法律のいろは

2022年5月5日 更新契約問題のご相談

貸している物件の賃貸借契約の更新拒絶・中途解約の申し出をすることで問題となる「正当な理由」とは(その②)?

再築することなどはどこまで正当理由として考慮されるのでしょうか?

 他のコラムでも触れていますが,テナントに貸す・アパートを貸す場合には借地借家法という法律が契約内容をどのように設定しても適用されます。この場合に,契約解除ができる場合(ここにも裁判例上ハードルが存在します)を除けば,更新・中途解約時点までの一定の期間において更新しないという意思を貸主から借主に示す必要があります。借地借家法は借主保護の法律であるために,規制は主に貸主側で問題となります。

 正当理由は法律上,貸主と借主双方の物件利用の必要性を主要な要素として,建物の利用のこれまでの経過・建物の利用状況や現況等も考慮し,その中にいわゆる立退料の支払い(金額)も考慮されるとされています。ここでの貸主側の土地利用の必要性には建物が老朽化したことでの立て替えの必要性や再開発の必要性も考慮されるものではありますが,立て替えの必要性を基礎づけるだけの老朽化と立て替えないといけないだけの事情(耐震面での問題)等を資料を用いて示す必要があります。立て替えについては補修で対応ができるもの(そこまでの費用がかからない場合)には,その必要性がないとされる可能性があります。

 立て替えないといけない必要性といっても,耐震判断などを得るには借主の協力が必要な場合も多く,協力がない場合にはそもそもその資料が存在しないこともありえます。

 

 立退料については裁判例上,比較的相応の利用の必要性等があったとしても相当額が必要とされるケースが多いように思われます。言い換えると,立退料がなくても退去が実現できる場合にはかなり限られる点がある模様です。

 この種の話はいきなり裁判になることはなく,通常話し合いを行いそこで退去条件を示す・退去の折り合いがつくのかどうかが問題になります。通常立ち退きまでそこまで時間をかけられるわけではないので,裁判になった際の更新拒絶とならないリスク(明確な基準がなくケースバイケースとなるため予測しにくい面があります)・裁判やその後の強制執行を行うで時間や費用が多くかかりかねないことを踏まえての立退料を示すケースも多いものと思われます。また,代替地を提示することも借主との信頼関係いかんではあるかもしれません。

 ちなみに,立退き交渉は法律上の紛争に該当するものなので,弁護士以外の者がこの交渉を行う場合には弁護士法違反(非弁行為)となる可能性があります。この違反には刑罰のペナルティがつく可能性があります。

 

 話はそれましたが,いわゆる正当理由が厳密に問題になるのは裁判(話し合いがうまくいかない場合に,専門家が調停委員として関与する調停の申立てをする場合もありえます)になります。ただ,借りても居住して生活をしている・そこで商売をしている場合にはこちらの利用の必要性もかなり高い点は無視できません。立退料の申し出をしてもシビアに問題となる金額面で大きな開きがある場合やそもそも退去自体に相当借主側が消極的な場合には,立退料にかかわらず更新拒絶や中途解約ができない(退去を実現できない)場合もありえます。

 

立退料の意味合いと金額とは?

 立退料を考える場合にはケースごとの事情や最後の店子なのかどうかなどにより異なる面はありますが,一定の参考になる基準もあります。その一つが公共用地の取得に関する損失補償基準(用対地基準と呼ばれるもの)や不動産鑑定評価での基準が参考になるとされています。借りる側は退去をするとなると,代替地を探す際の経費や家賃が高くなればその金額,営業基盤がなくなる・営業用の器具などを新たに購入などするための費用・移転の際の休業の分の補償等が多くかかる費用と思われます。先ほどの基準,特に「用対地基準」では,この内容を多く含んだものが定められています。この基準自体は公の収用に関わるものですが,退去と移転を余儀なくされる点では同様に考えることはできます。

 実際にいくらなのかは,立地条件や事業内容等の影響も特に借主が事業用で使っている物件については個別の要因として影響する可能性があります。不動産鑑定基準とは,不動産鑑定士の方が鑑定評価で出す際の基準ですが,営業補償などがここで確実に適切に算出されるかという問題もありえます。

 

 話し合いで早急に退去を求める場合には,この基準も参考になりますが,早期解決面も踏まえた提案をすることもありえます。その際には本来裁判ではそう簡単に考慮されない「開発利益」(物件などの開発を行うことで開発者側に生じる利益,当然そのリスクは開発業者が負うことになります)の考慮を行い,金額を上積みすることもありえます。ここを考慮することは特に借主に損失でもない部分の支払いをする点がありますので,裁判では考慮されませんが,早期解決その他の必要から考慮するかは経営判断としての要素になるでしょう。

 

 ちなみに,裁判の場合には不動産鑑定評価などを参考に立退料の金額目安を出されるため,申し出ている金額よりも大きな金額を出すかどうかの打診をされる可能性がありえます。この場合にどうするかは予算と退去実現の利益を考慮して判断することになります。また,法律の条文上は立退料は補助的に考慮される要素なので,他の要素から「正当理由」が強く裏付けられそうな場合に減額になりそうですが,裁判例上は必ずしもそうはなりません。退去を求める側は判決まで行かないと解決しない場合には,他の要素で満たす分減額すべきと主張すべきかと思われますが,そうはならないリスクもありえます。

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