法律のいろは

2020年4月25日 更新労働問題のご相談

変形労働時間制やフレックスタイム制度など勤務時間の設け方とその意味は?

変形労働時間制とは?その意味,内容や要件は?

 法律上勤務時間は1日8時間・1週間40時間・休憩や休日の規制があります。こうした事柄では,事業や働き方に見合わないものも存在します。そういったときに対応して,勤務時間を一定の枠の中で平均化して配分する形が法律上存在しています。それが「変形労働時間制」というものです。以下で,簡単に紹介しておきます。

 

 形としては,1か月単位の枠の中で平均化を行う・1か月を超え1年単位の枠の中で平均化を行う・1週間単位の非定型的な勤務時間を定める形が存在します。

 このうち,最後の1週間単位のものについては,常時30人未満を雇用する一定の業種で・日ごとの業務の繁閑の差が著しいものである必要があります。1日あたりは最大10時間勤務まで残業は生じませんが,1週間40時間の枠の中で調整する必要があり,予め従業員側との取り決めや各日での勤務時間を書面で通知する必要があるなど,規制が設けられています。

 

 次に1か月単位の枠で平均化を行う制度について触れておきます。簡単に言うと,1か月単位でならした範囲では法律で定められた勤務時間の合計の範囲内であるという制度ですので,例えば,1日8時間を超えるものとして定めた日があれば,その日については8時間を超えて勤務があっても超えて定められた時間(例えば,9時間と定められていれば9時間まで)は残業とはなりません。ある一日を多くすれば他の日を少なくして調整しますし,ある週のみ勤務時間を多くする(例えば,44時間とする)のであれば,その時間までの勤務を1週間の範囲内でしても問題はありません。この場合別の週の勤務時間を少なくして調整していきます。あくまでも,業務内容などに応じて凹凸をつけるという形になります。

 この制度について是非の議論はありますが,一定の前提のもとで特例事業における所定労働時間を1週間44時間にすることが認められています。1週間当たりの残業時間が減ることになりますが,常時1つの事業所で雇う方が10人未満であることが必要で,業種も限定されています。シフト制を設けるなどする場合が活用例として挙げられます。ただ,シフト制であれば,各シフトの始まりと終わりの時間(シフト制であろうがなかろうが,常時10人を超えて従業員がいる場合には始まりと終わりの時間は就業規則で特定しておく必要があります)・各週や日の所定労働時間をはっきりさせること(そうでないと凹凸が不明になる)・凹凸を行う期間の起算日を定めておく・シフト制の場合にはシフトの取り決めの基本事項を決めておく必要があります。就業規則等でこの制度を採用する場合に,取り決めを要します。また,シフトを組む場合には,シフト割りなどきちんと運用しておかなければなりません。

 

 最後に1年単位の枠で平均化を行う制度は,1か月を超える期間での枠で平均化を図るものでこうした期間で繁閑の差が大きい場合に活用することになります。1日や1週間の所定労働時間を延ばすことができる部分は出てきます(他の部分で調整をし,平均して週40時間の規制を守る必要があります)。ただし,伸ばすことができる部分でも上限で1日10時間・1週間52時間の枠になります。また,連続しての勤務も基本は6日までとなります。この制度を設けるには,従業員側との協定を作る(協定は労基署に届出が必要)こと・協定の中で,対象となる従業員の範囲をはっきりさせる・対象となる期間を明確にすることが必要で,協定には有効期間があります。就業規則がある場合には,いつから・いつまでの勤務かもはっきりと決めておく必要があります。

 ここでの残業もそれぞれ定めた枠の中での勤務時間を超えて初めて残業となります。

 

 

 

フレックスタイム制や裁量労働制とは?

 変形労働時間制よりも柔軟な勤務時間の制度として「フレックスタイム制度」と呼ばれるものがあります。この制度は,定めた期間について,従業員に取り決めた時間勤務することを前提に,いつから・いつまで勤務するかを従業員に決めてもらう制度です。コアタイムと呼ばれる必ず勤務してほしい時間帯を決めて導入することも可能です。

 この制度を導入する場合には,この定めた期間(清算期間と呼ばれます)の中での勤務時間の合計が法律で定めた枠を超えた場合についてのみ,残業が発生するとされています。分かりにくいですが,仮にこの清算期間を1か月と定めたとすれば,1週間以内の上限40時間に該当する1週間の数(端数部分は本来的には計算で調整)で計算することになりますが,端数分については行政解釈が存在して定めています。言い換えると,総枠で越えない場合には,ある1日で8時間を超える勤務が実際に存在する・1週間で40時間を超えても残業が生じない扱いになります。ただし,これは清算期間が1か月までの場合です。

 この清算期間はこれまで1カ月までとされてきましたが,2019年4月以降3カ月まで定めることができるようになっています。この1か月を超える期間で定めた場合には,1か月ごとの勤務時間が1週間平均50時間を超えないことが要求されています。これは,偏って多い勤務時間になってしまうことを避けるためです。仮に,この時間を超えた場合には,総枠で越えていなくてもこの枠を超えた部分で残業が発生します。枠を長くする場合には,多めに勤務を実際にした部分を少なくする部分で差し引きしていく形になるイメージになります。

 

 この制度を導入する場合には,就業規則での制度採用の規定に加えて,法律で定められた事項について従業員代表と労使協定を結び,労基署に届け出る必要があります。ここでは,標準となる一日あたりの勤務日数(年次有給休暇をとる場合の基準となる時間数となります)・対象となる従業員の範囲・先ほどの清算期間の長さ・清算期間あたりの総勤務時間になります。コアタイムを設ける場合はその内容も決めておく必要があります

 

 フレックスタイム制を実際にその従業員との方で採用するには,これに加えて雇用契約でその旨の規定を入れておくことが必要です。また,従業員が自由に勤務する制度になりますから,勤務時間を決めて命じることはできません。

 

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