法律のいろは

2020年12月12日 更新損害賠償請求のご相談

嘘のうわさ・度を越したクレーム,会社に迷惑をかける理由で仕事を休むことなどによる損害への対応は?賠償請求と業務妨害罪について

 先日,新型コロナウイルスに感染したなどの話を伝えて教育実習への参加を行わなかったという報道がありました。この種の実際には罹患あるいはその強い可能性がないのに出勤その他を免れることを理由とした従業員サイドによる会社への通知のほかに,事実とは異なる誹謗中傷も存在します。例えば,あの店のサービスでケガをしたなどの話です。また,先ほどの感染症以外にも会社の業務の妨害につながる(元)従業員による申告等というのもありえます。こうした事柄が存在する場合の対応にはどのようなものがあるでしょうか?

○民事上の損害賠償請求や謝罪の要求など

 

 

 まずは,損害賠償請求や謝罪の要求が考えられます。インターネット上の書き込みであれば削除の請求です。これは,違法な営業妨害あるいは名誉棄損(会社に対する名誉棄損も成り立ちます)を理由とするものです。インターネット上の書き込みやSNS上の書き込みには誰が書き込んだのか特定をしないと損害賠償請求や謝罪の請求まではできません。これに対し,削除の請求であればプロバイダに対しても行うことができます。

 

 特定のためには発信者情報の開示請求という手続きを行う必要があります。細かい話は個々では触れませんが,LINEについてはこの手続きを使うことはできません。この制度は今年になって続いたSNS上での個人などへの誹謗中傷や自殺の問題から現在制度改革などが議論されていますし,総務省()から注意喚起が行われています。この制度はハードルが高い点や外国法人のプロバイダには早急な対応が必要でかつ書類の取り寄せなど面倒な点が多いという問題点があります。制度の変更の話については確定次第別途取り上げる予定です。

 

 名誉棄損に当たるのかどうかが問題になることはありますし,営業妨害という場合には,どのような書き込みや触れ込み・クレームによって,どう業務が妨害されたのかが重要です。余計な仕事が増えたのであればその内容・お客様が減ったのであればその状況(書き込みやクレームの内容や態様によります)と時期がお客様の減少・売り上げ減少と時間的に近接しているのかなどがポイントできちんと整理をする必要があります。営業損害についても同様に売り上げ減少分からどのみちかかる経費を差し引く必要などが出てきますので,整理は必要です。

 こうした点の整理などを行う必要があります。いずれにしても,度を越えたクレームや嘘の評判を流すことは名誉棄損あるいは営業妨害に当たることは十分にありえます。また,感染症にかかったなどの理由での休みの申請も消毒作業や休業や業務縮小につながる可能性もあります。ここでも,実際に嘘かどうか・消毒作業や業務縮小状況との時間的な近接さや必要事項かどうかの整理が必要となってきますが,営業妨害や雇用契約上の順守事項の違反にはなりえます。

○刑事上の対応とは?

 

 簡単に言えば,書き込みやクレーム・報告が犯罪に該当するから被害届を出す・刑事告訴を行うという話になります。注意点は,刑事上の対応とは,相手に対して処罰を求めるという話で被害回復自体を目的としていないという点です。もちろん,刑事事件として立件され証拠が固いという場合には,処罰を免れるために相手が弁償や示談交渉をしてくる場合はあります。ただし,ここは副次的なものなので刑事事件にすれば簡単に被害回復できるわけではありません。

 ついでにいえば,被害相談などに行った際の警察などの当局のハードルは弁護士の法律相談よりも高いように思われます。これは,日本の刑事事件の対応の考え方として,①民事不介入②有罪の見通しが十分見込めそうなものを立件する,という点があるように考えられます。あくまで筆者個人の感想に過ぎませんが,話の筋がきちんとしているか(犯罪として整理してあるか)・証拠の見通しをつけているか,という点がきちんとしていないとなかなか動いてもらえないように思われます。言い換えると,簡単に刑事事件としての対応がそもそもできるわけではないという話になります。

 また,刑事告訴などをネタにお金を強く請求することは逆に恐喝行為になりかねないという問題もあります。相手への正当な対応が行きすぎになっては意味がありませんので,バランス面などを考慮する必要があります。

 

 先ほどの事実に反したうわさや虚偽の感染症にかかったという話・度を越えたクレームは,少なくとも業務妨害罪という犯罪になるのかどうかが問題になります。噂については,名誉棄損罪になるのかも問題になるでしょう。名誉棄損は,具体的な事実関係を書いてあり,それが一般的に社会的評価を下げるものである必要があります。ネットの投稿では抽象的すぎる話やほかの記載から社会的評価を下げるものといえるのかなどが大きく問題になります。

 業務妨害とは,営業を含めた社会上継続して行う(意図のあるもの)について,妨害の可能性がある行為を行うことです。犯罪となるのは,度を過ぎたクレームのような度を越えた力を使う・誇示する行為,嘘の内容を使う場合です。難しいのは判断で,クレームも自社に落ち度が大きくあれば,相手が怒るのもやむを得ないという話はあります。ただ,かなり無理な要求を行う・仕事ができないようにするということがあれば,該当する可能性が高くなります。嘘の内容の中には,うわさを流す行為のほかに,先ほどの嘘の感染症にかかったなどの話をする行為も含まれます。会社を休む話との関係でいえば,単に休みたいからというだけではなく,感染症であればその話があれば単に休むだけでなく消毒などが必要になる(妨害の可能性がある)というなど妨害につながる内容である必要があります。

 

 業務妨害罪では実際の妨害が生じたことまでは要求されませんが,警察当局などは実際に処罰が必要かなどを考えるためか,実際の妨害内容や被害の程度を確認するように思われます。例えば,不要な消毒作業やうわさを打ち消すための広報活動を行ったなどの話も含まれます。

 こちらについても,事実経過や妨害内容などをきちんと整理をしておく必要があります。意外に妨害意図につながるトラブルがあったかどうか(ほかの理由による言い訳封じ)を重視する傾向もあるようです。必ずしも犯罪の成立自体にここが関係するわけではありませんが,トラブルの有無は悪質さに関係します。また,言い訳が成り立つ可能性による刑事裁判につながる起訴の見通しと関係はありますので,こちらをきちんと伝える必要もあります。ちなみに,起訴がされない場合には,通常は相手が逮捕などをされていても釈放されることになります。

お電話でのお問い合わせ

082-569-7525

082-569-7525(クリックで発信)

電話受付 9:00〜18:00 日曜祝日休

  • オンライン・電話相談可能
  • 夜間・休日相談対応可能
  • 出張相談可能

メールでのお問い合わせ

勁草法律事務所 弁護士

早くから弁護士のサポートを得ることで解決できることがたくさんあります。
後悔しないためにも、1人で悩まず、お気軽にご相談下さい。

初回の打ち合わせは、有料です。
責任をもって、担当者が真剣にお話をきかせていただきます。
初回打ち合わせの目安:30分 5,500円(税込)