法律のいろは

2020年4月23日 更新残業代・賃金

会社が貸与パソコンやスマートフォンの私用制限を防ぐには?

はじめに

 業務を行うため、会社の方からパソコンの貸与をして、従業員に作業等行ってもらっている場合が多いでしょう。営業の外回りで携帯電話を使用することが多い業務の場合等では、携帯電話についても会社が貸与していることがあります。

 その場合、従業員が就業時間中や休憩時間に私的にメールやSNS、ゲームをしていることが判明した場合,どう対応すればよいでしょうか。またそれ以外で法的に問題になりうる点についても取り上げます。

貸与する前に使用に当たってのルールを定めましょう

 会社からパソコンや携帯電話の貸与をするとき、まずは事前にはっきりと、詳細にルール化をした上で、従業員にもそのことをしっかり理解してもらうことが必要です。ルールを定めずに後で問題が生じてから対応しようとしても、結局のところ十分な対応を求めることが出来なくなる可能性があります。

 貸与をする前にまずはパソコンや携帯電話をどういった条件で、どの部署の従業員に貸与するのか,貸与をする必要性とリスクをよく考えて決めましょう。

 パソコンについては会社の管理する情報等流出を防止する必要等があるため、通常は会社が貸与していることの方が多いのではないかと思います。携帯電話は、一般的に外に出ることが多い従業員を中心に貸与するのではないかと思います。

 貸与する範囲・方法を決めた場合でも、私用での禁止や使用にあたっての注意事項などは明確に規定しておくべきでしょう。就業規則に「会社の施設、設備、機械などの備品を業務以外の目的で会社の許可なく使用しないこと」と規定されているから大丈夫、と思われる場合もあると思います。しかし、こういった包括的な定めによる場合、自分が業務にあたって使用しているパソコンや携帯電話も含まれるという意識が薄かったりすることもあります。また、既に使用している備品等は別途わざわざ会社の許可を受けて使用するものでもないため、服務規律規程のところで設ける・別で定めるなどで対応するとともに、私的な利用が発覚したときは懲戒処分とすることができるよう、懲戒についての規定も整備しておく必要があります。

 こうして、パソコンや携帯電話の使用にあたってのルールを決めた場合は、従業員にもそれを理解・周知してもらう機会を作る必要があります。パソコンなどを貸与するにあたって、誓約書の中身を説明するとともに記入してもらう、という手続きを取ることで、従業員もよりパソコン等の使用にあたり適正な使用を意識するきっかけにもなります。

就業時間の私的利用が発覚した場合は?

 このように手続きを踏んで従業員にパソコン等を使用させた場合でも、従業員が就業時間中にゲームをしていたり株取引をしていたり、ということが考えられます。こういったケースが発覚した場合、職務専念違反に該当することになりますので、懲戒処分の対象になってきます。

 どういう内容の懲戒処分を行うか等については、これまでの裁判例から私的利用を行っていた期間・回数や時間、私的利用の内容が会社秩序に与える影響の程度、他の従業員や取引先への影響、会社の対外的な信用に与える影響、従業員本人の事後対応、反省の有無などを考慮するものがあります。

 懲戒処分にあたっては、従業員が会社貸与のパソコン等をどのように使っていたかをモニタリングする必要が出て来ますが、モニタリングの方法についても、「個人情報の保護に関する法律についての経済産業分野を対象とするガイドライン」などを参考に実施の仕方なども取り決めしておくとよいでしょう。

 モニタリングの結果、従業員が日常的に会社貸与のパソコンで就業時間中に株取引を行っていたことが判明した、という場合には、場合によっては懲戒解雇も含めた対応が必要になることもあります。

休憩時間中の私的利用が発覚した場合は?

 休憩時間中に会社貸与のパソコンや携帯電話を使用していた場合には、職務専念義務違反の問題は生じませんが、労務提供義務から解放されている以上何でも行ってよいという訳ではなく、施設管理権や会社内の秩序を維持する義務があることになります。

 そのため、就業規則等で会社貸与のパソコンや携帯電話の私的使用を禁止しているのであれば、休憩時間でも規則に反していることになります。もっとも、使用の程度にもよりますが、施設管理や会社内の秩序に大きく悪影響を与えるというまででもない場合には、いきなり重い処分にはいかないにしても、注意や指導といった対応を行う必要は出て来るでしょう。

 

労働時間の適正な管理にも注意

 最近は労働時間の管理について、タイムカードによらず、会社貸与パソコンへのログ履歴等で管理したりする場合もあります。また、パソコンや携帯電話を社外に持ち出したあとも必要に応じてメールなどで業務連絡をしたり、パソコンを使って作業をする場合も考えられます。また、上司等からパソコンへのメールや携帯電話への連絡で労働時間外に業務指示を出している場合もあります。

 こういったケースがあるにも拘わらず、会社が見て見ぬふりで対応をしていると、上記の業務連絡等の要した時間についても残業代請求をされることもありえます。

 貸与する会社としては、貸す際にルール決めをしておけばいいというのではなく、労働時間管理の上でも問題になりうることを意識して、会社外への持ち出しを禁止するか、持ち出しは認めるにしてもその後の使用をどう扱うか等も含めて従業員に説明し、貸与を受ける従業員は当然のこと、指示等をする上司も含め理解してもらうことが必要です。

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