法律のいろは

2019年5月29日 更新契約問題のご相談

民法の改正によって,建築工事の瑕疵担保責任やシステムなどの開発の際の問題はどのように変わるのでしょうか?

改正によって変わることとその概要

 昨年平成30年に民法の改正が行われ,令和2年(2020年)4月から改正した内容が施行されます。そのため,請負工事(瑕疵担保責任以外の部分も改正が行われています)についてもこの時期以降のものは改正された内容になります。ここでは改正前でかつ一般に知らえている「瑕疵担保責任」の名前で触れておきますが,名前も「契約内容不適合責任」に代わります。難しい名前ですが,内容は変わらず,契約で定めた内容が工事を完成させても実現できていないことへの責任追及を指します。

 

 ここでは大まかに3点触れておきます。

①瑕疵担保責任の責任内容が変わります。

 これまで,責任を負う内容は,修理を行う・損害賠償を行うというものだけでした。改正によって,修理だけでなく不足している部分の引き渡しができるならば不足部分の引き渡し請求を,代替物の引き渡しが可能であればその請求が可能になりました。また,代金の減額請求も可能になること(瑕疵による不適合に応じた部分)も定められています。

 解除については,修理を求めても修理されない場合・修理が不可能な場合にはすることができます。ただし,瑕疵による不具合が,契約内容や一般的な点から見て軽微と評価される場合には解除ができません。どこまでが軽微なのかは取引内容などによって変わってきますが,解除を争う業者側で示していく必要があります。

②建物完成後も請負契約の解除が可能になりました

 これまで建物は社会的に見て重要であり,完成後に契約解除となると撤去は業者側にとって負担が重いことから,建物完成後の請負契約の解除はできないとされてきました。裁判例によって,不具合の程度が特に大きな場合に一部近い効果を持つ賠償請求が認められていましたが,解除は制限されていたのは間違いありません。

 改正によって,こうした解除の制限がなくなりました。ただし,先ほど触れた「軽微な」不具合というのをどのように考えるのかによっては今後も建物工事の請負契約では実質解除の制限がある程度は続く可能性もあります。ここは今後の運用がどうなされるのか賀注目されるところです。

③瑕疵担保責任を負う期間の変化

 これまでは,民法上は,建物建築等引き渡しが必要な請負工事は引き渡してから1年経過すると瑕疵担保責任を追及できないと定められていました。各種約款を使う場合にはその内容を確認しておく必要があります。ちなみに,民法改正を受けて変更の検討がなされているものもあります。この期間は契約によって変えられるのですが,別の法律で期間の変更と制限が存在します。それは新築の住宅について,重要部分(構造耐力上主要な部分と雨水侵入防止部分)に不具合があった場合に責任を負う期間を原則10年としています。この期間は短くできません。

 改正によって,施主が不具合を知ってから1年と変更されています。契約による変更ができる点・新築の住宅工事の場合の期間については変更はありません。

 

 

 このほかにも請負工事の途中解約の場合の報酬請求に関する規定が設けられるなど規定に変更があります。また,何が瑕疵(不適合)になるのかは契約内容に変わってきますので,そこでの仕様やその他をどのように定め何が実現できていないのかをきちんと確認する必要があります。

システム開発などへの影響は?

 法律の改正の内容自体は同じですので,問題となる状況がどのようになるのかによって変わってきます。まず,仕様通りの開発などがなされていないことを理由とした発注者側(ユーザー側)の解除は制限を受ける場合があります。これは,契約の実現ができないことに原因のある側からの解除が制限されるためです。システムの開発等は発注者側からの希望等に基づき受注者側が仕様を固めて作業をしていくため,その性質上,受注者と発注者双方の協力が必要となります。うまくいかない場合には,もちろん受注先のミスによる場合もありますが,発注者側の問題による場合もありえます。

 また,先ほども触れましたように,軽微なミス等の場合には解除が制限されます。そのため,納品して検収によるチェックの際に小さなバグが見つかったような場合には,軽微なミスと評価される可能性があります。これに対して,そもそも納品すらできないあるいは極めて大きなバグである場合等は話が異なってくるでしょう。

 

 一通りの工程が終わってから発生した不具合などはいわゆる瑕疵担保責任(今後は契約内容に適合していないことについての責任)になりますが,こうした場合であっても,受注者側のミスによるものでなくても大きな不具合であれば契約が解除されることがありえます。ただし,先ほど触れましたように,発注者側に原因がある場合には話が変わってきます。

 また,こうした場合は契約内容でその他の代金減額やバスの修正・損害賠償などを含めてされることがありえます。こうしたことができる期間は契約内容によって変更すること自体ができます。法定の期間に制限があることには注意が必要です。改正によって法律上は,納品時ではなく不具合を発注者がが気づいてから1年となるのが原則であることになります。

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