法律のいろは

2019年6月21日 更新行政規制

当社の下請会社が別の会社から従業員を派遣してもらい現場で使っている場合の問題と対応は?

概要

 下請の会社が行っている従業員を派遣してもらうのは、法律上原則禁止されている場合にあたるとされています。そのため、制裁などがあると結局人手が足りなくなる可能性が出て来ます。請負契約によるか、「建設労働者の雇用の改善等に関する法律」の各種事業を利用してもらうのが良いでしょう。

従業員の採用や雇用をどの会社が行っているかで変わる法規制

 人を出す形の会社が採用や雇用を供給先会社で行い、従業員を派遣してもらうのは、「労働者供給」にあたる可能性があります。

 「労働者供給」は採用や雇用を供給先で行い,人を出す形の会社(供給元)はその従業員を支配してお金を抜く形になる(つまり,供給先と従業員が雇用契約を結ぶ)ものです。これは労働する方を継続的に支配下において使用させるという点で、労働の強制、中間搾取(途中でお金を抜く)、使用者責任が不明確になりがちといった弊害が出て来るとして法律上全面的に禁止されています。職業安定法では労働組合法による労働組合・それに準ずるもので厚生労働大臣の許可を得た場合に限り無料の事業が行えるとされています(家政婦、自動車運送など)。

 また労働者派遣は採用及び雇用をするのが派遣会社(ある意味では供給元)になります。建設業の場合には,建設現場で行われる作業(具体的には,土木,建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊もしくは解体の作業又はこれらの作業の準備の作業に係る業務をいう,とされています。)に直接従事するときは、労働者派遣も禁止されています(なお,適用除外業有無については,「労働者派遣事業関係業務取扱要領」に定められています)。

 違法とされると制裁や罰則が科されることになります。労働者派遣の役務提供を受ける側についても、許可ない業者から労働者派遣を受けると禁止規定に違反することになるので、行政からの指導や改善命令や勧告、企業名が公表されてしまいます。
 

人手不足を適法な形で補うには?

 違法にならない形で人手不足を補うのであれば、発注を受けた会社との間で請負契約を結び、自社の従業員を発注先で仕事をさせる・従業員への指示は自社で行うとするのが一つです。

 ただ、この場合注意すべき点があります。労働者供給契約でなく業務処理請負契約の形式をとっていたとしても,労働者を提供し他人のところで働く場合には、以下の4つの要件をすべて満たさないと労働者供給事業を行うものとして扱うとされています。

① 作業の完成について事業主としての諸経費や法律でのすべての責任を負うこと

② 作業に従事する労働者を指揮監督すること

③ 作業に従事する労働者に対して使用者として労働基準法、労災保険法、労働安全衛生法などに規定されたすべての義務を負うものであること

④ 自ら提供する機械や設備、器材、作業に必要な材料、資材を提供し、または企画・専門的な技術や経験を必要とする作業を行うもので、単に肉体的な労働力を提供するものでないこと

 そのため、自社の従業員を発注先で仕事をさせる・従業員への指示は自社で行うというのは単に指揮監督についてのみならず、法的な責任や諸経費の負担においても満たしていることが必要になっています。 

 また、建設労働の場合,受注生産や総合生産などの特殊性から,雇用の安定確保のため,労働者派遣事業とは別に「建設労働者の雇用の改善等に関する法律」に特別な労働力需給調整制度が設けられています。

 建設業務労働者就業機会確保事業として,有料職業紹介事業(建設労働者の有料あっせん),就業事業確保事業(建設労働者の送出・受入)が設けられていますので,こういった制度を利用するのも一つです。この制度を利用する場合には、「送出事業主が講ずべき措置に関する指針」の定めに沿って行う必要があります。

 

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