法律のいろは

2021年5月20日 更新契約問題のご相談

設計業務をある程度進めた段階でお客様(注文主)から断りがあった場合に,費用の請求はできるのでしょうか?

トラブルとなるケースとその対応

 書類での明確な合意を進めることなく,打ち合わせや準備を重ねた,場合によっては設計を相当進めた段階で取りやめにしたいという話しを受けるケースはあるのではないでしょうか?トラブルになることも多いので,打合せ記録や契約書の取り交わし・途中での取りやめの場合でも費用請求ができるような書面の取り交わしを最初に行う等工夫が必要なところです。

 

 ここで問題となるのは,まずは契約が成立した(設計のための契約あるいは建設請負契約等)かどうかという点です。費用面や業務内容(工事請負契約などでは仕様面の確定も必要)が決まっていないと契約が成立することはありません。法律上は口頭でも契約は成立はしますが,会社の規模や取り合扱いの慣行によっては書面がない限り契約成立とはいいがたいとされる可能性があります。BtoBの取引では本部の決裁が必要とされることもあるので,現場ベースで発注予定とされたからといっても,必ず契約ができたという扱いにはならない点には注意が必要です。

 

 仮に契約が成立していなくても,既に提供した業務についての費用請求が可能であることも多く,無駄になった費用の請求自体は可能です。とはいえ,トラブルを防ぐには,住宅等の建設では工事請負契約の前の設計業務の段階でも契約書を取り交わすあるいは,その後の契約に至らない場合でも設計費用をいくらもらえるという書類の取りかわしがトラブル回避策となります。ただ,この費用が実際の費用と乖離している場合には,特にBtoCの取引では違約金として無効になる可能性もある点には注意が必要でしょう。

契約に至っていない場合の費用請求はどうなるのでしょうか?

 契約に至らない場合であっても費用が請求できる場合はあります。そのうちの一つは,お客様側が契約するという言動をとっていたためにかかった費用(無駄になった費用)を請求するというものです。専門用語で「契約締結上の過失」と呼ばれるもので,無駄になった費用を請求できるだけであること・お客様側に落ち度となる言動があることが前提となります。言い換えると,いわゆる勇み足の場合には請求できなくなる可能性があるという点です。

 

 このほか,会社あるいは事業として設計業務を営んでいる場合には,法律の規定に基づき相当な費用を請求できる場合があります。ここでは,相当な費用の金額がいくらであるのかという点と無料で行うという話しがあったのかどうかが問題となります。まず,後者については「サービスで行うという話しがあった」という反論が出る場合と,業界の慣行で無償で行うというものであるという反論は出る場合が考えられます。

 こうした話が出るのは契約が成立しているのに相手の一方的な都合で解除されたのだからお金を支払ってほしいという請求とともに,仮に契約が成立していなくてもという流れで出てくることが多いように思われます。契約が成立していなくても,法律上営業として設計業務などを提供している場合には,相当費用を請求できるのですから,先ほどの反論の存在はお客様側が立証する必要があります。打合せ記録がある場合には,やり取りの有無ははっきりするでしょうし,言った言わないの話になった場合にはやり取りを示すのはかなり難しくなります。慣行を示すのは同様にかなりハードルが高いように思われます。

 他のやり取りを踏まえて考えるにしても,業者側から営業を相当行っていた場合にはサービスを行うという話しが出る可能性はありえますが,お客様側から問い合わせている場合にはその可能性は極めて小さくなるように思われます。また,提供した業務の量が多いほどにサービスで行うとは言いにくくなります。

 

 次に相当な費用とはいくらなのかが問題になります。自社で基準を定めている場合にはその基準が根拠となります。全くない場合には,何を根拠にするのかが難しくなります。いわゆる相場によることになりますが,何が相場なのかという問題です。例えば,設計業務については国交省告示15号が建築士の業務報酬の算定基準を定めており,一つの参考になりますが,必ずこの基準が裁判になっても採用されるとは限らない点には注意が必要です。

 そのため,何かしらの基準を定めておくことは特に打ち切りがありそうな設計業務などについては必要といえます。

 

 

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