法律のいろは

2019年2月12日 更新労働問題のご相談

メンタル面で不調の可能性のある従業員にはどう対応すればいいでしょうか?

医師への受診を命じることはできる?

 特にお客様相手のご商売の場合はクレーム対応や勤務の大変さや他の他の事情からストレスを抱えた従業員の方はおられるかと思われます。こうしたストレスが原因で仕事に身が入らない・仕事を進めるうえで周りとうまくやり取りができない等という事情が出てくれば仕事に支障が出てくることもあります。会社は従業員について,「安全配慮義務」という義務を負っており,こうした義務を果たすうえでも,対応が必要となってくるところです。

 仕事上の事柄が原因なのか私生活上の事柄が原因なのか・双方が原因なのかはっきりしない場合もありえます。

 

 この場合に,従業員自身が病院を受診し休むかどうかなどの対応を求めてくる場合には,長期間の休職をしてもらう形で回復・職場復帰を図ってもらうのか・自主的に退職をしてもらうのか等を決める必要があります。ちなみに,会社側からの意向で一方的に退職をしてもらう解雇という方法には,仕事が原因で病気やけがをしている場合には行うことは極めて困難です。ここでの病気にはストレスによる病気も含まれます。これは,法律上の厳しい制限がかかっているためですが,仮にこの制限にひっかかる場合ではなくても,解雇には法律上強い制約がかかっています。

 病気と思われる状況で勤務をしてもらう点には仕事上・周りへの影響・本人自身の問題もあり,休みを命じるかどうかは重要なポイントです。ちなみに,休職制度がない場合で会社としては退職をしてもらいたいけれども,合意退職が難しい場合もありえます。この場合にはストレスによる病気であればその原因が仕事によるものかどうかによってハードルが異なってきます。

 

 これに対して,従業員側に病識がなく病院への受診を嫌がる場合もありえます。この場合に,会社として病院を受診するようにその従業員に求めることができるのか・また体調不良と思われる場合に休むことを命じられるかどうかは問題となります。

 まず,体調不良で仕事が十分にできないと思われる場合(その根拠は必要です)には,休みを命じることは可能です。これは,従業員側にはきちんと仕事ができる状況で仕事を行う義務があるためです。この場合休みであれば給料の支払い義務はその分はありません。しかし,こうした事情がないにも関わらず仕事をしないでいいという話をしても,会社都合による休みとして給料の支払い義務が出てきます。

 また,こうした点があることから,体調不良などがうかがわれる場合には病院の受診を当然に命じることができます。ただし,体調不良が伺われるかどうかはストレス等による病気の場合には外見からはわからないこともありえます。職場でのイライラあるいはボーっとした様子・ミスが増えるなど集中力が低下している・遅刻や欠勤が目立つようになったなどの兆候の一つの例として挙げられます。

 

 こうした話は就業規則に定めがなくても命じることができますが,休職と復帰を行える仕組みを作るのであれば就業規則に休職命令と復帰の制度や受診命令の制度を定めたほうがいいでしょう。もちろん,単に命じるだけではどこに行けば分からないということもありますので,きちんとした医療機関につなげられるようにする・心理的にも行きやすいように言葉をかけるなどの対応は必要でしょう。

 

休職と復帰の制度とは?

 受診やそれに伴い状況によって休業をしてもらうことを制度化するものとして,就業規則にこうした制度を設けることは可能です。こうした制度自体は各社ごとの設計になります。ここで受診や休職を命じることができる場合を広く定めておくことで微妙な場合でもこれらの命令を行うことができます。また,休職制度は私生活での事柄を原因に病気になった場合(解雇の制限はそこまでは強くはありません)にも解雇になることを猶予するもので,従業員としても安心をできるものです。通常は休業期間満了までに「治癒」しない場合は自動退職の扱いになるよう定める形になります。

 このようにすることで,すぐに退職を促す会社ではないというイメージ及び従業員への安心感を与えることができます。小さな会社の場合こうした余力はないとの考えもありうるところですが,メリットとの兼ね合いで導入を考えていくことになると思われます。

 

 とはいえ,実際には命令を出すよりも話し合いで従業員に対応をしてもらうようにするのがいいのは言うまでもありません。受診の際の話は先に触れましたので,ここでは休職の話を少し触れておきます。そのためにも,休職の制度の内容(復職の際の話や休職中の連絡方法・給与面などの話・税金面などで会社が立て替えて置くお金の話)をきちんと定めておく必要があります。

 

 休職制度を設けた場合には,復職が可能かどうかの判断や完全に前の仕事に戻れるわけではないけれども一応回復した際の判断をどのように行うか・どのような仕事についてもらえるのかを決めて職場復帰をしてもらうなど運用面でも難しい問題があります。ここでいう「治癒」とは完治ではなく一応前と同等の仕事を行えるような状況を言うとされています。仕事内容がはっきりと決まっていた場合にはその仕事ですが,そうでない場合には他の負担が軽い仕事であれば復帰可能かどうかを考えて復帰していただくかどうか対応していく必要があります。

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