法律のいろは

2019年12月30日 更新損害賠償請求のご相談

増えつつある介護訴訟への対処法は?

介護関係に関する裁判は近年増加する傾向?

 介護関係の裁判の増減については、はっきりした統計資料がないのが現実ですが、介護施設を利用される方やその家族の権利意識の高まりを背景に、今後介護事故の裁判が増える可能性がある、と介護業界のリスクに携わる各業界の方は見ているようです。実際に、介護事業者向けの損害保険を販売するある保険会社では、昨年(2018年)の保険金支払件数、支払額はともに前の年より数パ―セントと減少している一方、比較的少額の賠償金や見舞金相当の費用の支払件数は増えてきているとのことです。
 こういった介護事故をめぐる利用者やその家族への対応がこじれてしまうようなことがあれば、のちに裁判へと発展するリスクもはらんでいるといえます。

介護事故の法律面などからみての特徴とは?

 そもそも、介護保険、社会福祉に関するサービスを提供している場合、対象者が高齢車であるため、常に施設内やサービス提供中に怪我等をする危険があるといえます。介護事故の内訳では、転倒、骨折、誤嚥が3大事故とされており、特に転倒が増加してきているそうです。特に女性の高齢者は骨粗しょう症により骨が思ったより脆くなっていることがあり、ちょっとした介助で骨折に繋がるようなケースもあるでしょう。また、特に要介護者の方の体は弱くなっており、元の介護事故がさほどのものでなくても、深刻な事態に陥ることもあります。また、「介護事故」といってもさきほどの3大事故をはじめ様々なパターンがあるため、交通事故と違い、事故類型ごとにパターン化しづらく、個々の事案ごとの対応になりがちで、話がこじれて裁判になると長期化する可能性もあります。
 仮に話がこじれて裁判になると、裁判自体は概ね1~2か月の1回のペースで行われますが、書面提出や資料の準備に弁護士との打ち合わせを重ねる必要があり、対応をした職員らにとっても労力・負担となってしまう可能性があります。また、対立点が多くなるほど、裁判に費やさなければならない時間数が増え、最終的な解決までに数年かかる可能性も出て来ます。利用者の対応に関わった職員については、裁判に出廷の上証言をしなければならないこともあるので、打ち合わせ時間や実際に裁判で話すことによる精神的な負担や施設運営への影響も増え、結局は施設からの離職にもつながりかねません。

介護事故が裁判まで至るのを防ぐには?

 こういった介護保険、社会福祉に関するサービスを提供する事業者側からすれば、勝っても負けても大きな負担になりかねない裁判にまでなってしまうのを防ぐにはどうすればよいでしょうか?
 そもそも介護事故がなくなればこういった訴訟リスクはなくなりますが、実際に高齢の方を相手にサービスを提供している以上、介護事故をゼロにするというのは不可能なことを強いることになりかねません。もちろん、介護事故の予防は当然必要なことですが、仮に事故が起こってしまった場合の対応をどうするか日常的に検討をしておくことが大事です。介護事故が発生した場合に、利用者や家族に対して対応する必要がありますが、介護事故の当事者である職員ではなく、管理者や法人本部が対応するようにしておくことも必要です。職員に対応を任せていると、介護事故が起こったことで気が動転してしまい、まだ事実調査が十分にされていないうちに法的責任まで認めるような発言をしてしまい、あとで裁判になると不利になってしまうこともあります。また、施設が職員に責任を押し付けるような態度を取ることで離職してしまったり、他の利用者へ虐待をすることで不満を向けるようなことになりかねません。こうした介護事故が起こったときの初動対応については、平時にきちんと対応、手順も含めて確認、マニュアル化をするとともに、職員とも共有できるよう研修を実施するなどして徹底しておくことが必要になります。
 また、普段から利用者の家族や遠方に住む親族ともコミュニケーションをとるようにする、階段への手すり設置や離床センサーなど可能な限りの対応を取るとともに行った対策をしっかりと記録しておくことも大事です。
 さらに、利用者の普段の介護記録についても、日時、記録した職員の名前を正確に記載するとともに、これまでに行ったこととこれから行うことを明確に分けておく、ケアプランやサービス計画とも整合がある形で記録にしておくことも、いざとなったときに利用者や利用者の家族から開示を求められることもあることを踏まえて対応しておく必要があります。
 加えて、施設入所時やサービス利用時にあらかじめ施設の方から利用者や曽家族に対して、施設であっても自宅で起きることと同じようなことが発生しうること、認知症などによる事故を100%防ぐには難しいこと、状態改善については施設として出来ること、できないことがあることなどをあらかじめ時間を掛けて丁寧に説明し、利用者や家族が施設側に求めるサービス提供の内容などと食い違いが生じることのないようにすることも大切でしょう。
 これからさらなる高齢化に向けて、ますます介護福祉施設やサービスを利用する人が増加していくことから介護事故も増えていく可能性が高くなります、いざ事故が発生したときに対応できるように、日ごろからの備えが益々必要になってくるといえます。

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