法律のいろは

2020年12月11日 更新解雇

経営悪化をした際に従業員を解雇することの法律的な問題点とは?

○現在の解雇の有効性についてのハードルは高い

 

 

現在,解雇については①普通解雇②懲戒解雇③整理解雇,というものがあります。今回問題になっているのは③の整理解雇についてです。そのほかの場合については,就業規則の規定が必要です。特に,どういった場合に解雇にあたるのかをきちんと決めておく必要があります。そのうえで,運営上の問題があり可能な限りほかの手段を講じたのか・ペナルテイとしてやむを得ないのか(懲戒解雇の場合)等のハードルが設けられています。

 現在解雇を制度として金銭解決できないのかという議論が国でなされていますが,結論は出ていません。実際のトラブルのケースでは解決金を会社の側で払う形で解決をしている者があります。特に,解雇については法律や裁判例で高いハードルが設けられているため,そこをクリアできるかについて問題がありそうなケースでは顕著です。

 

 整理解雇については,自社の経営悪化時に解雇をすることのハードルがどの程度あるのかについて裁判所の判断は繰り返し出されてきた分野です。解雇とは,会社都合で一方的な意思(従業員が抵抗しても雇用終了とする)であり,退職勧奨をして退職してもらうのとは紙一重の面があり,単に退職届を書いてもらえば解雇にはならないという簡単な話でもありません。

 また,SES契約その他業務委託契約の場合の契約終了は,当初の契約条項で定めていた場合に契約の解約あるいは解除を行うことができます。ここでは雇用契約のようなハードルはありませんが,継続的な契約についても別のハードルが存在します。簡単に言えば,継続的な契約における相手の期待を守る必要から解約が制限される・何かしらの条件を出して契約終了に同意をしてもらう必要があります。請負契約についても,同様ですが,実態が雇用契約の場合には雇用契約と同じハードルに直面します。労働者派遣契約については,派遣先からの派遣切りという言葉が出てきますが,派遣契約自体は派遣先と派遣業を営む会社との契約でこちらを中途解約(契約解除)するかどうかという問題になります。派遣切りという言葉も実際には,派遣業を営む会社がその従業員である派遣勤務の方を解雇する場合の話ですから,以下で述べるのと同じハードルが存在します。

 

 ハードルとしてまず,契約期間の定めのない方(いわゆる正社員や大半のパート勤務の方はこちらに該当するでしょう)については裁判例上確立してきた内容があります。それによると

 ①不況や経営悪化など人員削減の必要性があること

 ②配置転換や一時帰休など他の手段も難しく,解雇がやむを得ないものであること

 ③解雇の対象となる方が適正かつ公平に選ばれていること

 ④従業員との話し合いや説明をきちんとするなど手続きがなされていること

 

 抽象的ではありますが,この①から④を総合的に考慮して,いざ解雇の有効性が争われた場合には,裁判所の判断に耐えられるかがここでの問題です。いきなり裁判所に仮処分(従業員であることの確認を急いで求める・給料支払いを求める)等の申し立てをされることもありますし,その中で諸般条件面の話し合いがなされることもあります。その際,こうした点をクリアできるのか・自社に対する社会的な評価も踏まえてどうか(こちらは法的な話ではありませんが)を検討する必要はあるでしょう。

 

 ①は程度問題ですが,単に赤字になった売り上げが下がったという程度では簡単にはクリアできないと考えられています。一部倒産必至の状況まで必要とする見解もありますが,一般にはそこまで変わりませんが赤字が累積している債務超過寸前であることが必要とされています。あまり変わらないと考えられるのは,債務超過は法律上倒産原因とされているためです。

 ②については,最近一部大企業で従業員の一時帰休が実施されたという話があります。一時帰休とは,簡単に言えば従業員を一時的に休業させることを言います。60%の休業手当自体の支払いは必要です。労務コストは抑えられますがゼロにはなりません。現在特例の出されている雇用調整助成金の対象とはなりますが,この制度自体細かな申請枝続きが変わっており書類が必要など使いにくい面はあります。いずれにしても,従業員の休ませる形では対応できない等の必要があります。現在売り上げが急速に悪化し事業の見通しがつかない場合には①を満たすこともあるでしょうが,そう簡単ではありません。②は営業の目途がなく配置転換もする部署を持っていない・一時帰休でも休業手当の支払いが困難である場合にはクリアする可能性はあります。③は基準がきちんとしていること,④とも重なりますが,きちんと説明や話し合いをしているかどうかが重要になります。相手がきちんと納得(やむを得ないと思っていてくれれば)してくれれば,そもそもトラブルは起きないでしょう。

 

 

 これとは異なり,契約期間が決まっている契約社員(派遣労働者の中はこちらに該当することもあるでしょう)については,解雇のハードルは実は極めて高いです。それは,法律上契約期間が決まっている場合には,自主退職の場合であれ・会社都合であれ,一方的な雇用契約の途中終了は原則できないとされているためです。ただし,従業員側からの申し出については勤務1年を経過した後はハードルは大きく下がることになります。

 いわゆる雇止めは契約期間満了時に更新をしないという場合の話なのでこことは異なります。もちろん,更新拒否については,これまでの更新の状況や会社側からの言動や契約書・労働条件通知書の記載などから,実質無期限といえる場合や従業員側に雇用継続への期待が生じていたと評価できる場合にはハードルが存在します。これとは別に更新などによる雇用期間の合計によっては,期限の定めのない雇用への転換の問題という別の話も出てきます。

 契約期間の中途における契約終了のハードルは「やむを得ない事情」とされており,先ほど挙げた事情よりも高く,中途終了の有効性が問題になった場合にはそこをクリアするのは難しい点があります。

 

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