法律のいろは

2019年3月23日 更新契約問題のご相談

警察官立会いで開錠後、鍵を交換。保証会社に滞納家賃を請求できる?

はじめに

 貸している部屋の家賃が滞納し、借主と連絡が付かず行方不明の場合、部屋を貸しているオーナーや管理会社としては、その後の対応をどうするか困られ、相談に来られるケースは割とあります。

 今回は、そういった借主と連絡が付かず、鍵の交換をした場合でも、違法な行為にあたらないとされ、滞納されている家賃について保証会社への請求が認められた裁判例について取り上げます。

 

どういう経緯で家主は鍵の交換をしたのでしょうか。

 このケースでは、賃貸人が途中で交代し、その後管理会社と賃料の支払い先口座の変更を借主に通知したものの、連絡がとれず、家賃の滞納があったことから、保証会社からの支払いを受けていたというものです。

 その後も借主と連絡がつかず、保証会社が代わりに家賃を支払っていたものの、その後明け渡しの裁判を起こしたにもかかわらず、借主は全く音沙汰がありませんでした。管理会社は貸している部屋でもしかしたら…となり、家賃保証会社にも連絡の上、警察官立ち合いで確認をしたところ、まったく見ず知らずの人がいました。その人物は借主でない第三者から鍵を借りたと言っていたこと、複数の人物の出入りが見られることから、警察から、中の状況保全をするにも鍵を交換した方がいいと言われたことで、鍵の交換を行ったというものです。

鍵を交換したことで保証会社は保証契約は終了・免責事由にあたるとして家賃の支払いを拒める?

 これに対して、家賃保証会社は鍵の交換をした日の前日で保証契約を解除し、以後の滞納家賃は保証しないと言って支払いを拒みました。

 理由は、鍵の交換により借主は部屋を使えなくなったのだから違法な自力救済(何らかの権利を侵害された人が、法的手続きによらずに実力で権利の回復をすること)にあたるということ・賃借人と関係ない者の使用によって、建物の出入りが出来なくなっているから、保証債務を免れるということを挙げています。

 これに対して、裁判所は保証会社の言い分を認めませんでした。オーナーは警察が上記部屋に立ち入る際に事前に保証会社にも連絡をしていましたが、特に保証会社は異議を述べていなかったこと・鍵の交換の経緯についても連絡しており、オーナーとの間での保証契約上の信頼関係が破壊されたといえない、したがって解約の通知は法律上・契約上の根拠がなく、保証契約は解除の通知後も有効と判断しています。

 また、保証契約での免責事由については、免責条項は地震や津波、テロなど人災・天災を問わず、と書かれていて、不可抗力またはそれに準ずる予見不可能な事情を指すと裁判所は解釈しています。このケースの場合は部屋にいた第三者は賃借人を介在して鍵の交付を受けたと推測でき、不可抗力またはそれに準ずる予見不可能な事情にはあたらないとして、保証契約の免責規定にもあたらないと判断しています。

まとめ

 家賃の滞納はあるが、契約解除をしていない・また解除はしたが、やはり借主と連絡がつかないという場合であっても、勝手に貸している部屋にオーナーが立ち行って、中の物を勝手に処分したり、鍵を交換して借主が入れなくするのは違法な行為にあたり、借主から損害賠償請求されるリスクが出て来ます。現にそういった裁判を起こされ、不動産オーナーが敗訴しているケースも見られます。

 この裁判例では、借主と連絡が付かないといった緊急やむを得ない場合といえるときでも、上のように違法な行為にあたらないよう、警察に連絡・立ち合いの上対応する上で一つの参考例になると思います。

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