法律のいろは

2019年1月9日 更新時事問題(法改正・最新の裁判例など)

民法改正・不動産オーナーにはどんな影響があるのでしょうか?

 昨年(2017年)5月に民法の契約に関する事柄が大きく改正されました。実際に変更されるのは再来年(2020年)4月からで、変更された後の契約から影響を受けることになります。賃貸借契約の関係は当然賃貸オーナーにも影響します。まだ少し早い気もしますが、どんな影響があるのか取り上げます。

 今回の民法改正の多くの点は、これまで裁判例などで認められた点をはっきりさせています。主な変更点は次の内容です。

① 敷金の性格付けがはっきりと定められる

② 物件を譲渡した際に賃貸オーナーの地位は当然に移転する

③ 賃貸契約終了後の賃借人の原状回復義務の内容がはっきりする

④ 賃貸契約で定めた内容以外の用途で使った場合の損害賠償に関する時効期間の猶予

⑤ 賃貸借で保証人が支払う責任を負う範囲をはっきりさせる必要が出てきた

 以下ではもう少し詳しく解説します。

 まず,敷金は賃貸借契約の際に,借主から貸主に差し入れられるお金で,未払い家賃や原状回復その他貸主が負担するお金に充てられるものです。注意点としては,賃貸物件を売却した場合、敷金は当然に一度清算されるものではなく,売却する際の代金の取り決め方などを踏まえて個別に決めていくところににあります。

 次に,物件を譲渡した場合の賃貸オーナーの立場ですが,物件の所有者でないと賃貸オーナーとしての役割は果たせないものです。この点はこれまでと取り扱いは変わりませんし,賃借人の同意もいりません。ただし,いらぬトラブルにならないように賃借人に連絡をしておいた方がいいでしょう。また,買う側は賃借人の属性や家賃の未払いがあったかどうか、事前に確認をしておくといいでしょう。

 三番目に「原状回復義務」ですが,一般的に、貸し渡した後明渡時点までの経年劣化分は対象から除かれるとされています。改正によってもこの点は変わりません。
ただし,経年劣化分も原状回復義務に含めることができる場合があります。それは賃貸借契約の契約項目で含める旨をはっきりさせておくことです。これは今までの裁判例上も認められていましたが,改正によっても同様に認められます。このような項目を設ける場合には,経年劣化分を含めて回復費用を賃借人に求めることはできますが,契約時によく説明すること・貸し渡した際の状況がどうであったのかを記録にきちょんと残しておく必要があります。法律で定められた原則とは異なるため,トラブルが起きやすくなりかねないからです。さらに言うと,他の項目と相まって消費者である個人が負担する内容へ大きく変える場合には,せっかく入れた項目が無効になる可能性もあります。他方、オフィスビルのテナントや飲食店等個人でも、事業目的の利用の場合にはこうした可能性はありません。

 4番目の変更点ですが,貸した部屋などが契約で定めた以外の用途に使われた場合には、契約解除とともに修復のための損害賠償の請求できるのが原則です。しかし,無断改造などの事実はそう簡単に賃貸オーナーは知ることができないことがあります。損害賠償は違反から10年で時効にかかってしまい請求ができなくなる可能性があります。これを防ぐために,たとえ違反から10年が経過していても,賃貸借契約の解除と明渡から1年が経過するまでは損害賠償請求ができるようになりました。

 最後に,賃貸借契約では連帯保証人を用意してもらうことが通常です。ここでの保証人は,賃貸オーナーからすると,家賃未払い・退去時の荷物撤去その他修理など長く続く契約の中で、借主に支払ってもらうべきお金を払ってもらわない場合の支払いを確保する意味があります。ただし,それではどこまで保証することになるのかわからないということもあり,どの金額まで支払いの責任を負うことになるか、契約書で明らかにしておく必要があると改正されました。言い換えると,単に保証人とする場合には保証人となる契約が無効になってしまいかねません。

 そこまで大きな変更はありませんが,原状回復をどうするのかなど、契約項目をどうするのかというところに大きく関わりかねない点もあります。トラブルを引き起こさないためにも,こうした法律改正の内容は抑えておきたいところですね。

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