法律のいろは

2020年12月25日 更新行政規制

来店客の先着3名に粗品を渡す場合、どのような法規制があるでしょうか?

 ここ最近、GoToキャンペーンなど、クーポン券の発行や登録しているお店で予約をすると、ポイントが付くといったサービスが増えてきています。同じく、来店客に景品を渡すということも以前より行われていますが、こうしたキャンペーンをするにあたって、一定の規制が定められています。今回はこういった規制がどのような場合に適用され、どんな規制がされているのかについて触れます。

景品表示法にいう「景品規制」とは?

 今回のテーマのようなキャンペーンを行う場合の規制を定めたものが「景品表示法」になります。「景品表示法」といえば、良く見かけるのがダイエット食品で「これさえ摂れば1か月で10キログラム減量は夢ではない!」と表示していながら、実際には摂取する人によって個人差がある(その旨の記載はない)という不当表示規制に関するものではないかと思います。

 今回の場合は、同じ「景品表示法」の規制でも「景品規制」と呼ばれるものになります。「景品規制」ですが、過大な景品類の提供を規制する内容になっています。「景品規制」については基本的に不当表示規制の場合と異なり、排除命令など措置命令を受けるケースはほとんどないようですが、景品を提供するキャンペーンを始めたあとに、景品表示法違反にあたると消費者庁に指摘されて撤回しなければならなくなるケースは度々みられるところで、行政指導は割とされている印象を受けます。

 そのため、まずはキャンペーンなどを始める前に、そのキャンペーンにあたって渡す景品類が景品規制に反していないか、確認する必要が出て来るのです。

 

景品類の要件とは?

 「景品規制」に該当するには、まずは配布等するものが「景品類」の要件を満たすかどうかによってきます。景品類の定義の大枠は景品表示法に定められていますが、最終的には内閣総理大臣が指定するものが景品類にあたることになるとされていますので、「定義告示」を確認する必要があります。これによると、景品類にあたるためには、⑴顧客を誘引するための手段として、⑵事業者が自己の供給する商品役務の取引に付随して相手方に供する、⑶経済上の利益、とされています。

 正常な商慣習に照らしての値引きやアフターサービスにあたる経済上の利益や、商品役務に付属するといえる経済上の利益(付属品といえるもの)は景品類の定義から外れています。特に、⑵のうち「取引に付随して」提供されるものかかどうか、非常に重要な要件になってくるとされています。

 取引付随性には、取引を条件に景品を提供する場合と、条件にしないで提供する場合がありますが、取引を条件にしない場合でも、「定義告示運用基準」でこまかく取り決めされています。たとえば、商品の容器の包装で景品類を提供する企画の内容を告知する場合(缶コーヒーにシールが貼られていて応募するとあたる)、景品獲得が容易になる場合(雑誌に掲載されているクイズの企画であるが、クイズで取り上げられている商品を買わないと正解が分からない場合など)、小売業者・サービス業者が自分のお店の入店者に対して景品を提供する場合などがあげられています。

 なお、⑴の顧客誘引性についてですが、通常は景品企画として行われる場合が一般的と思われるので、さほど問題になることはないと思われますが、たとえば商品を買って中をみて初めて景品が入っていた、という場合であっても、顧客誘引性は肯定されます。景品が入っていたからそれ目当てで商品を購入するということも十分ありうるといえるからとされています。

 

「先着順」とした場合の具体的な規制は?

 上記に挙げられています「景品類」の要件に該当する場合には、次に「懸賞」による提供かが問題になります。「懸賞」というのは、くじその他偶然性を利用して定める方法、クイズの回答など、特定の行為の優劣または正誤によって定める方法による場合があたるとされていて、この場合には「懸賞」規制が該当します。一般懸賞の場合は景品類の最高が5000円未満ですと取引価額の20倍、5000円以上ですと10万円と定められており、いずれにしても上限は10万円ですので、それを超える金額の商品を景品として提供することはできません。景品類の総額については売上予定総額の2%とされているので、企画の実施期間とその間の取引の売上見込みを考慮した上で決める必要があります。この総額規制も案外縛りが大きく、一等の景品が大きい懸賞の場合、かなり当選確率を低く設定しないとすぐに取引予定総額の2%を超える可能性が出て来ます。

 上記の「懸賞」にあたらない場合は「総付」規制を満たせばよく、1000円未満の取引価格であれば景品類の最高額は200円、1000円以上の場合は取引価額の20%以内であれば良いということになります。

 ただ、「懸賞」なのか「総付」なのかの区別がなかなか難しく、今回のテーマのような先着順の場合にはどちらになるのかという問題が出て来ます。これについては、「懸賞告示運用基準」で来店または申し込みの先着順によって定めることは「懸賞」に当たらない、としていますので、結果的には「総付」という扱いになって来るので、「総付」の規制(200円か、取引価額の20%以内)によることになります。ただ、良く考えると実際に来店するまでは先着順で何名なのかが分からない限り景品がもらえるのかどうか分からないことから、偶然性で決まるようにも思えるところで、そんなに簡単には判断しきれないといえます。

 

 このように「景品規制」は景品類の該当性に関する判断が複雑なところがある上に、「懸賞」になるのか「総付」なのかも区別が難しい点があります。ただどちらにあたるかで上限額も異なってきますので、よく検討してからキャンペーンなどを行うようにした方が良いでしょう。

お電話でのお問い合わせ

082-569-7525

082-569-7525(クリックで発信)

電話受付 9:00〜18:00 日曜祝日休

  • オンライン・電話相談可能
  • 夜間・休日相談対応可能
  • 出張相談可能

メールでのお問い合わせ

勁草法律事務所 弁護士

早くから弁護士のサポートを得ることで解決できることがたくさんあります。
後悔しないためにも、1人で悩まず、お気軽にご相談下さい。

初回の打ち合わせは、有料です。
責任をもって、担当者が真剣にお話をきかせていただきます。
初回打ち合わせの目安:30分 5,500円(税込)