法律のいろは

2017年7月30日 更新残業代・賃金

「研修生」という名称で就労していた場合に,労働者として給料などの支払いを命じたケース

「労働者」とは?どんな場合に当たるのでしょうか?

 雇用契約を締結したのであれば,給料や社会保険の問題が出てきます。未払い残業代などの問題も出てくることもあります。これに対して,業務委託その他の場合にはこうした問題が出てきません。「労働者」と法律上評価できるかという問題は問題となった事柄で違う点がありますが,今述べたところの問題は雇用契約といえるかどうかという問題になります。

 そして,どのような場合にそのように言えるかは,これまで別のコラムで触れてきましたが,主には業務について指揮命令を受けていたとか・対価が時間に対応するもの(結果に対応するものではない)等の事情によって判断される傾向にあります(他の細かな点は別のコラムで触れています)。

「研修生」という名目の扱いでも給料などの支払いを命じた裁判例

 今回取り上げる裁判例は何点か争点がありますが,ここでは雇用契約といえるのかどうかが問題となった点に関する事柄のみを取り上げていきます。

 今回取り上げる裁判例で問題となったケースは,電器販売店のフランチャイズ加盟店で「研修生」という将来的に独立開業を図る立場で契約をした方との間の契約が雇用契約といえるのかどうかという点が問題となりました。このケースでは未払い残業代や最低賃金法などで定められる最低賃金よりも少ないお金しかもらっていないから差額を元「研修生」から請求をしていました。雇用契約といえるのであれば,これらを会社側は支払う可能性が出てきます(実際に差額が生じている・残業が存在するなどの事情が他にないと実際に支払い義務は生じません)。

 このケースでは契約書上「研修生」とされ,契約期間も定まっていたという点があるため,会社側は雇用契約ではない(「労働者」ではない)点を主張していました。

 

 問題となったケースでは,請求をした側(元「研修生」)は,契約をした会社で働くまでは特に社会人経験(当然電器販売や工事の経験も不十分)という事情がありました。実際裁判所の判断でもこうした事情を踏まえ,会社側の業務指示に従わないといけない状況と考えられると判断されています。また,毎月給与支給明細書によって基本給などをもらっていたこと・遅刻早退などの時間などの管理を受けていたと書類上認められることも考慮されています。さらに,このケースで雇用契約でなければ,「研修生」は個人事業主となって税務申告などを行う必要がありますが,会社側からその点の指導などがなかった点も雇用契約であることを裏付ける要素として判断されています。このほか,独立開業を前提とするならば相応の研修が会社からなされているだろうという点も考慮し(なされていないという判断)ています。

 

 このように,契約における契約書の文言だけでなく,業務実態がどうであったのか(場所・時間の拘束があれば雇用契約を裏付ける要素となります)・個人事業主であればあるだろう事情が実態であるのか等実際の業務状況や契約をした方の業務経験から見て独立性があるといえるのかなども考慮をしています。このように,特に雇用契約かどうかが問題になる場面では単に文言のみではない考慮もされる傾向がある点には注意が必要でしょう。

 

 単に契約書の文言のみで雇用契約の実態があるものをそうではないものとして扱い,雇用契約である場合の問題となる事項を逃れられないと考えて業務に臨んだ方がリスクが少なくなるかもしれません。

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