法律のいろは

2022年4月11日 更新行政規制

労災事故が起きた場合の刑事責任とは?

労災事故で刑事責任が問題となる場合とは?

 労災に関する法規制は主に民事責任,刑事責任,行政責任に分かれます。民事責任はこれまで別の記事でも触れましたように,従業員や死亡事故の場合は遺族に対する損害賠償責任(安全配慮義務違反を中心とした債務不履行責任ないしは使用者責任)となります。これに対して刑事責任は後述する労働安全衛生法違反・業務上過失致死傷罪という,刑罰を伴う責任となります。ただ、この刑事責任と民事責任とは、民事で従業員や遺族との示談が成立しているかによって,刑事責任にも影響があるという関係にあります。また,刑事責任を問われるようなことが起これば,入札への参加が出来なくなったり,公表されるという行政上の責任を負うことになるという点で,行政責任とも関係する,といった密接な関係にあります。

 具体的に刑事責任が問題になるケースとしては、前述のように労働安全衛生法違反ないしは業務上過失致死傷罪にあたるというものです。

 労働安全衛生法とは、労働災害防止のための危害防止基準を確立する,責任体制を明確にする、自主的な活動の促進措置を講じるといった、労働災害防止のための総合的計画的な対策を推進することで、職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的にしています。

 労働安全衛生法は一般的に規定が抽象的なものが多く、厚生労働省令で具体化されているものの、それでも抽象的なことが多いので、当てはまるかどうかの判断に注意が必要です。

 労働安全衛生法違反で割とみられるのは、作業主任者の選任が必要であるのに行っていなかった、従業員の健康障害を防止する、作業行動から生ずる労災を防止するための措置を講じていなかった、労災があったことを報告する義務があったのに報告していなかった、といった場合になります。

 他方、刑法での業務上過失致傷罪が問題になる場合は、業務を行うに伴って他の従業員その他に対して怪我や死亡事故を発生させたといったときが主になってきます。

対応の注意点は?

 一般的に刑罰を伴う犯罪が発生した場合に対応する(捜査を行う)のは警察であるのに対して、労働安全衛生法違反にあたる事案が発生したときにはまず労働基準監督官が対応することになるのが特徴です。

 労働基準監督官は事業場への立ち入り調査や帳簿書類の提出要求ができるといった行政監督権限を行うことが出来る一方で、関係者への事情聴取や証拠品の押収といった裁判官の令状に基づく強制捜査が出来るという、警察官的な役割も担えるという権限があります。

 そのため、関係者に対する事情聴取の場合、刑事事件と同じような対応が必要になってきますのでその点注意が必要になります。呼び出しに応じるとともに、供述調書といって、事件に関わることを含めて事情聴取された内容をまとめた書類が作成されます。その場合何に関しての事情聴取か(行政上の監督権限からか、刑事処分を前提にしたものか)不明なことがあるので、何を被疑事実といているのか事前の確認が必要になってきます。

 実際に労災事故にあたりそうなケースが発生したときにはけが人がいたり火災が発生しているようなときには、消防署への通報が必要になるともに、警察署・労働基準監督署長への報告が必要になります。

 特に労働基準監督署への連絡については労災隠しとされないようにきちんと対応しておくことが重要になります。

 なお、最終的な刑事処分に関する判断は一般的な刑事事件と同様、検察が行います。刑事処分を起訴猶予とするかどうかにはこれまでに似たような犯罪行為に該当するような事情があったかどうか、反省しているかに加え、これまでにも事前に安全体制を整えていたか、これまでの取組や、事故発生後の再発防止策を取ったか、また被害弁償や示談が成立しているかが重視されます。そのため、事故が発生した場合にはこういった点を踏まえて対応を行うことが大切になります。

 起訴猶予が困難な場合には略式起訴で罰金になるケースが多いですが、先に触れましたように、行政上の責任に影響して入札できないなどのペナルティが出てきます。こういった労災に関わる事故が発生した場合には、このようなリスクも踏まえて、出来るだけ早期に対応していくことがポイントになってきます。

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