法律のいろは

2019年2月14日 更新損害賠償請求のご相談

クレーム対応④(会話を録音することは問題?)

会話内容を録音することの問題は?

 最近は電話での会話内容を録音することを,業務の適正やサービス向上のために正確な記録をのこすためということで予め通知するケースがあります。電話に限らず,会話内容は後々の行き違いの防止や正確な記録のために録音をしておくこと自体は有効性があります。証拠を残しておくという意味もあります。クレーム対応でも言った言わない等を防ぐ点でも重要性は大きくなります。ここでの会話はサロン・店舗での面談,クレーム相手の自宅などでの面談も含まれます。

 

 クレーム相手の明確な同意あるいは録音をすることを告げておく(先ほどのケースは目的とともに告げておく例の一つといえます)ことで反論がないままに会話を進めていくというのが一番問題がなく,可能な限りすべき対応であるのは言うまでもありません。問題は,そうした同意を得ない形での録音には法律上の問題はあるのかという点です。特にクレーム内容が課題である場合やそもそも不当な理由に基づく話をされている場合では,後々に違法ではないかという指摘もありえますので,ここで触れていきます。

 

 会話内容には,クレームの原因となる話の他に要求内容や応答内容・それぞれの会話のトーンなどが含まれることになります。この他に氏名等他の情報も含めると個人を識別できる情報(個人情報)が含まれる可能性もありますし,誰にも知られていないし知られてたくない情報も含まれているかもしれません。個人情報の取得の方法やプライバシーの問題が出てきます。こうした点が違法になれば,先ほどの指摘があった場合に対応が難しくなりかねません。

 

 個人情報の取得は原則として利用目的を告げて同意を得ることになりますので,同意がないとできないのではないかという点で問題となります。ただし,法律上は,利用目的を告げて同意を得ようとすることが取得する側の権利や正当な利益を侵害する恐れがある場合・取得する状況から見て利用目的が明らかである場合には,例外的に不要となります。

 会話記録を特に残しておく必要があるクレーム対応は不当なものや要求が行き過ぎているものが考えられます。こうした場合の全てが録音を正確な経緯やクレーム内容の記録のためと告げたとして,相手方からの恫喝等があるとは限りません。しかし,それまでの経緯から予測できる場合もありますので,この場合には例外に当たりうるといえるでしょう。また,先ほど述べた会話内容は当然に経緯やクレーム内容の記録のためと取得状況からもはっきりしているのが普通でしょうから,いずれにしても例外に当たる場合が多いと思われます。

 

 プライバシーについては,侵害がどの程度ありうるのか・取得の目的や守ろうとする利益との関係で優先するといえるのか等の話が出てきます。通常裁判その他で証拠として必要になる・クレーム対応を正確に行うために対応の責任者程度の範囲内で共有する情報であるし,いざというときの弁護士などの外部の専門家が共有する程度である・正確な記録をしておくことは行き違いを防ぐとともに正確な要求内容を伝える助けにもなるということで,クレームを言う側にも利益がある話とも言えます。そのため,録音内容を共有する範囲や目的との関係で必要がなくなれば廃棄するという点の対応・利用目的が正確な対応や証拠としての活用といえる場合には,プライバシー侵害だから違法だという話にはなりにくいのではないかと考えられます。

 重要な点は,録音データの管理や共有する範囲等強く注意は必要になるでしょうし,一般的には可能な限りは同意を得ておくこと自体は必要といえるでしょう。

 

会話の相手方から録音をしているか聞かれた場合の対応は?

 この話が問題になるのは録音することを伝えていない場合の話ですが,さすがにここで録音をしていないといった場合には後日証拠として使うことで追加のトラブルが出る可能性があります。そのため,録音をしていることとその理由は告げたほうがいいと思われます。そのうえで録音をしたままでは話ができない・録音データを破棄すべきといわれた場合には,録音をすることの意義を伝えたうえで,相手が会話をできないというのであれば一度終了することになると思われます。後者の要求については応じるべきではないでしょう。

 

 こうした録音データが後日裁判などで証拠になるのかどうかは一つの問題です。民事裁判では著しく不相当な方法での取得したものかどうかが大きな問題になる傾向にありますが,単に無断で録音をしたことがそこに該当するとは考えられていないと思われます。警察への対応を依頼し後日の対応に至る場合にも重大な違法な手続きで取得された証拠は証拠として使えないという話がありますが,特に相手に嘘のことを話をさせるなど著しく不当な目的等がない限りは証拠として使えるというのが裁判例の傾向と考えられます。

 簡単にまとめれば,証拠としての活用は原則としてはできるでしょう。

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