法律のいろは

2019年1月3日 更新契約問題のご相談

エステサロンを経営したい!商品・サービス提供のとき注意すべき法律は?

はじめに

 エステサロンでは,施術によるサービス提供だけでなく、化粧品や美容機器など様々な商品を扱っておられるところが多いのではないかと存じます。
 施術によるサービス提供については,単発での提供もありえますが,通常はお客様も継続的にサービス提供を受けることで,より効果を得たいと思うのではないかと思います。そのため、サービス提供は一定の期間にわたることの方が多いでしょう。
 

 サービス提供にあたって、何か気をつけるべき法律の規制はあるのでしょうか?

特定商取引法による規制

 エステサロンでのサービス提供は、特定商取引に関する法律(以下、「特商法」といいます。)の施行令で、「特定継続的役務提供」という取引形態の指定業種とされています。この「特定継続的役務提供」とは、一定期間を超える期間にわたり(エステの場合1カ月を超える場合)、継続的に一定金額(5万円)を超えるお金を受け取ってサービス提供をする場合で、上記のような指定業種にあたるとされているものをいいます。
 なお、平成29年の改正で、医療脱毛などの「美容医療」も指定業種に追加されています。

 こういった美容・エステなどの継続的なサービスは,現にサービスを受けてみないと効果のほどが分からないことが多いものです。しかし、長期間にわたって高額なサービスを受ける契約になっていたりして、中途解約が制限されていたり、解約できるにしても高額の違約金を支払う必要があるとされ、トラブルが多発したために法律で規制対象とされるようになったのです。実際に、日本エスティック協会の平成28年度の調査でも、エステでのトラブルとしては中途解約に関するものが一番多くなっています。

 この、特定商取引法による規制で気をつけるべき点はどんなところにあるでしょうか?
 まず、エステサロンが顧客にエステでのサービス提供をするにあたっては、契約を結ぶ前には、契約の概要を書いた書面(概要書面)を渡さなければならず、契約を結んだあとにも契約内容について書かれた書面(契約書面)を顧客に渡す必要があります。それぞれに盛り込まなければならないものについては、特商法に定められています。概要書面、契約書面ともクーリング・オフに関すること・中途解約に関することについて記載する必要があります。その他、顧客への注意事項として、書面をよく読むよう赤枠の中に赤字で書かなければならない・契約書面のクーリング・オフに関する事柄については、赤枠の中に赤字で書く必要があること・書面の字の大きさは8ポイント以上であること、などが細かく決められていますので、それにしたがって書面を作る必要があります。この点がしっかり守られていないと、あとで述べるクーリング・オフのときに要件を満たした契約書面などを渡していないとされ、クーリング・オフの行使期間が過ぎたあとも顧客にクーリング・オフを主張されてしまうことになりかねませんので、注意する必要があります。

 また、契約を結ぶときに勧誘するとき・あるいは契約を結んだあと、解除をさせないよう事実と違うことをいうこと・顧客を脅したり不安に感じるようなことを言って従わせようとしたり、困らせる、契約を結ぶ前に勧誘するとき、わざと事実を言わないこと、といった行為が禁止されています。こういった行為を行ったときには、業務改善指示や業務停止などといった行政処分や罰則の対象になります。

 なお、クーリングオフについては、顧客が契約書面などを受け取った日から数えて8日間以内に書面で契約の解除をすることができるとされています。この場合、契約に伴って、健康食品や化粧品などの商品を購入していた場合には、この商品の売買契約についても一括で無条件に解除となりますので、注意が必要です。クーリング・オフとされると、顧客が既に受け取っている商品(消耗品にあたる健康食品や化粧品を使ってしまっている場合は除きます)を、サロンが郵送料などの費用を負担して引き取ることになります。サービスの提供をすでにしている場合でも、顧客にサービス料の請求ができなくなります。契約の頭金をサロンが受け取っているときは、顧客に返金しなければなりません。

 また、エステティックのような特定継続的役務提供では、クーリング・オフ期間経過後も、将来に向かって契約の開示ができます。その場合に、サロンが顧客に請求できる損害賠償額の上限は、サービス提供前は2万円、提供後は2万円か、契約によるサービス料の総額からすでに提供したサービス料相当分を引いた残金の10%に相当する額のいずれか低い額、と決まっていますので、それを超えて受け取った金額があれば、顧客に返金しなければならなくなります。

消費者契約法による規制

 エステサロンでのサービス提供は、そのサービスを利用する顧客である「消費者」とサロン経営者である「事業者」との間で結ばれる契約によりますから、消費者契約法による規制も受けることになります。

 契約にあたって重要なこと(サービス内容やサービス料、サービスを受けることによる効能など)について事実と違うことを言った場合、重要なことについて顧客にとって利益になることだけ言って、不利益になることをわざと言わなかった場合などは、顧客により契約が取消しできることになりますので、注意する必要があります。

エスティック業統一自主規制

 エスティック業統一自主基準は法律ではありませんが、日本エステティック振興協議会各加盟団体、各団体に加盟する事業所が中心になって関連する法令を守り、適正な営業を行い、エスティック産業全体の健全な育成・発展に寄与するために定めたものです。

 この統一自主規制には、営業に関する遵守事項として、エステの契約期間は1年以内とする、サービス提供の回数は契約期間内に消化可能で、顧客が納得した回数を設けるものとする、などと定められています。他にもクーリング・オフの返金時期に関することや、中途解約の返金時期に関すること、関連商品を販売するときに説明すべき事柄などについて決めています。サービス提供にあたっては、こういった統一自主規制に書かれていることも踏まえて行うのが良いでしょう。

 エステを受ける顧客は、美しくなりたい、体型を整えたいといった思いからサービスの利用を希望して訪れるのが普通です。そんな顧客が安心してサービスを受けられるように、こういった法律などの規制を守り、継続して利用してもらえるようにするのがエステサロンの安定した経営にとっても必要なことでしょう。

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