勤務時に仲良くなったお客様に連絡するなどして独立後近くで競合するサロンを開業するのではないか・引き抜きで競合する近くのサロンに転職されたら大変だ,というサロン経営者の方がいらっしゃると思います。
こうした希望に対しては,退職後何年間かは競合することをしないように誓約をさせればいいという考えに至ります。このような制限に問題はないでしょうか?

勤務時の競業禁止と退職後の違いは?
先ほどの問いの答えですが,多くの場合競合への就職などを制限することは難しくなってきます。
これに対して,勤務中にアルバイトを競合店で行うことは制限ができます。これは,サロンでの勤務に集中し競合店にメリットを与えて自サロンに損害を与えてはいけないという義務が雇用契約上存在するためです。
それでは,業務委託契約(名実ともにそう言える場合を念頭に置きます)の場合どうかという点がありますが,ここについても一定程度の誓約自体は項目を設ければ可能です。
ちなみに,最近兼業や副業を広く認めていこうという流れがありますが,あくまでも自社での勤務に支障を与えない範囲です。そのため,短時間仕事をする形はともかくフルで勤務される方などの場合には支障を与える可能性は十分にあり,特に競合店であれば自サロンへの損害を与えうるので,制限自体可能でしょう。
退職後の競業禁止はなぜ制限されるのでしょうか?
一番の理由は,どの個人も職業選択の自由を持つためです。
もう少し詳しく言えば,どんな仕事をどこでするかは,その人の自由で制限をすることが許されないのということが原則です。雇用契約からいえる義務も退職後は及びませんので,退職後の競業禁止には何かしらのための合意が必要です。とはいえ,あくまでも自由が原則なものを制限するわけですから,それなりの合理性や必要性がないといけません。
こうした事柄がなく,長期間広い範囲で競業を禁止した場合には,そうした誓約書は無効となってしまう(言い換えれば無意味なものとなってしまう)可能性があります。そのため,例えば,10年近く・自サロンがあるのと同じ市内で競合サロンへの就職と独立を全く制限する場合には無効リスクが出てきます。
そのため,例えば,顧客情報への接触や経営に深く関わるポジションにいる方については,そうした知り得た情報もあるから競業制限を加えることは一定の必要性が出てきます。ただし,あくまでも必要性と比べての制限の範囲ですから,この場合でも期間や場所などの制限が大きいと同じように無効になる可能性があります。
ほかのコラムでも書いていますが,これとは異なり,自サロンの営業秘密といえるようなものを勝手に持ち出して営業に使っているような場合は,そうした行為の差し止めなどを求めることはできる場合があります。