法律のいろは

2019年1月17日 更新損害賠償請求のご相談

所有するアパートの自動ドアやエレベーターの故障によって他の人をケガさせた場合に,大家は賠償責任を負うのでしょうか?

アパートの共用部分の施設の問題で起きた事故に賠償責任を負う場合は?

 自動ドアやエレベーターの故障の他,階段が崩れるなどアパートの共用部分が何かしらの原因で問題・事故を起こし,住人あるいは偶然訪れていた方をケガさせる場合はありうるところです。こうした場合に,大家が賠償帰任を負うのかどうか・仮に負うとしてもどこまでの範囲で賠償責任を負うのかは気になるところです。

 

 賠償責任を負うかどうかは,法律上の賠償責任を負う場合にあたるかどうかで決まります。法律上は,「土地工作物」の「設置・管理」に「瑕疵」があって生じた事故への損害があれば,「土地工作物」の所有者は賠償責任を負うとされています。この「土地工作物」とは,何かしら自然の地形に人工的に手を加えられたもの・施設を指します。当然アパートはここに当てはまりますので,アパートの大家は「設置管理」に「瑕疵」があれば賠償責任を負うことになりかねません。ちなみに,ここでいう「土地工作物」は広く手を加えられたものを指し,道路やゴルフ場等も含まれます。

 

 「設置管理」と「瑕疵」は,簡単に言えば,問題となっているもの,ここではアパートの階段やエレベーターを例として考えていますが,こうした建物の一部あるいは備品に建設あるいは取り付けた時点・その後管理メンテナンスをしていく中で,通常備えておくべき安全性をかけた状況になっていたことを指します。少しわかりにくいですが,問題となった原因が取り付け・建設時に会った問題であろうが・その後管理メンテナンスをしていくうえで生じた問題であろうが含まれます。そのため,建築取り付け時に,手抜き工事であった・不具合があったという場合だけでなく,その後老朽化その他の原因で不具合が生じても,ここにいう通常備えておくべき安全性を欠いた状況になりえるという点は注意が必要でしょう。

 

 問題はやや分かりにくい「通常備えているべき安全性を欠いている状況」が何であるのかという話になりますが,ここは様々な事情を総合評価していく話になります。そのため,問題となった事故の原因が何であったのかという話やその問題(設備などの不具合など)の原因等をよく確認しておく必要があるでしょう。そして,どういった要素を考えていくのかという点ですが,考慮要素として挙げられているものに,事故が問題となる原因がある状況では一般的に生じやすいかどうか・事故が発生した際の被害が大きくなりやすいや・問題となっている原因を取り除くのが費用的に・技術的に見て困難といえるかどうかなどが挙げられます。どの要素があるから決定的というものではなく,こうした様々な要素を踏まえて考えていくことになります。

 

 一般に,老朽化が進んだであれば,事故は起こりやすく被害も生じやすくなります。修理が困難かはケースごとによりますが,少なくとも応急対応はきちんと管理をしておけばできるでしょうから,アパートの設備老朽化による事故であれば大家が賠償責任を負う場合は多くなるかと思われます。そもそも,エレベーターや自動ドア欠陥があってもその後の管理メンテナンスで対応はできる可能性はあり,被害も起きやすいところですから,この場合も大家側が賠償責任を負う場合は多くなるでしょう。

 ちなみに,元々欠陥があった場合には,ご加入の保険を使って保険金からお金を出してもらうということもありえますが,最終的にはその製造者や販売業者が責任を負うべき場合もありえますから,こうした場合には,ほかに責任を負うべきところへの賠償請求も考えていくことになるかと思われます。

 

 このほか,どこまで賠償責任を負うのかはケガが生じたのか・入通院の状況その他を踏まえていくことになります。損害内容によっては賠償責任を負うものかどうか大きく問題となりうることもありえます。

利用者の不注意で起きた事故の場合は?

 以上の話は特に何もしていないのに,エレベーターや自動ドアの不具合による事故が起きた・階段などアパートの設備が一部崩れたような場合の話です。これに対して,例えば,子供がイタズラをしたために備品が壊れたために起きた事故の場合には,当然ながらそもそも備品設備には何らの問題がなかったわけですから(少なくとも事故を起こすような問題まではなかった),基本的には先ほど述べたような賠償責任を大家側が負うことはないかと思われます。

 

 実際に事故が起きたとしてもその原因がなんであるのか・これまでの管理などの状況によって左右されるところが相当程度あります。まずは,事実関係を確認するとともに,ケガをされた方とのトラブルを大きくしないような対応も含めて早いうちからきちんとしていく必要があります。ただし,事実関係が不明確なうちから賠償をするという話まではしない方がいいように思われます。あくまで,迷惑をかけたという点への謝罪と賠償責任を認めるという話は違うという点の認識は必要かと思われます。

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