成れるというものではなく,厳しい事前審査があります)からの差し止めなどの請求という形で求められることもあります。

 いずれも事実調査などなされることにはなりますが,民間からの請求の場合には是正をするかどうか等の判断が自社でできる(話がつかなければ民事の裁判となる)のに対し,行政からのペナルティの場合は公表などを一方的に受けるほか,争う場合には行政訴訟や行政上の不服申立てを起こす必要が出てきます。

 

 これらの措置や方法は,商品やサービスの内容や品質・価格面などで有利と表示されることが,購入する可能性のある一般消費者の判断を誤る可能性があると一般に考えられるために設けられているものです。とはいえ,広告には購入を促すためのある程度の仕掛けや表現もあるところなので,どこからが「一般消費者の判断を誤らせる」ものなのかが問題になっていきます。

一般消費者を誤認させるものとは?

 広告に関する規制で先ほど述べたようなものが設けられる理由として,一般に実際のものや他の競争業者と比べて,サービス・商品が品質や内容・価格などの面で非常に優れていると誤解を与える内容の表示となり,不当にお客を引っ張ってくる点で,合理的な一般消費者の判断をゆがめるからとされています。  

 先ほども触れたように,広告にはある程度引き付ける要素があることや「一般消費者」と言っても,誰を指すのかはあまりはっきりしない点があります。広告にはある程度の誇張があることくらい日常広告に接している消費者にはわかるだろうという前提なのか・その商品やサービスについて知識がさほどない消費者を中心とするのかによって話は変わってきます。

 前者であれば,例えば健康食品ではその効果がある程度個人差を含むものであることくらいわかっているのではないかという話,つまりそこまで規制に引っかからない可能性が出てきます。それに対して,後者のさほど知識のない方の場合には効能やサービス内容・価格面もさして分からないのだからその分多く規制を設けるべきという話になる可能性があります。

 

 裁判例でも民事上の差し止め請求などと行政処分に関する裁判では,少し「一般消費者」についての理解が異なるのではないかと考えられるものがあります。ネット通販での商品販売に関する価格表示などが問題になったケース(名古屋高裁令和3年9月29日判決,全文などは特定非営利活動法人消費者被害防止ネットワーク東海のHPに記載)では,健全な常識を備えた一般消費者の理解を基準として,社会一般に誇張が許容されると考えられる程度を超えて優れている等と認識されるかどうかという点から判断をしています。ネット通販の場合には,画面上での文字の表示やその体裁だけでなく画面遷移の状況なども考慮して考えるべきとして,画面スクロールした際の表示内容やフォントが小さい文字部分でもその部分を見るのが普通であるなどの点を考慮・判断しています。結論から言えば「一般消費者を誤認させる表示」ではないと判断しています。

 これに対し,措置命令という行政からのペナルティの取り消しを求めたケース(大阪地裁令和3年4月22日判決LEXDB25590216)では,その商品やサービスにさして詳しくない通常消費者が「一般消費者」であるとして,この方を基準にサービスや商品の価格や内容などを有利であると誤解する可能性が高いと考えられるかどうかで判断しています。ある程度誇張などが存在することが分かっているというレベルと詳しくないというレベルでは,後者の方が広く規制にかかる可能性はありえます。

 他方,行政からの取消しを受けたというケースでは近い時期に実施していなかった価格を通常価格(それまで実施していた価格)という意味で広告に掲載する一方で今だけの特別価格などを特に留保なく載せていたというもので,ネット上やその他広告上の他の記載から見ても問題があり得たとも考えられます。実際のところ,この基準の違いがどこまでの結論への影響があるかまでは明らかではありません。

 

 ただ,いずれにしても事後に争うのは公表によるリスクがあります。事前に誤解を招くような記載がないのか・注意事項などを記載しているのかどうか・価格面であれば近い時期に相当期間実施していた価格なのか等を事前に確認しておいた方が後の負担が少ないのではないかと思われます。

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