法律のいろは

2019年6月8日 更新損害賠償請求のご相談

自殺と事故物件,借主の相続人や保証人に,大家は賠償請求をできるのでしょうか?

借主は賃貸物件内で自殺をしないようにする義務がある?

 結論から言えば,大家としては借主の相続人や保証人に対して損害の賠償はできます。ただ,その損害がどこまでかは容易にはっきりするものではなく,なんでも請求できるわけではないということは言えるでしょう。

 

 賃貸物件で孤独死など様々「事故物件」となる原因はあるところですが,事故や病気の他に自殺ということで賃借人が亡くなられる場合があります。自殺をしないようにする,という義務は亡くなられた方に重い負担を課すようにも思われますが,他方で,賃借人は借りている物件をきちんと管理する義務を契約上負っています。きちんと管理をするという内容には,物件を壊す汚すようなことはしない(経年劣化などの話は除きます)等物件の価値を下げないようにするという話が含まれます。

 いわゆる「事故物件」になってしまうということは,当然物件の価値を下げることになりますから,基本的にはそうしたことにつながることは避けるべき義務があるということで,物件内で自殺をしないように配慮する義務というのものがあると考えられています。そのため,物件内での自殺があった場合には,事情によっては賃借人の親族(相続人)や保証人に対する賠償請求がなされる(そして,賠償責任が認められることになる)可能性が出てきます。

 

 ただし,この話はあくまでも義務の違反があるから,損害が大家に生じていればその範囲で賠償の義務を負うという話を言うだけですから,問題はどこまでそうした損害があるといえるかという話になります。保証人が負う支払い義務も借主が負う賠償責任の範囲内ですから,その意味でも大きな事柄になります。

賠償請求をできる金額は?

 先ほど述べた点での物件の運用上の損害としては,物件を売却する場合の評価の減少分・収益物件ですから家賃の減少分(空室が生じ埋まらない点を含むもの)が考えられます。このうち,物件を売却する場合の評価の減少分は,仮に借主の自殺による価値の減少があっても時間の経過その他の事情から回復がそのうちには見込まれます。また,当面売却予定がない場合には,こうした評価の減少分が現実化することはありません。そのため,当面売却予定がない場合には,この点では損害が生じたとは考えにくくなります。

 

 これに対し,空室が生じたことを含めた家賃減少は生じるのが通常と思われます。ただし,次に借主が決まりしばらく居住したという事情や物件の場所・性質(ワンルームかどうか等)などの環境面の影響や時間の経過によって,当初の原因(ここで取り上げているのは借主の自殺)による影響はなくなっていきます。そのため,影響が亡くなったと評価できる時点以降は家賃減少は生じたとは考えにくくなります。このことは,物件の仲介をするのに一定の期間は新しい借主になろうとする方に物件の事情(心理的な嫌悪される事情を含むものです)を説明する義務があると考えられる点からもうかがわれます。

 実際には,どの程度の期間・どの程度の金額が影響を受けているといえるかはケースごとの事情によりますので,はっきりとこの金額が確定的に損害となるとは言えません。また,こうした点はいくら影響を受けたという側で丁寧に明らかにしていく必要がありますから,損害の支払いを請求できるといっても,どこまでが当てはまるかそう簡単に言えるわけではないでしょう。同様に,問題となる部屋以外の部屋についても当然に家賃額が下がったとは言えないでしょうから,請求できる金額(損害)に限度が出てくる点にも注意が必要でしょう。

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