法律のいろは

2019年5月29日 更新行政規制

「一括下請負」とはなんでしょうか?どのような問題があるのでしょうか

「一括下請負」とは?

 一括下請負とは,自社が工事を受注するけれども,実質的には関与せず下請け先に工事をほぼ任せてしまうことを指します。こうした事柄は建築業法上禁止されており,どのような場合が一括下請負にあたるかはガイドラインで示されています。一括下請負が禁止される理由として,いわゆるピンハネの横行による工事の質の低下の可能性・工事についての責任の所在があいまいになることなどが挙げられています。

 

 ピンハネの横行という点からは自社がお金をとることなく下請け先に任せれば問題はないという気もしてくるところですが,法律上はこうした点は考慮されません。要は自社が一円も取らなかったとしても,「実質的に関与していない」場合には一括下請負をしているということになります。

 

 それでは,「実質的に関与している」とは何かが問題になるところですが,ここについては国土交通省から出されているガイドラインに記載があります。ここでは簡単に記載をしておきます。

 まず,一括下請負にあたるかどうかは,請負契約ごとに考えていきます(現場の数とは必ずしも一致しません)。「実質的に関与」とは,元請人が,施工計画の作成・工程管理・品質管理・安全管理・技術指導等を行うこととされています。細かな点はここでは触れませんが,施工計画であれば,施工計画書の作成や設計変更に応じた計画書の修正などを,工程管理は進捗の管理を行う,品質管理であれば施工状況の報告を受け必要な立ち合いをするなどの事柄を指します。技術指導その他も前記の通り含まれる内容になります。

 近隣住民への説明を行う,発注者などとの協議を行う・下請け業者との協議などを行う等必要とされる役割を行う必要が出てきます。

 

 単に技術者を置いているだけでは,前記の役割を担っているとは言いにくいので,実際どうなのかを注意しておく必要が出てきます。また,二次下請けなどが存在する中では,元請・一時下請けとも自ら施工はせず管理をしているような場合もあります。このような場合も果たしている役割によっては一括下請負に該当する可能性があります。同じ現場の関連する工事でも別契約であれば,別々に一括下請負かどうかを問題にするということになりますので,こうした点でも問題が発生しないかどうかの確認は重要になってきます。

 

 基準が曖昧であったところを明確化するということで,平成28年に基準の明確化が行われましたが,結局は個別のケースごとに問題が生じるかどうかを精査していく必要が出てきます。

 

 ちなみに,一括下請負が禁止されない場合として,着工前に発注者が承諾をしている(発注者を保護することが目的と考えられているため)場合があります。個別の下請けごとに元々の施主から承諾を得ておく必要があります。また,一括下請負の承諾を得ている場合であっても技術者の配置は必要など全く関与しなくてもいいというわけでもありません。

「一括下請負」の問題点とは?

 一括下請負があったとしても,あくまでも業法の違反ですから,当然に請負契約が無効になるということはありません。とはいえ,公表されている行政の資料を拝見する限りでは発注者が建設業者へ寄せた信頼を裏切ることを重視して,厳正に対処することを記載していますので,ペナルテイは大きくなる可能性があります。厳正に対処ということですから,ペナルテイも重くなる可能性が想定され,事情によっては営業停止を受ける可能性も十分に考えられるところです。

 

 また,関与しているという扱いにはならないため,経営事項審査における完成工事出来高には,こうした一括下請負に該当する工事の金額を含むことはできません。

 

 このように,重たいペナルテイを受けるリスクがあることが大きな問題点となるでしょう。

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