法律のいろは

2023年3月24日 更新労働問題のご相談

急激な物価高に対応するため、従業員に支給するときの注意点とは?

〇物価高対策としての手当を支給する方法

 労働基準法にいう「賃金」は、毎月支給される賃金と、特別に支給される賃金に大きく分けることができます。月ごとの賃金は、基本給と諸手当からなっている所定内賃金と、所定外の時間外労働に対して支払われるものとに大きく分けられます。

 特別に支給される賃金は賞与と退職金が当たります。

 物価対策として値上げを考えるのは毎月支給される賃金の値上げ、いわゆる「賃上げ」ではないかと思います。ただ、月例賃金のうち基本給の値上げをするとなると,基本給は学歴や年齢,勤続年数や職務遂行能力の種別とランクで決めることが多いため、物価対策という名目では上げづらいように思います。また、基本給は基本給は賞与や退職金の算定のときにもベースになってくるのが一般的でしょうから,一度上げてしまうと下げることによる影響が各所に出てくるので簡単には下げにくくなります。そのため、物価高が解消したからといって簡単に下げられるものではなく,経営上の理由であっても就業規則の不利益変更になるため所定の手続きや要件を満たしてから行う必要が出てきます。

 そのため,物価高に対処するためのものとしては,基本給の値上げによるよりも,家計を助けるための一時的な手当として支給するのが一つの方法ではないかと考えます。諸手当には役職手当や技能手当や特殊勤務手当など仕事内容から支給する手当と、家族手当や住宅手当,地域手当といった生活手当とで大きく分かれます。物価高に対処するための手当であれば,生活手当のようなものといえるでしょう。

〇一時的に現物を支給する方法

 

 上記のように基本給ないし手当の支給で対処となるとどちらにしても「賃金」にあたる以上,一度支給すると減額ないし廃止は従業員にとって不利益な変更になってきます。また、減額ないし廃止のタイミングも難しいところがあるので、現物を支給するということも考えられます。この点,「賃金」については通貨で支払わなければならないとされていますので,原則として現物給付はできません。そのため,現物で何かを支給するのであれば労働者の過半数で組織する労働組合との労働協約による必要があります。実際のところ現物給付の例としては,食事や食事代の補助,会社の商品などの値引き販売,制服,レジャークラブなどの入会金や年会費などがあるようです。色々なものが物価高になってきているのと、現物となると仕入れや保管なども必要になってきますので,現物給付するにしても一般的にみて従業員にとって負担にならず,必要とされるものを選択するのが良いと思います。

 物または権利その他の経済的利益をもって支給するとなると,税法上の扱いにも注意が必要です。一般的には通貨の価値に換算して給与所得として課税されます。ただし,現物給与には、①職務の性質からみて欠くことのできないもので主として企業側の業務遂行上の必要から支給されるもの、②換金性に欠けるもの、③その評価が困難なもの、④受け取る従業員側に物品などの選択の余地がないものなど、金銭による給与と異なる性質があります。また、⑤政策上特別の配慮を要するものなどもあります。そのため,こういった特定の現物給与については、課税上金銭による給与とは異なった特別の取扱いが定められています。

 

 このまま物価高が続くようであれば将来的に賃上げをする必要も出てくるのではないかと思いますが,それにあたっては今かかっている経費や収益などの見直しも必要になってくるでしょう。全体的に見直しをした上で将来に備えることが大事ではないかと考えます。

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