法律のいろは

2020年11月29日 更新労働問題のご相談

従業員が無断欠勤をした際の対応はどうなるのでしょうか?

○解雇に即日できるのでしょうか?

 最近は不況による従業員の解雇あるいは退職勧奨が有効なのか・未払い給与があるのかどうか(休業手当等)が問題になってます。他方で,退職代行業者からの連絡など従業員側から突然欠勤があり業務に穴が開く場合がありえます。

 

 

こうした場合に通常はまずは本人宛に連絡をしてみる・家を訪問するなどして出勤を促す・様子を見に行くという対応になろうかと思われます。この場合に退職の申し入れがあった場合には,慰留をする・退職の意思が固いのであれば引継ぎの話をすることになろうかと思われます。退職代行などの場合では,ここは退職⇒引継ぎ等の話になるでしょう。

 

 これに対し,連絡がつかないけれども退職の意思表示がない(あるいは曖昧)の場合には対応が面倒になります。この場合今後の出勤の見通しがそこまで見込めないという話もありますし,仮に将来解雇の通知をするのにしてもどこに行えばいいのかという問題も出てきかねません。そもそも,こうしたケースで雇用関係をそこまで時間をかけずに終了させるには解雇によることになりますが,法令や裁判例上高いハードル(契約社員の場合には非常に高くなります)が設けられています。

 いきなり解雇の通知をしたい・就業規則にも無断欠勤の場合には解雇理由になると設けられていると行きたいお気持ちが出るかもしれませんが,他の手段を尽くしたのかどうかというハードルも存在します。こうした場合には緊急連絡先や身元保証人等本人と連絡を取る方法や出勤を促す手段を講じていく必要があります。こうした手段をとっても,突然出勤しなくなるという場合には勤務が見込めませんが,後で不当に解雇されたという問題を防ぐにはこの方法が安全策でしょう。現在の新型コロナウイルス等の感染症の感染リスク防止のために会社が側から休業を求める場合とは異なり,こうした無断欠勤の場合には給与の支払い義務は生じません。

 

 解雇をする場合にも即日解雇については行政からの認定を受ける必要が法令上設けられていますので,これを無視して・解雇予告手当も支払わずに解雇を行うことはできません。懲戒解雇の場合であっても同様です。解雇予告通知を出してなお出勤がない(連絡がない場合には通常この流れになると思われます)のであれば,法定の期間が経過すると解雇となります。

 今までの話で一番面倒なのは本人が行方不明となった場合の話で解雇通知をどうすればいいのかという問題があります。この場合にこうした場合に当然退職とする就業規則上の規定を設けることも一つの対応ですが,それがない場合には本人が受け取ろうと思えばいつでも受け取る先への郵送をするか,最悪裁判所を使っての公示送達という方法もあります。ちなみに,こうした場合には未払いの給与がある場合には法務局に供託の手続きをする必要も出てきかねません。

○無断欠勤により会社に損害を賠償できるのでしょうか?

 結論から言えば可能となる場合があります。ただし,問題が二つあります。一つ目は,損害となる範囲は思っているよりも少なくなる可能性があること・二つ目は実際の回収には相当なハードルが存在するという話になります。業務中の事故については,会社もそこから利益を得ている,危険を管理しているといった点から制限されるという傾向はあります。これに対して,無断欠勤の場合には,従業員が雇用契約によって行うべき業務に従事していませんので,債務不履行ということで会社側に生じた損害の賠償を行う必要が出てきます。同じことは,退職時に引継ぎを行うことが全くなかった場合にも当てはまります。どこまでの引継ぎが必要なのか・きちんと行われない場合には,ケースごとの事情によって変わる面があり一概には言えませんが,賠償義務が生じるのか・損害がどうなるのかについて難しい面が出ることもありえます。

 

 損害については,その業務を他の従業員に任せたというだけで当然に損害が出るわけではありません。その方が手が空いていてその業務をしたというだけでは,結局本来支払う給料を支払っただけで損害というものが生じていないためです。損害とは,無駄にかかった費用と本来得られるべきだった利益を得られないことですから,余計な外注による費用の増加や残業が生じることでの残業代等が生じない限りは損害とは言いにくくなります。本来得られるはずだった売り上げや利益についても,無断欠勤をした方が重要な営業担当で仕事を受注できなかったといえる場合に損害といえることになります。ここからもわかる通り,損害といえるにはそれだけの事情を必要とするため,相手方が争う可能性がある場合には,どこまで損害なのかを検討しておいた方がいいでしょう。

 

 このほか,先ほど挙げておいた実際にお金を回収できるのかという問題があります。未払い給料からの相殺は法律上禁止されていますから行うことはできません。裁判をしてその後差押えをするにしても制限が存在します。身元保証人に対して請求をする場合には,法律上身元保証人の責任期間の制限があること等についての注意が重要になってきます。

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