法律のいろは

2021年7月26日 更新労働問題のご相談

退職勧奨の際の退職の合意を得る際の注意点

○退職に合意したといえるかは慎重に判断

 

退職勧奨の際のやり取りでいわゆる売り言葉に買い言葉になり,その中で相手側が退職するといったとしても,これで当然に合意が成立したといえない可能性があります。提示している退職をしたらどうかという話に対して応じているではないかという気もするところですが,合意をしたといえるにはそれだけ相手も確定的な意思を示している必要があります。口げんかになるような場面や相槌を打っているにすぎない・社長や上司から強く言われているので迎合しているにすぎない場面では,確定的な意志なのかという話が問題になることがあります。

 

 実際,最近の裁判例(東京地裁令和234日判決)でも,退職は給与を得られなくなるなど大きな影響を従業員側が受けるので,本当に合意をしたといえるのかは,事実関係を踏まえて確定的に合意をしたといえるかどうかを考えていくとしています。

 このケースでは,社会福祉法人の運営する保育園での産休後の復帰の際のやり取りで実質解雇を言われる中でのやり取りが事実関係に照らしてどうかが判断されています。つまり,合意をしたといえるかは裁判所の事実認定に基づき,裁判所の評価で判断されています。このケースでは復職が難しいという社会福祉法人側とのやり取りの中での受け入れるかのような言動が単に相槌ちを打っているだけ等会話の流れなどを考慮しての事実認定や評価がなされています。

退職者の中に名前を入れるように従業員側で求めた行為も,解雇に不満があっても復職が難しいことを伝えた可能性もあるとされています。

 

 解雇と評価される復職や勤務は今後難しいという話がなされている流れの中では,一応応じる態度を見せても確定的な同意とはされにくい可能性があります。また,退職届を記入して詠出したということは確定的に退職の意思を示したことの徴憑の一つにはなりますが,その前に強く退職を要求する行為があり,その録音や記録がある場合には,これで十分合意をしたとは言いにくいという可能性があります。

 特に強く退職勧奨をする場合には相手が迎合する可能性もあります。応じないと解雇をするという話が出ている場合には,迎合するなどの可能性もありますし,話し合いの後やはり応じにくいという言動を示していた場合にはなおさらです。仮に同意をしたというのであれば,意思確認を行ったうえで(これは勧奨をしたのとは別の方の方がいいでしょう)退職届け出に署名としてもらう方が真意といいやすくなります。何かしらの給付が存在すれば真に合意をしたといいやすくはなります。

 口頭でのやり取りは記録に残りにくいので,議事録その他で記録にしておいた方がいいでしょう。退職に消極的な相手ほどトラブルになる可能性もありえますから,どういう相手にどういったタイミングで対応をしていくかはよく考えておく必要があります。

 たとえ迎合であっても応じてくれればそこで話を決着付けたいという気持ちも出てくるところではありますが,トラブルリスクを感じる際には対応策をよく考えておいた方が結局はいい場合がありえます。

 

 合意があったとされない場合には,勤務ができない状況になっていたということになるので,解雇が有効かどうかが問題になってきます。実際,先ほどのケースでは実質解雇との話も出ていたようで,解雇の有効性(合意性を根拠づける事実や解雇がやむを得ないといえる経過を辿っていたのか等)が事実の認定とともに評価されています(結果は無効という判断)。解雇が無効となると,その方が稼働していなくても給与の支払い義務が基本的には生じますので(その方が稼働意思があることと他で収入を得ていないことが前提),この辺のリスクの考慮も必要です。

○退職勧奨での勧奨の程度や態様の注意点

 

退職勧奨の場面では,拒否をはっきり示しているのに侮辱行為を受けた・スキルに比べて過小な仕事しかさせもらえない等の理由(パワーハラスメント)から慰謝料の請求を行ける可能性があります。

 

 退職を求める理由自体を告げることは,それが明確に事実に反した内容である・単なる侮辱的な内容(例えば,無能あるいはバカな人間である等)を怒鳴る等の行為でなければ,それ自体では問題にはならないでしょう。何の理由もなく退職を求めることは考え難いうえに,告げないとそれこそ理由のない退職勧奨としてトラブルとなりかねません。

 

 問題となるのは,相手が明確に拒否している後も執拗に行う・言動の内容が怒鳴る,ことさらに自尊心を傷つける内容や態様の場合です。この場合には,やり取り内容が記録に残されているかどうかという問題もありますが,特に残されている場合には後の交渉その他で不利に働く可能性があります。感情的なもつれや解雇の有効性含めて仮に金銭解決を提示するにしても支払う金額が大きくなる可能性があるためです。

 

 相手授業員が退職に応じない場合には,業務の変更や配置転換などを考えることも方法としてはありえます。先ほどの適性やスキルに合わない内容である場合には業務命令の無効が争われる可能性もあります。退職にあたっての条件面の整備や今後勤務した場合のお互いにとってのプラスマイナスなどを示して交渉をしていく必要があります。

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