法律のいろは

2017年7月7日 更新解雇

期間の定まった雇用契約の従業員の方の契約更新と解雇のハードル(その⑤)

 今回は,比較的最近出された裁判例で,70歳近くになった従業員の方について期間雇用契約の更新を拒絶した際に,その有効性が問題になった裁判例を紹介します。

 

 問題となったのは,ビル管理などを行う会社に期間限定従業員として採用された方(採用時に68歳,3回更新され契約期間は各5~6か月・雇用契約書にビル管理などの委託を受けている先からの委託が解除された場合には他の職場に移動があること,他の職場を確保できない場合などには退職になることが記載されています)との間の契約更新を拒んだことに関してです。

 既に触れましたが,法律上,契約更新に関する合理的な期待を抱かせる・これまで行進が繰り返され契約期間がない場合と同等になっていた場合に期間限定の雇用契約の更新がなされるという話を触れました。今回は前者にある「合理的な期待を抱かせる言動」を会社が取っていたかが大きく問題となっています。ちなみに,ここで契約更新がなされた扱いになると,期間中に解雇をしたことになりますから,法律上・裁判例上の解雇を有効をする用件があるかどうかが問題になります。

 また,契約更新がなされた扱い・解雇が無効であれば,会社には給与相当額の支払いをする必要が原則出てきます。

 

 裁判所の判断は,そもそも契約更新扱いにはならないと判断しています。言い換えれば,会社側から契約更新の「合理的な期待を抱かせる言動」はなかったという判断になります。この裁判では先ほどの3つの点がそれぞれ大きな争点で,解雇の有効性に関する事情も一応判断されています。

 裁判所の判断では,合理的期待を抱かせる言動の有無に関して,・その従業員の方のついている仕事の内容 ・雇用の通算期間 ・更新の回数 ・雇用契約時や更新の際の経緯 等を考慮して判断すると述べています。このケースでは,仕事内容はビル管理などの委託を会社が受けたビルのビル管理などで宿直を伴うなど肉体面でハードな仕事があると判断しています。この内容は,採用時に68歳であった方からすると長期間続けることを前提としているとは考え難いという判断につながっています。また,こう言った点は正社員とは異なる期間限定従業員の規定を置いていたことや委託先から会社が委託を解除され他の異動先確保もできない場合は退職になるとの規定からも裏付けられる(短期的な契約を前提)としています。

 雇用の通算期間は2年足らずと短い・更新回数も3回にすぎないと判断されています。

 

 このように,「合理的な」期待を抱かせる言動などはなかったと判断しています。業務の性質や契約書などで契約上予定されていたこと・従業員の方の状況等を考慮して判断するとなっており,人材不足の中で応急的に人を確保した場合に後でトラブルを起こさないために注意する点を示す一例といえるかもしれません。

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