法律のいろは

2019年10月28日 更新損害賠償請求のご相談

施設内での利用者とのトラブルや事故が労災になった場合の問題は?

〇労災に該当する可能性は?

 介護事業や障害福祉事業を営む際の問題点として,利用者の方の生活の質の改善やトラブルを防ぐことは重要ですが,介護の際の腰痛の問題に加えて,年齢が若い利用者の場合には噛みつく・ひっかいて来る等の行動が見受けられることがあります。
 どのような個別対応をするのかというのも難しい問題ですが,従業員の方がケガをした場合に労災になるのか・なった場合にどのような問題が出てくるのか,他の問題へ波及する可能性があるのかは重要な問題です。

 

 労災は,ご存知の方が多いかと思われますが,従業員の方が仕事の中で起きた事故でケガなどをした際に,国の制度として保険により決められた枠の範囲内で補償をするという制度です。ここから支給をされるには,業務中の事故でのケガであることとそこから通常生じるケガや損害といえる必要があれば十分です。そのため,発達障害などでの利用者の子供が例えばかみついてきたためにケガをした場合には,業務中の事故によるケガですから,労災に該当します。
 ちなみに,これが例えば従業員同士のケンカであればどうなるのかも問題になります。ケンカは本来は仕事ではないので関係ないとも言えますが,例えば,仕事の際のケアの仕方などが原因で口論となりケンカに至った場合には,仕事の延長で生じた事故ですので,労災に該当する可能性はあります。

 問題は労災に該当した場合に,自社に何かしらの責任が発生するのかという話です。労災に該当するかどうかは国からの支給をする際の決定ですから,直接自社に何かしらの責任が出てくるわけではありません。法律等で会社が従業員に対して労災の関係で責任を負うのは,安全配慮義務違反と呼ばれる違反がありケガ等が生じた場合です。
 安全配慮義務違反とはわかりにくい言葉ですが,簡単に言えば,ケガや病気が生じないための安全設備の設置やいじめなどの相談窓口の設置・健康診断の実施・勤務時間管理など,ケガや病気(ここには心の期も含まれます)が生じないようにするための会社としての取り組みを行っていないことを指します。言い換えると,一つ偶然事故が起きたから当然に会社にこの違反が出てくるというものではありません。労災事故が症いる場合には,こうした会社としての対応が不十分であるために起きることが多いので重なることが多いですが,一致はしません。

 労災認定のための申請にあたっては会社に協力を求められることもありますが,ここで協力をしないことが後でトラブルにつながる可能性もありますので,対応に注意が必要でしょう。

〇労災に該当する場合の問題とは?

 施設サービスの場合に,例えばセクハラ言動が目立つ利用者に女性の従業員を当てたまま放置しておく・言動への注意もせずにいたために強いストレスを与えた場合には,精神的な病気への賠償リスクも出てきますし,退職リスクも当然増えていきます。先ほどの発達障害で問題のある言動がある子供の場合でも,例えば,噛みつき癖がありケガなどがよくある場合には親も含めて注意をしておく・噛みつきの行為が見られる場合について記録にとって情報共有し防ぐための措置を講じていたのか等はこうした安全配慮義務を果たしていたのかという点で問題になります。

 ケガというだけでなく,仕事上の負担が重いことが蓄積することで心の病気にり患し,その労災認定や賠償請求・退職のリスクが出てきますから,こうした点の対応は会社側としては非常に重要になるものと考えられます。安全配慮義務違反があれば,違反によるケガや病気によって生じた損害を賠償する義務が会社には出てきます。労災での給付で賄ったものは内容によっては追加で賠償対象にはならない部分があります。ご加入の保険から賄うこともできますが,この場合には安全配慮義務違反が認められる場合である必要がありますし,賠償の範囲や従業員側の落ち度分が出ないといったことがあります。言い換えると,何かあれば保険任せで完全に大丈夫というわけでもない面があります。これは賠償対応という意味ではなく,退職を防ぐために被害は会社で穴埋めできると簡単な約束はできず,退職防止の点では限界がありますという意味です。

〇対応策は?

 対応策は,先ほどのケースでいえば,問題行動のある利用者に対して女性従業員を当てないようにする・問題行動と対応策を共有し教育を徹底しておく・相談窓口(窓口となる方)を決めて不安となる点等を普段から聞くとともに,対応をする体制を作っておくことが重要になります。もちろん,損害保険に加入をしておくことでいざというときの支払いに備えておくことも重要です。退職を防ぐという意味では,先ほどの限界や退職防止には負担を過度に書けないことが重要であることへの注意は必要です。

 何もしないうちで,利用者もケガをし従業員もケガをするということでは大きなトラブルになりかねません。また,従業員同士の関係でもいじめが存在する等があれば同様に労災や賠償責任が生じる可能性があります。こうした事を管理者や経営者層が把握しておける・対策が打てるようにしておくことが何よりも重要なものといえるでしょう。

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