美容院やエステの業界に限りませんが,サロンの運営をその方に委託をする形はよく見受けられるところです。こうした場合に委託をしたサロンの従業員には休憩や休日残業・労災などの規制は及びますが,委託をした方には及ばないのでしょうか?同じように施術を任せる業務委託をした方についてはどうなるのでしょうか?
休憩や残業・労災の規制が及ぶという意味は?
仕事の性質上,会議や店舗の準備や片付け・練習に付き合うなどの事柄が存在します。また,サロンに来られる際,帰宅途中に事故に遭えば労災なのかが問題になることもあるでしょう。
こうした場合に「労働者」といえる立場の方には,法律の規制が及び運営する事業者側に法律上の責任などが発生することがありえます。厳密には細かな法律ごとに別々に考える側面はありますが,今回は先ほどの規制を受けるうえでどうなのか考えていきます。
先ほどの話から分かるように,こうした話が問題になるのは「労災」に当たるような事故や事柄が発生した場合・その方が契約解除をする際に「解雇された」「残業代を含めた給料に未払いがある」というケースが多くなります。
「労働者」とは?
「労働者」といっても何のことか分かりにくいでしょう。先ほどの話に照らして言えば,「労働者」に該当するとされれば,残業代や休憩・労災などの話がいかに「業務委託」の形を取っていても出てくるということです。
「労働者」に該当するかどうかは,契約上「業務委託」という形をとっているかどうかと関係なく,業務などの実態を見て考えていくと考えられています。そのため,「業務委託」にしているから問題ないというわけにはいかないのが面倒な点です。また,様々な要素を考えて判断をしていくために,どれか一つがあれば大きく考慮されるものの,そう簡単でもない点に注意が必要でしょう。
それでは何がポイントなのでしょうか?
一般に時間管理や業務管理をされている・時間単位の稼働に対してお金が支払われていることが重要になってきます。美容院やエステで働いている方は,自分の持っている技術は提供しますが,トラック運転手や建設業の方のようにトラックなどの仕事道具を持ち込むということは考えにくく,サロン側の提供したものを使っているケースが多いように思われます。こうした道具などを自分で持ち込んでいれば管理されているとは言われにくくなります。
また,いくつかのサロンから必要な時間(予約や指名が入った際)に仕事をしに来るということも多いかと思われますが,一社専属で他のサロンの仕事を受けにくい実態があれば,そこに管理されていると言いやすくなります。もちろん,何時から何時まではいてほしいという話がある・終了後に練習参加が強く要請されるという話があれば,相当強く管理されている,時間当たりの給料であると考慮することになります。命じられた仕事を断れるかどうかも同様に重要な要素になります。
感覚的には委託の形をとられていて,お金も給料ではなく委託費で健康保険も各自入ってもらっている(つまり,社会保険の適用をしていない)ケースでは「労働者」とは言いにくいと感じられるかと存じます。たしかに,こうした要素があればより勤務(つまり「労働者」)と言いやすくなります。採用の際にも「新卒採用」その他勤務を前提とした採用の形を取られていればなおさらです。
実際はどうなるのでしょうか?
こうした点からすると,指名など仕事のある時だけ来るということで,氏名の際には他の方に代わりがたい,お金の点なども仕事ごとの管理である等があれば,「労働者」とは言いにくくなります。
ただし,実態は細かい点が問題になってきますから,ここでの話は大雑把な点があること・勤怠管理などがあるかどうか等も問題になってきますので,このような点がどうなっているのか注意が必要です。
また,もともとは従業員の方がこうした形態に移行する場合は,勤務と業務委託の違いなどについて説明をし,了解をもらっていた方がトラブルは少ないように思われます。
これに対して,店舗管理を委託する場合は注意が必要です。従業員の一人である通常の店長がそうであるように,委託先にはある程度の裁量があるのが通常です。そのため,単に任せている点が多いだけでは「労働者」ではないとは言いにくい点があります。「店長会議」等への出席が義務付けられている・仕事をどうするか断りにくい点があるなどの点があれば,管理と時間当たり給料といいやすくなってきます。通常は少なくともサロンの営業時間はいてもらう形でしょうから,なおさらです。サロンの売り上げの○○%としていたとしても,歩合給でも似た要素があるので,これだけで決定打にならない点には注意が必要でしょう。
このように「委託」だから当然労災や残業代などが問題にならないとは簡単にはいかない点があります。委託をする際には特に店舗全体であれば,そこの店舗運営を任せ基本的には口を出さないというスタイルにするのかどうか等検討してその後その通りに運用できているのかどうかも注意をする必要があるでしょう。